アンジェリークルトゥール まとめと全体の感想

※前置きです。
初めに言っておきたいのですが、私はアンジェリークデュエット生まれ由羅アンジェリーク育ちなので、もちろんリメイク前の作品を愛しております。
でも、ルトゥールのキャラデザを素晴らしいと思っていますし、実際どのスチルも本当に美しかったです。前作のイメージを大事にしつつも新しい、名作のリメイクにふさわしいものだと思いました。
だから、由羅アンジェを愛するがゆえにルトゥールのキャラデザをディスってしまう方、「ルトゥールはリメイク前のものと比べて全てが劣る」と言いたいだけの方は読む前に退避するか自己責任で閲覧して下さい。
またそれとは逆に、ルトゥールだけを愛し、前作を嘲るような方もご遠慮下さい。私はルトゥールにも多少の不満があるので、全肯定の感想しか読みたくない方向けではないと思います。
まあ私個人の感想なので、合わんなと思ったら途中で閉じてくれたらいいだけの話です。


さて、前置きが長くなったがルトゥール全体の感想を述べたい。
前述したように私はアンジェリークデュエット生まれのネオロマンサー、つまりデュエットで初めて乙女ゲームなるものに触れた。その時にはすでに遙か1も発売されていたのだが、私の乙女ゲーデビューはデュエットなのである。
だからアンジェリークシリーズは私にとって「実家」といってもいいくらい思い入れがある。だから、その「実家」をリメイクしたルトゥール発売には大いに喜んだ。私生活が丁度忙しかった時期に発売された事でプレイする機会を逃していが、このほどようやく手に取ることが出来た。
私はリメイク前の作品をすでにプレイしている人間なので、純粋にこのゲーム単体の評価をすることは難しい。どうしてもリメイク前と比較するシーンが多くなるが、どちらかを下げる意図が無い事だけは述べておく。

冒頭、アンジェリークのテーマが流れるとそれだけで懐かしさで胸がいっぱいになる。旧作からの音楽を変えないでくれたこと、ローディング中のアイコンが旧作のドット絵であること、そういう事がいちいち嬉しい。旧作からのファンの気持ちを大事にして作ってくれたのだなと思うからだ。
当たり前だがルトゥールはグラフィックが綺麗で、操作も快適だ。
リメイク前はセーブするのにいちいちアンジェリークの部屋に戻らないといけなかったのに、その場でセーブできるしアルバム機能もある。それに「交流メモ」なるものがシステムに追加されており、外出が好きとかお話が嫌いとか、交流で得た守護聖の情報を即座に見ることができる。また育成状況や相性や親密度もその場ですぐに確認出来る。
リメイク前は情報を得るたびに手書きでメモを取り、頬をバッシバッシ叩いて気合いを入れてから公園デートに臨んだものだが、ルトゥールではそれをしなくていいのだ。
しかし、デート中は途中セーブができないようになっているし、試験の進行状況メモは見られない。また「大陸への興味」などは進行度によって変化するようだ。つまり、公園デートではリメイク前と同じように予習が必要だし、質問の度に一喜一憂できるのだ。
公園デートと育成でコツコツと親密度を上げ、頃合いを見て森の湖に誘う。その流れは旧作と変わらない。
あー、これぞ俺たちの「アンジェリーク」だと思った。
リメイクされて、システムは快適になりグラフィックは美しくなった。一方、音楽は(アレンジされてはいるものの)ほとんどそのまま使われている。また、執務室のメッセージ、恋愛イベントやデート会話、告白セリフはほとんど変わっていない。
下手なリメイクで世界観がめちゃくちゃになるのでは?という心配はしなくても大丈夫だ。

私がルトゥールをプレイしてみてリメイク前と大きく違うと感じたのは、親密度の高い守護聖からのプレゼント育成がやたら多い事だ。恋愛段階どころか親密度100に乗る前からバンバンプレゼント育成してくるので、女王になるのは簡単だ。また、2人くらいを狙って股がけし、どちらかとエンディングを迎えるのも易しいだろう。しかし、全員を同時攻略するプレイはかなり難しくなったと思う。
リメイク前は女王試験の期限(365日)を迎える直前まで、守護聖全員を手中に収めつつダラダラと飛空都市生活を満喫できたものだ。しかし、プレゼント育成が多いルトゥールでそれは無理だと思う。全員と親密度180以上にした場合、110日をこえたらまず間違いなく大陸育成終了まで秒読みに入る。
私はゲームを長引かせたいがためにロザリアとの相性を低く設定し、親密度も1桁にして妨害してもらおうと目論んだのだが、ロザリアの妨害よりもプレゼント育成のペースの方が明らかに早いので焼け石に水だった。

他にはっきり変わったのは、サラとパスハが登場しない事だろう。旧作でサラは占いとおまじない、パスハは研究院でのあれこれを担当していたが、ルトゥールではそれらを全てディアが担当している。
旧作からのアンジェリーカーの中には、彼らがいなくなった事を嘆いた人も多いだろう。私ももちろんサラとパスハという馴染みキャラがいなくて寂しい。しかし、システム面だけ見たら、占いの館や研究院に出たり入ったりしなくていいのはすごく楽だと思った。ディア一人で事が済むならそれはそれでありだし、ルトゥールから入った人は、「そういうもんなんだな」で済むだろう。元々サラもパスハも攻略可能なキャラではなかったからだ。
ただ、彼らが登場しないとなると、この世界に存在するはずの「龍族」という種族に触れる場が無くなる。そもそも「占いやおまじない」は龍族だから出来る事じゃなかったんかい、という話になるのだ。
となると、その後サラのいとことして登場するメルの存在も浮いてしまう。え?じゃあやっぱりSpecial2のリメイクは無し?という事になるので、システム的には楽になったとはいえ、サラとパスハが出てこないのはそういう意味でも寂しい話ではある。

そして、ルトゥールはさすがリメイクだけあって、Special1以降のシリーズの良い所を巧みに取り入れている。
ネオアンジェリークに「夕食」があるように、ルトゥールにはディア主催の「お茶会」があり、親密度の高い相手の隣に座れたりするのだ。また、そこでは大陸視察で手に入れたお菓子のレシピを使って、守護聖に手作り菓子を振る舞える。これはスイートアンジェっぽい。
また、休日にプレゼントを渡せるのは旧作と同じだが、さらにそのプレゼントを彼らがどうしたのか後日談を聞くことができる。つまり、森の湖と公園以外でも特別なイベントが起きるわけだ。
守護聖の好きな宝石や好きな香りを身に着けて舞踏会に臨めるし、大陸視察も好きな相手と一緒に行ける。これまでエルンスト狙いの時以外では一度たりとも行ったことがない大陸視察も、そこで守護聖とのイベントが起きる、レシピが手に入るとなれば話は別だ。
守護聖へのプレゼントも大陸でしか手に入らない(公園で販売していない)。しかも同じ守護聖を複数回誘わないと大陸でのスチルが出ない。私がこんなに真面目に大陸に通ったのは正直言って初めてなので、これはリメイクして良かった点の1つだと思う。

そして新キャラだ。
ルトゥールではアンジェリークとロザリアに一人ずつ執事の少年が付く。どちらにするか選択でき、可愛いイベントも起こせるし、ラストでは彼らの意外な正体も明かされる。
まあ、彼らはシステム的にはいてもいなくてもあんまり変わらない気がするが、女王候補の相談役として画面が華やかになるし、自分を応援してくれる存在がそばにいるのはいいものだ。
攻略対象も一人増えた。ブライアンについては喋るとネタバレになるのだが、彼の設定やストーリーはすごく良くできている。これだけ世界観や設定の固まった「アンジェリーク」というゲームの中に、しかも女王試験、舞台は飛空都市という縛りがある中で、よくぞもう一人攻略対象をひねり出したな、と感心した。
ストーリー上の齟齬も無いし、ブライアンのキャラも魅力的だ。
ただし、ゲーム上は問題ないブライアンの存在だが、アンジェリークのコミカライズとは齟齬をきたす。同じ人物が違う設定で出てきてしまったわけだから、ここは評価が分かれる所だろうなと思う。

次に変わった所は、こちらから告白した場合と告白された場合でエンディング後のスチルやエピソードが別々に用意されている事だ。
これがすごく良くて、どのエンディング後も我々アンジェリーカーなら「わかる」「一度は妄想したやつ」と頷くような良いスチルだ。個人的には、特にオスカーとゼフェルが良かった。

次に個人的に私がルトゥールについて一番不満に思うことを書く。
それはロザリアの扱いである。
何度も言うが私はデュエットで乙女ゲームデビューした女王候補だ。だから、ヒロインのライバルキャラはただの敵キャラではなく、別の物語を持つもう一人のヒロインだと思っている。
デュエットは「アンジェリークSpecial1」のリメイク作品で、ロザリアをヒロインとして守護聖を攻略することができる。また、ロザリアとアンジェリークとの友情イベントがあり、偉そうなお嬢様に見えた彼女が実は寂しさと重圧を抱えていることがちゃんと描かれている。親密度を上げたら友情イベントが起こり、ロザリアが得意のヴァイオリンを披露してくれたり、枕を並べたお泊り会も出来る。
旧作でのロザリアは最初こそアンジェリークにめちゃくちゃキツく当たるのだが、それがあるからこそ後の友情が輝き、試験に負けたとしてもこの子のためなら補佐官やったるぜ!とお互いに思えるのだと思う。
ルトゥールのロザリアはリメイク前より最初からわりと優しい。「しょうがない子ね」となんだかんだで面倒を見てくれる。
優しいのはいいのだが、その代わり、リメイク前のように段階を踏んだ丁寧な友情イベントがない。だから、次第に二人に友情が芽生えていく様子が伝わりづらいのだと思う。そのためエンディングで唐突に「親友」を名乗られた感が拭えない。
実際、ルトゥールのみプレイした方の「なんでロザリアの補佐官なんかやらなきゃならんのだ」あるいは「守護聖×ロザリアなんてものが何故存在するのか」というような感想をお見かけした事がある。
それを読んだ当初、ロザリア好きの私は「なぬーー!!(怒)」と思ったが、実際にルトゥールをやってみて分かった。ルトゥールしかやっておらず、旧作のコミカライズにもCDにも触れてなかったらそりゃそうなる人もいるだろう。
私達はロザリアのキャラクターがすでにわかっているから「このロザリアはやけに最初から親切やな」と思うだけですむが、ルトゥールでロザリアに初めて出会った人は、彼女を「半端に優しいというか、なぜか上から目線でアドバイスしてくる人」と感じるかもしれない。
もう一人の女王候補をきちんと描くことは、彼女と友情を育むヒロインアンジェリークを描くことでもあると思うのだが、ルトゥールはロザリアの扱いが中途半端だったように思う。完全な悪役令嬢でもなく、かといってひたすら優しいわけでもない。
だから私はどうせリメイクするなら、デュエットをリメイクして欲しかったし、せめてロザリアとの友情イベントは残してほしかったと思う。
「アンジェリーク」は恋愛だけではない、女の友情も大事にした作品なんやぞ!とプレゼンさせてほしかったのだが、ルトゥールだとそれがデュエットよりも難しいと思うのだ。

このように変わった所も変わらない所も、良い点も残念な点(私にとっては)もあるルトゥールだが、一番の変更点はやはりキャラデザだろう。絵柄の変更が受け入れられず、ルトゥールを手にとっていない人もいるのかもしれない。
私はアンジェリークに限らず元々キャラデザにそんなにこだわりは無いので、旧作からのファンでありながら、由羅先生のキャラデザじゃなくなった事について特別な悲しみはない。
これで新デザインがイメージとかけ離れていたならともかく、ルトゥールのキャラデザはアンジェリークらしい美麗さとレトロな感じを残しつつ、前作への配慮も伝わってくるいいデザインだと思った。
例えば、ランディやオスカーのマントは大仰ではないがちゃんと残されているし、他の守護聖たちも全体の印象を旧作から大きく変えないようなデザインになっている。ただ、マルセルからは少女っぽさが少し除かれ、オリヴィエの化粧は控えめになるなど、これから初めてアンジェリークに触れる人が入りやすいようになっていると思う。
「由羅先生のイラストじゃないのは嫌だから、ルトゥールはやらない」という人はいるだろう。ルトゥールをプレイしたらディスってしまうかもしれない、だから初めからやらないという選択をした人は、それならそれで一本筋の通った愛し方だと思う。
そういう人はひたすら旧作への愛を貫いたらいいが、一方で、やってもいないルトゥールを下げてはいけない。ごちゃごちゃ言っていいのはゲームをプレイした人だけだし、由羅アンジェを愛する事とルトゥールのキャラデザをディスる事は同じではない。そういうツイートを見るたびに私は、ルトゥールからアンジェリークに入った人たちが嫌な思いをしているのではないかと悲しい気持ちになってしまう。
人間なんだから絵柄の好き嫌いはあるだろう。
前のを愛しすぎて新しい物が受け入れられない人もいるだろう。それならそれでいい。だが、ルトゥールから始めてアンジェリークを好きになったと言っている人にそれを押し付けてはいけないと思う。
だが逆に、ポリシーを持って旧作への愛を貫いている人に無理にルトゥールを勧める事もまたいいことでは無い。

最後に、ルトゥールで初めてアンジェリークの世界に触れた人には、デュエットやSpecial2もやってみてほしい。
「やってみてほしい」どころか、本当はめちゃくちゃ勧めたい。声優さんの声も、当たり前だがルトゥールよりすごく若いから新鮮だし、教官時代の聖獣守護聖にも出会ってほしい。
だが、ハードの問題もあるし、ルトゥールの快適なシステムに慣れた身には旧作のシステムはなかなかキツいかもしれない。
それに、改めてプレイしてみると、アンジェリークは乙女ゲームというジャンルの中の「恋愛シミュレーション」なのだ。コツコツ親密度を上げて恋愛イベントにこぎつけなくてはいけない。
会話の選択肢からルートに乗ればあとはエンディングまで進められるノベル系ではない。ストーリー仕立てではなく、各攻略対象個別のシナリオがあるわけでもない(ブライアンは例外)。だから、沢山の乙女ゲームが存在する今、シミュレーションが苦手な人に「アンジェリーク」を勧めるのは難しい。
それにアンジェリークの恋愛イベントは、今見たらずいぶんあっさりしている。公園デートでようやくたどり着いたドームなのに、そこで女王陛下の話をするだけでデートが終わったりする。沢山の乙女ゲームをやって甘い恋愛イベントに慣れ、これを物足りないと感じる新規さんもいるだろうと思う。
昔と違って、今は乙女ゲームの良作が沢山ある。
だが、「アンジェリーク」シリーズの美しさ、優しさ、恋か使命か選ばなくてはいけないストイックさ、乙女っぼくてファンタジックな世界観は、世の乙女ゲーマーに一度体験してほしいなと思う。

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