金色のコルダAS至誠館 長嶺雅紀攻略感想

※個人の感想ですよ

これは長嶺ルートの感想なので、あえて長嶺サイドに立った見方をしてますが、私は長嶺派でも八木沢派でもありませんし、火積と伊織が全く悪くないとも思いません。
至誠館の対立についてこういう見方が嫌な方は退避してくださいね〜。

至誠館、まずは私と初顔合わせの長嶺から。
何度も言っているが、私は実際に自分でゲームをプレイするまで公式サイトも二次創作も見にいかないし読みにいかない。他人のゲーム感想も同じだ。ただ、あくまで自分からは見に行かないだけでネタバレが嫌なわけではないし、ツイッターで流れてくるものは普通に眺めている。ということで、私は長嶺がメガネキャラだということは知っていた。というか、それしか知らなかった。
だだ、流れてくるツイートを見ていると、長嶺のことをすごく好きな人であっても彼について「ムカつく」と堂々と言っていることに気づいた。
そこで俄かに興味を持った私は、軽い気持ちで「長嶺が気になる」と呟いた。すると何人かのフォロワーが即座に身を乗りだし、長嶺について教えてくれたのである。
一人が「八木沢の中学時代の同級生でブラバン部の部長」と言えば、また一人は「小日向の親戚で寺の息子」「小日向母子の居候先の息子」さらに「楽器はホルンで火原の教え子」「バイクに乗る」「土浦より長身」「ネオロマで初めてパンツ見せた」など、出るわ出るわ。
彼はそのメガネにどれだけ多くの設定を乗せているのか。上記の鉤括弧で3人くらいキャラが作れそうだ。それなのにこれら全てが長嶺一人の設定なのである。
完全に過積載。
一人で頑張りすぎるな!分け合おう!
と思った瞬間にも「あ、それから彼の一人称は基本的に「私」ですよ」などという情報が追加され、私は机に突っ伏した。

前置きが長くなったが(本当にな)、AS至誠館に転入する小日向は、コルダ3やAS神南とはヴァイオリンに対する心構えが少し違う。彼女の祖父も、ヴァイオリンのレベルアップのためというよりメンタルケアのために仙台移住を薦めている。
神南小日向が約束のステージに立つためのレベルアップ手段として神南を選んだのに対して、至誠館小日向は音楽を以前のように楽しめたら、と思って至誠館を選ぶ。だから、自分に「楽しそうだな」と思わせてくれた至誠館吹奏楽部に入部するのはごく自然なことだ。
しかし入部後、小日向は至誠館には吹奏楽部とは別にブラバン部があること、そこにまつわるゴタゴタを知る。
私は八木沢ルートと同時に長嶺ルートを攻略していたので、双方の言い分を聞く気持ちでプレイした。

二つの部の確執の原因は昨年、一年生部員の火積が起こした暴力事件である。その裏に何があったのかとか巻き込まれただけだとか、火積や伊織の気持ちについてはあえて脇に置く。部外者が事実だけ見たら「至誠館吹奏楽部員が暴力事件」。これに尽きるからだ。
時は夏大会直前、事件を起こした吹奏楽部は校外活動停止の瀬戸際に立つ。吹奏楽部だった人ならわかるだろうが、それ以外の部活だった人は夏のコンクール地方大会=甲子園の予選、くらいに思ってほしい。ちなみに私も中学は吹奏楽部だった。
この処分は特に重いわけではない。「暴力事件 部活」でググれば実在の事件とその処分が山ほど出てくるが、部内の暴力事件であっても校外活動停止が普通なのである。外部の一般人に暴力をふるって一発退学になった例もある。
至誠館の事件は相手が素行の良くない生徒で、向こうにも非があったからそれくらいの処分で済んだのだ。名門校の生徒が学外で事件を起こすというのはそれだけヤバイ案件なのである。
新入部員たった一人のやらかしのために、現役3年生は最後の大会に出場できなくなり、現役部員全てに「暴力事件を起こした至誠館吹奏楽部」のレッテルが貼られるのだ。地元に残ったOB連中(おそらく議員とか役所の偉い人になってる)や教員が激怒したり慌てたりするのも無理なからぬことである。私の母校も東北の元男子校、それも伝統校といわれる公立高校なので、その雰囲気はなんとなくわかる。
しかし、事件を揉み消し校外活動停止処分を免れるためには「悪いのはこいつ一人です、他は悪くありません」と火積を差し出す、つまり退部処分にしなくてはいけないというのが顧問の結論だ。顧問の人格(控えめに言ってもクソ野郎)と自己保身という動機はともかく、それもまあ妥当、というかかなり奔走した結果そこまでこぎつけたんだろうな、という感想をもった。
新入部員一人を退部させるだけで吹奏楽部はこれまで通り活動できる。そんな事を言われたら長嶺でなくても飛び付きたくなる。
八木沢は「(演奏が)上手くなかったら切り捨てていいのか」と長嶺に詰め寄り、長嶺は長嶺で「火積は能力的にいなくても構わないし、本人も何も弁明していない」と受けて立ってしまっていたが、この2人(特に八木沢)はいきなり話がずれている。
火積は「下手だから切り捨てられようとしている」のではなく「問題を起こしたから切り捨てられようとしている」のだ。八木沢も長嶺もお互いヒートアップしているせいかポイントが怒濤の勢いでずれたまま口論しているが、学校側の条件は元々はそういう話である。しかし2人の論点はずれたままなので、これで拗れないわけがない。
冤罪でもなんでもない事件の当事者一人をやめさせて口をつぐめば、他が全員助かる。悪い噂くらいは立つかもしれないが、それでも至誠館吹奏楽部はこれまで通りでいられる。
長嶺はそう八木沢を説得しようとするが上記のように話がずれて決裂。条件だった火積退部が果たせなかったのだから、事件は揉み消せず表沙汰になる。その悪いイメージを持ち越さないようにするため、また大会に出場するため、長嶺は八木沢と彼についた3人を残してブラバン部を立ち上げたというわけだ。八木沢には八木沢の正義、スジの通し方があり、長嶺にもまたそれがある。ただ、上記のように2人の論点は微妙にずれているので、話せば話すほど噛み合わないのだと思う。
結果、至誠館には問題を起こした吹奏楽部VSその問題を良しとせずに新しく立ち上げられたブラバン部という構図が生まれてしまう。

小日向はそんな状態の、いわば至誠館の火薬庫と化した吹奏楽部に入部するのだ。
ブラバン部は降ってわいた新入部員に警戒を強める。女子が少ない至誠館で、しかも転入生は相当目立つ。それが吹奏楽部に入部したのだ。
長嶺はすぐに動き小日向をブラバン部に勧誘すると共に同居について口止めする。このあたり、長嶺の賢さと目配りがよくわかるが、何しろ彼は常に上からというか、勧誘するにしても「受け入れてやってもいい(しかもヴァイオリン以外の楽器で)」とこっちが頼んでもないことを、あたかも好条件のような口調で言ってくる。しかも小日向が「良き」と思って入部した部活をディスることも忘れない。
このように出会ったばかりの長嶺ときたら、顔がいい以外でこちらの好感度が上がりようがない対応をしてくる。彼はその顔に産まれたことをもっと親に感謝してもいい。
「長嶺ルートをプレイしたらそのメガネに指紋を付けたくなる」「メガネを粉砕したくなる」というフォロワーさん(しかも長嶺を嫌っていない人々)の予言はまことであった。
私も例に漏れず「こいつの胸ポケの万年筆(ボールペンじゃなさそうなのがまたしゃらくさい)から液漏れしねえかな」とか「口内炎が10個くらいできねえかな」などと思った。
ブラバン部と吹奏楽部の事情に疎い小日向だが、長嶺を中心としたブラバン部員がとにかく吹奏楽部にいやがらせをしてくることだけはわかる。
吹奏楽部員たちの人柄に居心地のよさを感じて、音楽の楽しさを取り戻しつつある小日向は、吹奏楽部を潰されてたまるかと奮起。長嶺に談判すると、彼からは「私の言うことを何でも聞くなら吹奏楽部について便宜を図らないでもない」というエロゲーみたいな提案が出される。
出た。これだ。
長嶺は顔もスタイルも良く、性格だって乙女ゲーに限れば私は別に嫌いではない。しかし何がムカつくかと言えば、この言い方。
命令口調が嫌なのではない。前述したように常に上から、しかも自分だけがその権限を持っていて、相手はその提案に飛び付くだろうと足元を見た言い方をしてくるところにいちいち腹が立つのだ。
しかし、小日向は吹奏楽部のために長嶺から出される無茶振りに次々に応えていく。何のために長嶺がそんなことをさせるのか私にはさっぱり分からなかったのだが、小日向を上手く利用してやろうと思っていたんだろうと推測する。吹奏楽部の人間関係を少しかき回したり、イレギュラーな動きをしないか監視したり、内部スパイのようにしたかったのかもしれない。いずれにせよ、出会ったその日に小日向に恋したとかそんなスイートな理由ではないだろう。
しかし、長嶺にも誤算はある。
おそらく利用するつもりで会ってたはずが、段々と小日向に会って話す事自体が楽しくなってきたのだ。いつでも一生懸命で自分の要求に答えてくれて、意地悪にはわかりやすくしょんぼり、美味しい餌には素直に喜ぶ。なにより楽しそうにヴァイオリンを弾く小日向と過ごすのは悪くないと思い始める長嶺。
しかし、その小日向の一生懸命さは長嶺に向けられているわけではなく吹奏楽部のためだったと途中で思い出し、元は自身が言い出したことなのに自分で傷ついてみたりする。
難解だな、君は。
ともかく、狭い校内で2人が一緒にいるシーンが増えたらいずれは誰かが気づく。この場合、それは一番校内にアンテナを張ってる新聞部であり、長嶺にとっては最悪の事態である。
といっても、仲良くしてることがバレてまずいのは長嶺だけで、小日向はノーダメージだ。なぜなら吹奏楽部員たちはそれくらいの事で小日向を責めたりしないからだ。
長嶺は「裏切り者と思われたら君も困るだろう」みたいな事を言っていたが、吹奏楽部員たちは別に怒ったりしないし、彼らにとって小日向と長嶺が仲良くするくらい、悪いことでも何でもない。しかし長嶺は違う。それまで散々意図的に貶めてきた吹奏楽部の部員と裏で仲良くしていることがバレたら、部内での求心力は一気に落ちる。
長嶺の上から目線は、何も対小日向に限ったことではないので、当たり前だが日頃から人々の恨みをバッチリ買っている。
同居をすっぱ抜いた新聞部も、相手が長嶺だから悪意丸出しの記事を書いたのだろう。この分だと長嶺は何かとうまく利用しているつもりの生徒会あたりからも恨みを買っていそうだ。
ともかく、長嶺は皆の前で糾弾されるが、小日向にピンチを救ってもらう。
長嶺とて、日頃の小日向に対する自分の態度が誉められたものでないことは分かっている。だから土壇場で庇ってくれた小日向に驚く。結局、小日向の提案に乗るかたちでその場を収めた長嶺だったが、彼女を傷つけたことを後悔する。後ろめたいのは、彼女に惹かれている自分の気持ちに気づいているからだ。
小日向も、自分から促したとはいえ長嶺からキッツイ言葉を投げられてショックを受ける。私が気づいていなかっただけで、小日向はすでに長嶺に恋していたらしい。
し、知らなかった(プレイヤーなのに)!

その後、月を愛でながら長嶺の意外にもストレートな愛の告白を受け、いよいよコンクール決勝である。
一曲目は去年のコンクールで演奏出来なかった因縁の「木星」。ホルン担当伊織が新幹線トラブルのせいで到着できず、あわや不戦敗かと思われたとき、小日向は長嶺を引っ張ってきてアンサンブルに加え、見事に「木星」を演奏させる。
コンクール決勝という晴舞台でこの曲を演奏できた事は、長嶺のみならず当時をよく知る3年八木沢と狩野にとっても本当に良かったと思った。優しい顔して退部届けをビリビリやっちゃう八木沢のぶれなさは相変わらずで、本来なら八木沢が部長、長嶺と狩野が副部長で脇を固める布陣が至誠館にとってベストなんじゃないかと思う。
部の分裂の象徴みたいな「木星」を長嶺と吹奏楽部が共に演奏したことで、ブラバン部員の胸も激アツに。しかし、ただそれだけでは和解まで行けなかっただろう。小日向がブラバン部との仲を繋ぎ、吹奏楽部が努力して決勝まで行ったからこそ起きた奇跡である。
これで、二曲目に伊織が間に合わなくて不戦敗にでもなったら、今度こそ彼のメンタルが心配になるところだが、伊織も無事に間に合い至誠館は優勝する。
よかったねええええ!!!
至誠館優勝は、正直言ってAS神南に比べると格段に気持ちが高揚した。神南であっても星奏であってももちろんコンクールで優勝したいのだが、背景が違いすぎる。星奏も神南も高校のコンクールは過程に過ぎないというタイプの小日向(コンクールを蔑ろにしているのではなくさらに先を見ている)だが、至誠館の場合はそうではない気がする。この夏はもう二度とない、という熱さがAS至誠館にはある。プロ野球の試合よりも、ひと夏限りの甲子園に胸がアツくなるのと似ている。
とにかく至誠館優勝で廃部は免れ、ブラバン部との関係も修復できそう。いいことずくめのエンディングだった。

ラストの長嶺は「お前、クール設定は何処に置いてきた?」というスイートぶり、そして一人称が「俺」にチェンジ。
最初冷たい男がヒロインにズブズブになる展開は嫌いではない。むしろ、最初から優しい男によくわからんまま好かれるルートより断然好きだ。
しかし、長嶺ルートで残念なのは、いまいち彼がどのポイントで何をきっかけに小日向に惹かれたのか分かりにくいところだ。
みんなに隔てなく優しく、音楽を楽しむ小日向の姿に八木沢の影を感じた長嶺が忌々しそうにするイベントがあるが、もしやそれがきっかけだろうか。だとしたら、長嶺は八木沢部長のことがほんとに好きなんだなと思う。
しかし、長嶺は「好き」の伝え方がいちいち下手くそすぎる。好きなものほどディスってくるが、かといって誉めないわけではなく、嫌いなものもやっぱりディスるのだから、表現方法が「難解」としか言いようがない。せめて江波くらいわかりやすくあって欲しい。

他の部員が「暴力事件の吹奏楽部」のレッテルを貼られる前に素早く動いて、ブラバン部を立ち上げ、たった一年で大会出場まで持っていった手腕は見事だし、受け皿になるような部を作ったことは素直に認めたい。切り捨てる切り捨てない議論は置いといて、八木沢が残ろうとしたのと逆に、長嶺が別部を作ろうとしたことは理解できる。
しかし、全校生徒に積極的に働きかけて吹奏楽部を貶め、裏工作してまで潰そうとするのは理解できない。
ただ気にくわないだけならともかく、彼がまだ気持ちを吹奏楽部に残していて、だからこそ綺麗に終わらせたいというのが吹奏楽部いじめ(あえてそう言う)の動機だなんて、普通はわからないだろう。寄り添っているはずのプレイヤーだって説明されなきゃわからん。
余計な悪口を広めず、余計な工作をせず、つまり積極的に潰しにいかずに吹奏楽部自然消滅を待てば、ある程度は綺麗に、静かに終わらせられたはずだ。
しかしスパッと終わらせようと画策した結果、綺麗どころか拗れに拗れて部員たちが口汚い言葉を堂々と言う環境を作ってしまった。そこが私の長嶺に対して腹の立つ部分だし、彼とエンディングまでいっといて何だが、最後までモヤモヤした部分だ。
長嶺側に立った感想を書いてみたものの、「積極的に工作を仕掛けて吹奏楽部を潰そうとした点」「相手が小日向に限らず常に優位にある高みから発言してくる点」にはムカつかずにはいられない。もちろん可愛い部分(木星の講釈を長々しちゃうとことか)もある男なのだが。
長嶺は一言でいえば、一言では言えないキャラである。だからそれを「めんどくさい奴」でまとめた上で、いい奴だと言い切った狩野に思わず惚れかけた。
ただ、みんながみんな狩野みたいに察してくれるとは限らないんだから、彼とエンディングを迎えた身としてはもうちょっと何とかしないと檀家が離れやしないか心配になる。

長嶺ルートはブラバン部と吹奏楽部の和解を柱に描かれているが、ヒロインと同居しているというメリットを最大限活かしたイベントも抜かり無く入っている。風呂場でばったり、両親がいない夜に停電など、いつどこで見たのか忘れたが今まで少女漫画で死ぬほど見た気がするシチュエーションである(背景が阿弥陀如来(多分)の座像であることを除けば)。
しかし、王道というのは約束された萌えともいえる。パンツは見えなくてもいいような気がしたが、それらの同居イベントには私も「良きかな」と頷いた。
欲を言えば、同居シチュエーションが活かされているように、寺の息子設定を活かしたイベント(袈裟姿披露以外で)も欲しかったと思う。

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