アンジェリークルミナライズ フロステ2昼公演感想

※個人の感想です。
イベント初心者の感想なので的外れかもしれないです。

 当方はネオロマンスイベント初心者である。再生するまで『フロステ』が何の略かもわかっていなかったくらいの初心者である。
 ただ、かといってネオロマンス初心者というわけではなく、アンジェリークデュエットから入り、スイートアンジェですらプレイ済みの、どちらかといえば古参だろうと思う。
 ネオロマンスがこういうイベントをやっていることは知っていたが、直接参戦したことはない。それどころか、イベントステージを観たのは多分人にディスクを借りて観た2度くらいだったと思う。
 見たくないとか避けているとかそういうことではなく、「きっかけがないと見なくていいかな」と思っていたからだ。
 なぜなら私は声優さん自体にあまり興味がないタイプで、キャラソンの魅力も正直よくわからない。「歌を歌いそうにないキャラが歌っている」ということ自体がよくわからないからだ。
 声優さんの顔出しが嫌だとかそういうことでもないのだが、声優さん=キャラだとは思ったことがない、つまり声優さんとキャラを重ねられない筋力の弱いオタクなのだと思ってほしい。こんなことを言ったら怒られそうだが、「そういう乙女ゲーマーもいるんだな」と思って読んでほしい。苦手な人はここで退避してほしい。
 「イベントを観たことがない」と言ったが、こういうタイプが金を払ってまでイベントを観るわけがないのである。
 私が時間さえあればいくら払ってでも観に行きたいフィギュアスケートのNHK杯だって、テレビ放送あるいはニュースの結果を見るだけで充分だと満足している人からすれば「なぜわざわざ?」と思うだろう。それと同じことだ。
 さらに私は、自分=ヒロインの夢思考もなければキャラ×ヒロインしか愛せないタイプではない。それどころか、ヒロインと同一時間軸で友情キャラやライバルキャラの恋愛を妄想してきた。
 そんな女が、攻略対象が自分の推しカプの片割れ以外の人間に愛をささやくイベントになぜわざわざ行かなくてはならないのか。楽しめるわけがない、とそう思っていた。実際、別のネオロマンスステージを観たときはやっぱり少ししょんぼりしてしまったのだ。つまり私は、二次創作をするなどしてゲーム自体にハマればハマるほど、イベントへは足が遠のくのである。
 だからフロステ1は観ていないし、当然2も観ないつもりだった。
 しかし、Twitterを始めて、同じように作品を愛するフォロワーさんたちがイベント当日をわくわくしながら待っている様子を見ていると、私もそこに入りたいなと思ったのだ。一緒に楽しめたらいいな、とそう思った。
 ただ、それでも私は慎重で、現地参戦された私と推しカプが同じ方々が満足していたら観ようかなと思っていた。彼女たちが沈んでいたら、自衛のためにも観ない方がいい、と。
 結果、仲間たちは大満足ですごく楽しそうだった。他のお友達にも背中を押してもらい、その上でやっぱり観よう!と決めた。
 結果は「観てよかった!」これに尽きる。前置きが長くなったが、これが私のフロステ2再生までの経緯である。

 アーカイブ配信でステージを観るのは「刀剣乱舞のジョ伝」以来である。
 ネオロマンスはお友達が貸してくれた「コルダ」以来。ステージ開始前の客席の空気がざわめきとともに伝わってくる。ああ、ここにあのフォロワーさんもこのフォロワーさんもいらしたのだなあと思った。
ステージはご挨拶から始まり、キャラクターのやり取りが楽しめるドラマ、声優さん自体の魅力を楽しめる企画、キャラ好きも声優さん好きもどちらも楽しめる歌パート、といった構成である(合間にグッズの案内があった)。
 ドラマの内容は、危機的状況になった時に守護聖同士が連携をはかれるようにと、執事サイラスが『守護聖研修』と称して、研究院主任のタイラーを巻き込んだ企画をするというものだ。
 『女王候補二人が行方不明になる』という状況を意図的に作り、その時の守護聖たちの態度を確認、反省点などをあぶり出す、という趣旨のようだ。
 当然女王候補たちはサイラスの元で無事なのだが、それを知らない守護聖たちは取り乱し、犯人探しを行い始める。守護聖たちは、この中の誰かが女王候補たちをさらったのではないかと疑心暗鬼状態になり……というような流れである。
 守護聖たちの中には最初から『研修』の意図を知らされているものいて、場を混乱させたり引っ掻き回したりして、結果的に『犯人(サイラス)』を隠すことになる。
 その『役割』が「あー、この守護聖らしいな」と思わせられるものばかりで、やり取り全てに納得できた。観ている人の期待を裏切らないヴァージル、キツいことを言う損な役目をこなして後からきちんと謝るフェリクス、とにかく正直なゼノとそれをかばうカナタ、ゼノとカナタを信じているノア、笑いを取りながらも締めるところはビシッと締めるユエ、気性が真っ直ぐなせいか誘導にいちいち引っかかるシュリ、本気の仲違いにならない程度に場を撹乱するロレンツォ、最初から最後まで「ミランだな」としか言いようがないミラン。
 すごくいきいきとしたお芝居だったと思う。ちなみに私は声優さんの顔は七海さん以外ここで初めて認識した。
 サイラスの意図を知っているタイラーが進行役をつとめていて、ずっと話しっぱなしなのも嬉しい。仕事に徹するタイラーの合間に「なんで俺が巻き込まれてんの?」っていう平くんがちらりと覗くのがすごいなと思った。
 サイラスは声のみの出演だったが「確実にそこにおる」と思わせられる存在感だった。
 また、守護聖同士がゲーム初期よりも明らかに仲が良くなっていてほっこりした。ノアと年少組のやり取りにしても、ゲーム初期のノアは二人のことをあんなふうには言ってくれなかっただろう。フェリクスがシュリに本を借りていたり、カナタが他の守護聖に「仲間」という言葉を使ったり、とにかく『優しい世界』である。主義主張を超えて、オタクというのはキャラ同士が仲良くしているのを見るのが好きだ。それをよくわかってらっしゃる!と膝を叩いた。
 またロレンツォとルヴァがビデオチャットというワードだけで妄想が駆け巡ったし、神鳥とのやり取りが続いているのがわかって嬉しかった。
 さて、自分たちがごちゃごちゃやってる間に、女王候補たちはサイラスとグランピングしていて無事だとわかる。戻ってきた彼女たちに守護聖たちが囁く言葉が通称「愛メ」である。
 トップバッターのロレンツォだが、内容よりも何よりも「暗がりであの低音はヤバくないか?」「あの声は何らかの法に触れているのでは?」と思った。私はゲームするときに音声を切っていることが多い。そんな女がイヤホン越しにロレンツォのド低音を流し込まれたのだ。死ぬかと思った。あのステージの暗がりであの声を聞いたロレンツォの女たちは無事だったのか。懐妊したかもしれない、と思った。それくらい良かった。
 ゼノはグランピング自体に触れて、そこで快適に過ごせるような提案をしてくれる。相変わらず圧倒的に「一緒に何かするならゼノ一択」と思わせられる提案だ。正直「大自然でバーベキューとかめんどくせえとしか思わないけど、俺はゼノとならグランピング行くぞ」と思った。ゼノなら、ゼノなら(その面倒くささを)何とかしてくれる!と信じて疑わないからだ。愛メでときめきどころかその先に対する信頼感まで勝ち取っていくのはさすがである。
 ミランはドラマパートでもとにかく「おめー、軽いなぁ!」と思わせてくる。ハグもおそらくキスもこいつはさらっとしてくるはず!と思いながら聞いていた。しかし「彼の言葉は温か〜いお湯みたいなもの……」と油断した女王候補の湯船にいきなり熱湯を注ぎ込むような真似をしてくるのがミランだ。それまでの言動が軽く見える分、本気の雄ぶりを出してきたミランに「ヒェッ……神(色んな意味で)」となる。
 フェリクスはミランと真逆だ。ずっと真面目なことを言ってくる。あの甘やかな外見にそぐわず彼は「努力、友情、真面目!」という、キツめの少年ジャンプみたいなキャラだ。だからこそ、最後に見せる本音が尊さ百倍なのだし、女優だった母の話に触れるところも「あんたにならこういうことも話すよ」といってくれているようで嬉しいのだ。
 シュリは終始真面目な人なんだなということが伝わってくるドラマパートだったが、彼の良さは仕事熱心と真っ直ぐなところ、そしてそこはかとなく野卑なところだ。彼を知れば知るほど面倒見がいいとか読書好きだとか、次第にそっちのイメージが強くなるのだが、最初に感じた『強引な部分』の良さがこの愛メにしっかり描かれている。
 カナタはこの時点で随分前向きになっていて、それを見守る女王候補たちは残らず「よかったねえ」と思ったことだろう。愛メでは女王候補にはちらりと弱音を吐くところも戸惑いをみせる。カナタが成長したところが見られるのは嬉しいが、それと同時に自分にだけは弱音を吐いてくれるというのがお姉さんは好きだ。かっこよさと人柄の暖かさと、庇護欲のようなものまで感じさせてくれた。
 私はノアのいいところはおずおずしつつも、もじもじはしないところだと思っていて、今回も、決意したように「君と一緒にしたいこと」つまりはしっかりとした要望を述べるのがすごく良かった。しかもその『やりたいこと』というのが『お掃除』。ドラマ冒頭でノアが「アンジュと掃除した」と嘘をつくシーンがあるのだが、きっと「この嘘がほんとだったらいいな」といろいろ考えたんだろう。微笑ましい。そこで、「いい?」と聞かれるのだが、もう即座にみんな「い、い、いいに決まってるだろ!」パァンッ!て絞った雑巾をスタンバイしたと思う。
 ユエは自分の気持ちと首座としてこう思ったという気持ちをメッセージの中に織り交ぜてきて、あの短いセリフの中にゲーム内で見せる葛藤みたいなものがきちんと入ってるところが好きだなぁと思った。具体的には「俺は」と言いかけて「俺たちは」と言い直しているのだが、ユエは最初から「「俺たち」心配してたぞ!」と迎えるつもりだったのではないだろうか。しかしうっかり「俺」と、思わず本心が漏れてしまったんだろうなと思うと愛しさが増す。
 全員良かったという前提で、かつ推しかどうかは置いといても個人的に「ウッ…!好き!!」となったのは二人だ。
 一人目はミラン。最初から最後まで本当のことしか言ってないのに胡散臭いというのが、「これは脳内で何回も妄想したやつだ!」と思ったし、「もしネタバレ知らない側だったとしてもこいつは何らかの力で正解にたどり着きそう」と思った。ミランの不思議な魅力がたっぷりだったと思う。
 二人目はロレンツォ。ちゃんと事態の怪しさに気づいているところ、しかもそれを知っていてなお「面白そう!」と引っ掻き回すところが彼らしくて最高だった。そして、すごいと思ったのはレイナの寝坊に言及したところだ。
 ステージを見ていた人のほとんどが「レイナ寝坊したんか」とその部分にかすかな違和感を覚えたのではないかと思う。特にレイナが好きじゃなくても、彼女は「この人が寝坊するかなぁ?」と思わせるようなキャラだ。そこにちゃんと言及したロレンツォは、本当に人をよく見ていると思ったし、それに比べたら他の守護聖たち、お前らの目は背中にでもついてんのかよと思った。(一人くらい「あの女王候補が寝坊?」って言っても良かっただろうと思ったけど、それに一番気づきそうなフェリクスは『知っている側』である)
 とにかくロレンツォの良さが余すところなく出ていた。あやうく推し変しかけた。

 声優さんのトークパートは相手の嘘を見破るという仮面企画だったのだが、声優さんとキャラを重ねて見ることができない私のような人間でもすごく楽しめた。
 ここでもみなさんの仲が良さそうでニコニコしてしまう。
 やっぱり「全員素晴らしかった」という前提になるのだが、中でも七海さんがすごいなと思った。こういうトークの時は、声優さん自身の魅力が見えるとはいえ、七海さんは唯一の女性である。しかし演じるキャラは男性。最初から七海さん目当てという方以外は、見ている方々はある程度「ノアくん」を求めるだろう。だから素の七海さんの可愛らしさを見せつつも「ノアくん(男性)」を終始意識されているんだろうな、と思った。
 みんなでわいわいやってる時にも女性の高い声が混じらないし、座り方すら男性に混じっていても自然だ。キャラが入ってない時も自分の女性性を自然に抑えて振る舞っているように見えた。無理に男らしく振る舞っているわけではないのにかっこいいのはすごすぎる。さすがあらゆる年代の女の歓声を浴びてきた方、そういう意味でのプロだなと思った。大好きになった。

 あと、舞台全体を通して「女王候補」と呼びかけてくれるのがすごく良かったと思う。ヴァージルの手紙だけは例外だが、あれはヴァージルだからとかではなく、準備期間の問題だと思う。
 二次創作を浴び続けているとわからなくなるが、世の中「守護聖×アンジュ」に萌えている人ばかりではない。「アンジュ」というデフォルト名でプレイしたことのないプレイヤーはいくらでもいる。私のリア友は遥かシリーズの夢女だが、アニメも舞台も観ないので未だにヒロインのデフォルト名を知らないくらいだ。
 元々ネオロマンスシリーズは『ヒロインis you!』の世界なのだ。だからこの舞台からは「観ている人はみんな『女王候補』やで」という温かさを感じた。そのうえで、「守護聖様方が呼びかけている対象はこの私!」と思ったり、「女王候補=アンジュ」と思ったり、「女王候補=レイナ」と思ったり、「いや、攻めの守護聖が受けの守護聖を『女王候補』と呼ぶ戯れ」と思っても間違いではない。
 楽しむための間口が広いのだ。私が恐れていた「推しカプを否定されるのでは」という出来事は起こらなかった。おそらく夢女のみなさんも安心だったと思う。観劇に向かうBLの方々は最初から『覚悟』が違う。
 声優さん萌えがない私のようなタイプであっても、トーク部分を楽しめた。それはきっと声優さんたちがキャラクターを愛して、大事にしていることが伝わったからだと思う。「このキャラはこうだよね」とプレイヤー以上に理解しているから、自然と重ねて見ることができるのかもしれない。
 すごく楽しい時間だった。キャストの皆さんに心からの感謝を捧げたい。

 
 


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