アンジェリークルトゥール ゼフェル攻略感想

攻略7人目は鋼の守護聖ゼフェル。
ヒロインアンジェリークと同年代(守護聖はあんまり年を取らないってことは置いといて)の少年キャラだ。
ゼフェルはネオロマ界に君臨するキングオブツンデレとして名高いが、調べたところ「ツンデレ」という言葉が一般化するのは2006年に流行語大賞にノミネートされたあたりだ。それに元々「ツンデレ」は女性キャラのみを指していたらしい。2006年より前にすでにゼフェルは存在していたので、もはや彼はその道の「先駆者」といってよかろう。

また、攻略対象が最初からヒロインに優しい昨今の乙女ゲームに慣れた者がこぞって「「アンジェリーク」の男どもは塩対応」と言っているのは、主にこのゼフェル(とジュリアス)を指しているのではないかと思う。
確かに、親密度の低い状態でゼフェルの執務室に行くと、真面目に育成のお願いをしていてもなぜか怒られる。セリフもさることながら表情も、他のキャラのように「顔をしかめる」程度に留まらず「こいつは今私にめっちゃ怒ってる」とはっきり解る。
だからこそ、最初からゼフェル狙いならともかく、アンジェリーク初プレイでまだ推しが定まっていない女王候補は初対面のゼフェルに大量の塩をぶっかけられ、
そ、そんなに怒んなよ。こえーよ!
とついつい遠巻きにして、対応優しめの守護聖の部屋に逃れがちだ。そして気づいた時には、遠巻きにしていたゼフェルがロザリアに取られていたりするのだ。初プレイ時、そういう状態になったプレイヤーは多いのではないか。
しかし、最初に冷たいのはいわば「助走」なのだ。
最初から優しい言葉をかけられたら嬉しいに決まっている。だが想像してほしい。度重なる「うるせー!」「めんどくせーんだよ!」を浴びて凍えた心に、急に熱湯をかけられた時の気持ちを。
温度差で死ぬしかないだろう。
つまり「どうせまた「興味ねー」とか言って怒るんだろうな」と油断している女王候補の心臓を「おめーって意外とカワイイ…な、なんでもねーよ!」といきなり一突きしてくる。
それがゼフェルである。
何を言っているのかわからないかもしれないが、私とゼフェル推しの女王候補には(多分)わかってるから別にいい。

さて、塩をぶっかけられてもめげずに執務室に通って仲良くなるにつれて、ゼフェルがなんでアンジェリーク、というか女王候補に冷たいのかがわかってくる。
前鋼の守護聖ライが失踪した(ということになっている)ため、ゼフェルはいきなりなんの前触れもなく聖地に連れてこられた。聖地から消えたライの力を補う形で鋼のサクリアがゼフェルに宿ったからだ。この辺は漫画版と少し異なっている。ルトゥールではライの失踪という理由があるが、漫画版では特に理由のないサクリア消失がライを襲い、ライは自分の代わりに急速にサクリアに目覚めたゼフェルにその焦りと苛立ちをぶつけるという設定になっている。
ルトゥールは漫画版よりも断然マシな展開ではあるが、それでもゼフェルが「来たくもない聖地に無理矢理連れてこられた」という気持ちになるのは仕方がない。普通は守護聖になる準備期間があるらしいが、ゼフェルの場合は突然だったのだ。少年らしい将来の夢があり、友人もいて、自分の暮らしに満足していたはずだ。しかも彼の年齢は反抗期がようやく終わるあたり。こんな状態で聖地に連れてこられて反発しないわけかない。
だからゼフェルは守護聖の仕事にも熱心に取り組めないし、守護聖として女王試験に関わるのも嫌なのだ。「面倒くさい」という言葉で済ませているが、女王を選ぶ事そのものに抵抗があるのかもしれない。なぜなら女王に選ばれた者は守護聖同様、外界から切り離された聖地で暮らし、普通の人とは違う一生を送らなくてはならないからだ。試験に協力するという事は、その片棒を担ぐ事にほかならない。
「女王候補に選ばれたのだから試験を受けろ」と言われて飛空都市に連れてこられた女王候補たちに、ゼフェルは自分を重ねているのだと思う。
特にアンジェリークは平民出身であり、女王になる覚悟を決めてから試験を受けているようには見えない。
アンジェリークの状況はゼフェルが守護聖に選ばれた時とよく似ているのだ。
だから、ゼフェルのアンジェリークへの態度の根底には「(自分と同じで)いきなりこんなとこに連れてこられて大変だな」と同情する気持ちがある。
しかし、我らがアンジェリークはゼフェルが思う以上にタフ。全然へこたれないし、キツイことを言われてもめげない。
親しくするうちに、ゼフェルのアンジェリークへの気持ちは「こんなに能天気なのは、どうせ何も知らないからだろ」という苛立ちから、「ほとんど無理やり選ばれたのに、頑張っててすげえな」という評価に変わる。
やたらと前向きなアンジェリークに協力しているうちに、ゼフェルの気持ちはさらに変わり「自分も頑張らなきゃな」から「守護聖の仕事も面白いと思い始めた」という所にまで来る。
女王試験に関わりたくなかったはずのゼフェルが、それに守護聖であることすら嫌がっていたゼフェルが、自分の力を積極的に使いたいと思えるようになったのだ。
しかし、使命に目覚めたゼフェルが協力すればするほどアンジェリークは女王に近づく。女王になればアンジェリークとはもう二人きりで会うことはできなくなる。
守護聖になった経緯から考えても、そういう自由が無くなる事をゼフェルは誰よりも嫌だと思っているはずだ。オリヴィエにもその傾向はあるのだが、あちらの方が大人な分感情を抑えるのがゼフェルよりも上手く、アンジェリークへの告白もさらりとしていた。
だが、ゼフェルの場合はその感情を告白の時にばっちり見せてくれるのだ。「女王になったらこんな風に会えなくなる、そんなのは嫌だ」と。
告白を受け入れるとゼフェルに抱きしめられているスチルが出るのだが、それがめちゃくちゃ良かった。
というのも、他の守護聖は告白が受け入れられた事に対してアンジェリークに何か言ってからハグなり手にキスなりのアクションを起こすのだが、ゼフェルの場合は抱きしめてから言葉を発するのだ。
ゼフェルの顔は真っ赤なのだが、抱きしめられているアンジェリークからはその表情が見えないはずだ。照れ屋のゼフェルはそうしないととてもじゃないがこんな事は伝えられないんだな、でも頑張って伝えてくれたんだな、とよくわかる。ゼフェルの性格とそのセリフの良さが引き出されたスチルだったと思う。
エンディング後にゼフェルは、なんと指輪を差し出してプロポーズしてくれる。アンジェリークはファンタジー色が強いので、指輪でプロポーズという現代っぽさが逆に新鮮だった。
自分から告白するバージョンのエンディング後もすごく良かった。なにしろ、ゼフェル推しならずとも一度は妄想する「徹夜で機械いじりして寝ちゃったところを膝枕」である。アンジェリークの膝ですやすやしながら、心の中では素直なゼフェルにはものすごくときめいた。

あと、告白とエンディング以外で個人的に私がいいなーと思ったのが「ゼフェルはワルツが上手い」という設定だ。舞踏会のシーンである。
ギャップ!いかにもダンスが苦手そうなくせに、実は社交ダンスが踊れしかも上手いというギャップ!
「ダンスには器用さが必要なんだぜ」とゼフェルは言っていたが、彼はそれ以外にも事あるごとにその器用さを活かしたイベントでプレイヤーを仕留めに来る。
花火を手作りし、自作の「特別なロボット」を見せる約束をし、コンピュータでデータ解析を手伝う。エンディングでくれた指輪だって、もしかしたら自分で彫金したものかもしれない。
手先が器用な男はいい。
それは間違いない。
家電が壊れたら直してくれそうだし、車のタイヤ交換もささっとやってくれそうだ。アンジェリークの現パロで守護聖を就職させるとしたら、一番職に困らないのがゼフェルだと思う。手先を使う専門職なら意外な職業でも就けそうだ(昔、歯科技工士をやっているゼフェルの現パロ二次創作を読んだことがある)。

あと最後に、私はルトゥールゼフェルの髪型といい衣装といい肘から手首にかけての筋の線といい(細かいな、おい)、キャラデザがすごく好きなのだが、ただ一つ不満がある。
それはスチルでアンジェリークと並んだ時に、身長差が大きく見えるところだ。長身とまではいかないが、スチルではゼフェルの背がランディくらいありそうに見える。
私は「ゼフェルは身長が低いことを気にしている」という設定が好きなので、そこは残してほしかったなと思った。

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