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アンジェリークルミナライズ カナタ攻略感想

※個人の感想ですよ

 アンミナ攻略ラストは水の守護聖カナタ。
 水色の短髪に青い目。舞台がときメモGSでも充分やっていけそうなビジュアルの元DK。
 運動部所属で友達が多そうだし、オシャレにも気を使いそれなりに流行も押さえていそう。また、オタクではないのに趣味はゲームでアニメにも抵抗がない。反抗期も早々に終えて親や弟とも仲がよく、空気を読んだ会話もできる。ありがとうもごめんなさいも照れずに言える。まさに令和の男子高校生であり、さとり世代の良いところを抽出したようなキャラだと思う。

 カナタはほんの少し前までは普通の男子高校生だったのだが、前任の守護聖のサクリアが急に減少したことで、女王試験直前に新守護聖に選ばれたという特別な設定を持っている。守護聖に選ばれる者は出自や年齢を問わない。よって「この宇宙は女王陛下と彼女に仕える守護聖様によって守られているのよ」と寝物語に聞かされて育った者だけでなく、「女王って何?」みたいな人間がいきなり選ばれる可能性もあるのだ。
 カナタの出身地は「バース」。現代日本を喚起させる場所で、女王信仰は存在しない。当然、カナタは女王や守護聖について知らない(アンジュやレイナの読んでいた絵本をカナタは知らなかったらしい)。
 しかしそれでもサクリアを宿しているとなれば聖地に連れて行かれ、守護聖にされてしまう。断ることはできない。守護聖がいないと宇宙は崩壊するからだ。
 普通は前任の守護聖からの引き継ぎがもっとゆっくりなされる。守護聖になれば普通の人ではなくなるから、できるだけ本人が納得できるように説得を受けて聖地に来るし、来た後も前任者と過ごす時間があるのだ。しかし、前任者のサクリアが急に消失した場合、「ゆっくり引き継ぎ」などと悠長な事はやっていられない。だからカナタは、何もかもわからん状態で家族に別れも言えないまま、拉致されて聖地に連れてこられたのである。混乱を避けるため、カナタの家族や周りの人間はカナタに関する記憶を消された。
 この「普通の男子高校生カナタ」が「守護聖になる(サクリアに目覚める)」「聖地からの迎えがくる」、そして「バースから彼の存在が消える(聖地に行ってしまった)」という流れは、ツイッターを大いに盛り上げた。男子高校生カナタがツイッターをやっているという設定で、アンミナ発売前からそのアカウントが動いていたからだ。
 このSNSならではのプロモーションはかなり成功したと思う。カナタのアカウントをフォローしている人にとっては、自分のTLにいるごく普通の男子高校生に忍び寄る不穏な気配、それから日常が少しずつ変わる様子、聖地に連れさられ、その友達からカナタとの記憶が消えるまでがバッチリ見られる。
 カナタのツイートはまとめにもなってバズり、ネオロマとは無関係のアカウントからも私のところに流れてきた。
 普段は乙女ゲーに縁なき人の「カナタだけは攻略してみたい」という呟きも目にした。私のアカウントはとにかく雑多なので、ネオロマに関係ないアカウントが「おっ、楽しそうなゲーム!」と純粋に興味を持った様子が伝わってきた。
 一方、古参のネオロマンサーの多くは「カナタが可哀想」「ご家族の気持ちを考えると」「そういえば神鳥の鋼も」などと、ワクつくよりもむしろしんみりしたムードになっており、対象的な雰囲気だったのが印象に残っている。

 こうして男子高校生カナタは、水の守護聖カナタ様となった。だが、現代日本っぽいところからいきなり聖地に連れてこられて「二度と家族にも友達にも会えないけど仕事は頑張ってください。でないと宇宙は滅びますよ」みたいな事を言われて、彼に困惑と怒りが沸き起こらないわけがない。当たり前だが、もともと守護聖としての使命感はゼロなのである。
 カナタは友人にも恵まれ、家庭環境も良く、勉強にも運動にも特に困っていない。そのままバースにいたら、高校生らしい青春を謳歌して彼女の一人も作ったと思う。だからカナタにしてみれば、神様みたいな存在になって聖地で暮らそうぜ!という「これなんてラノベ?」な状況も全く魅力的ではないのだ。
 こんな経緯があるため、カナタだけは他の攻略対象とは立ち位置が違う。彼は精神的にはまだ守護聖になっていないからだ。
カナタとの物語は、恋物語でありながら、守護聖カナタ誕生の物語でもある。

 アンジュ(とレイナ)もまた、よくわからんままカナタと同じ場所から聖地にやってきた。ただ、無理やり連れてこられたカナタと違って女王候補たちは自らの意志でここに来たのだ。
 そのため私は、ここからの展開は大丈夫なのだろうかと心配になった。
 自分と同じように無理やり連れてこられた人間が前向きに頑張っているなら、その姿に励まされもするだろうが、自分の意志で来た人間が頑張っているのを見てもカナタの心は動かせないのではないかと思ったからだ。
 「オレだって自分が来たくて来たんならちゃんとやるよ!」とカナタがアンジュたちに怒りを覚えないのかと不安になったからだ。
 しかし、カナタの性格の良さは私の想像を上回っていた。
 カナタは「ここに来たのが自分の意志かどうか」という部分よりも、アンジュは自分と同じように「わけのわからない場所でわけのわからない事をさせられている」という部分に強く反応しているように見える。
 「あんたは自分で選んだんだからやって当然だろ」とはならず、「わけわかんないのにちゃんとやってて偉いよ」とその順応力に評価を下すのだ。
 なんて性格がよく素直なんだ。
 カナタはアンジュに対して「ちゃんとやっててすごい、さすが社会人」と感心し、アンジュの共感力に「オレのことをよくわかってくれてる」と惹かれていく。
 この段階のカナタはもう守護聖になりたくないと駄々をこねているわけではなく、ちゃんと「受け入れるしかない」と理解はしている。だが、なかなか納得はできないし「何でオレなんだよ」という気持ちを消せないでいる。
 だからカナタはきっと「守護聖になったんだから頑張れ!」ではなく、シンプルに「そうだよね、大変だったね。つらかったね」と寄り添ってもらいたかったのだと思う。それは励ましたり慰めたりするのともまた少し違う。
 カナタにとってアンジュはそこをばっちり満たしてくれる存在だったのだろう。カナタが求められるままにサクリアを惑星に送り疲弊して倒れた時の対応もそうだが、このあたりは、従来の17歳ヒロインでは出せない包容力を感じる。
 民の痛切な望みに応えるという経験をしたカナタは「自分は守護聖なんだ」とはっきり自覚する。宇宙の安定には水のサクリアが必要で、それを持つのは自分だけなんだと、心底わかったのだと思う。それなら「仕方なしに」ではなく、「自分の意志で」守護聖としての使命を果たしたいとカナタは考えるようになる。
 なんて真面目でいいやつなんだ。
 しかし、カナタがどうしても引っかかっているのが故郷の事だ。別れも何も言えずに突然離れてしまった家族の事だ。「会えるのはこれが最後」と思って別れるのと、そのまま永久に会えないとは思いもよらず、ろくろく話さず別れたのとではやはり違うだろう。
 けじめという意味でも最後にもう一度家族に会いたいと17歳の少年が願うのは当たり前の話である。
 異世界に召喚されても家族や友人にそれほど思いを馳せない遙かシリーズの神子たちがゴリラすぎるだけで、カナタは普通だ。
 カナタの望みを叶えるためにアンジュはサイラスに掛け合い、帰省の許可を取る。
カナタは無事に家族と会え、さらに友人とも会える。
 この帰省を叶えてくれたアンジュに感謝するのは当然の流れだろう。
 この後カナタは「でもやっぱりつらい」と涙を流し、アンジュに縋るのだが、これは以前のように「とにかく守護聖になりたくない。帰りたい」という気持ちからではない。使命について、守護聖の重要性について、それが自分にしか出来ないことだと理解した上での「つらい」なのだ。
 カナタはここでアンジュに自分の名前を、両親に名付けてもらい17年間呼んでもらった「奏多」という名前を教えてくれる。もう二度と家族にも友人にも呼んでもらえないその名前を、アンジュが覚えていてくれるならそれでいいと言ってくれるのだ。
 これが、カナタが守護聖としての覚悟を決めた瞬間だろうと思う。
 カナタの物語でのアンジュはとことんカナタに寄り添って話を聞くスタイルだ。正解選択肢もわかりやすい。これだけ寄り添って話を聞いてくれた上、本来なら難しい帰省が叶うように掛け合ってくれた女にカナタが惹かれるのも無理はない。
 だから、告白も唐突な感じは全くせず、守護聖としての自分を受け入れられたのはアンジュのおかげだと言われたことも含めて説得力のある流れだった。
 好きだとストレートに告白して、オッケーを貰ったら即キスなあたり、がっついている高校生という感じがしてとてもいい。
私は2次元の童貞が好きだ。
 また、告白時に「守護聖と女王の恋愛はマズい」みたいなものが感じられないのもカナタならではだと思う。最良に行くときも「せっかく一生懸命やってきたんだから、女王試験続ける?」というノリで、全然重くない。「女王試験」の部分を「英検」に置き替えても違和感がないくらいだ。
 だがカナタはそれでいい。そこでいきなり「女王に向いてるから目指すべきだよ」などと言ったらそれはもうカナタではない。
 年下キャラならではの「オレは子どものままでいる気はない」まで飛び出して、可愛さとかっこよさが同時に味わえる告白だったと思うし、ラストは守護聖として頑張っているカナタに会える。
 よかったな、カナタ。

 ところで個人的な好みなのだが、私は「攻略対象を励まし続けて心を開かせたり成長させたりする」というシナリオがあんまり好きではない。なんでお前の事情に付き合って振り回されなきゃならんのだ、こっちが振り回したい!と思うからだ。
 カナタのシナリオも本来ならここに当てはまる。しかし、私は今回、苦手であるはずの「ひたすら話を聞いて成長に付き合ってあげる展開」が全く苦ではなかった。
 それは多分カナタの「事情」が尋常ではなく重いからだ。進路で悩んでるとか、才能やコンプレックスがどうとかいう事情とはわけが違う。だから、自然と「この子の話は聞いてあげなあかん」という気持ちになったのだと思う。
 それは例のツイッタープロモや恋愛イベントで、「普通の男子高校生がいきなり守護聖にさせられる。もう家族や友達にも会えない」という悲しさが丁寧に描かれたからだ。
 カナタの恋愛イベントはかなりの部分が「守護聖カナタ誕生までの道のり」なので、ここを雑に描いてしまったら、カナタに対して「なにいつまでもグダグダ言ってんだこいつは」とマイナスの感情をいだきかねなかった。
 守護聖の凄さ素晴らしさではなく、ただの人間が神のような存在になることの哀しみが伝わったからこそ、プレイヤーはカナタに最後まで寄り添えたのだと思う。

 あと私の思うカナタのいいところは、なんと言っても「おねえさん呼び」だ。
カナタにアンジュの事をおねえさんって呼ばせようぜ!と提案したルビパの人を表彰してくれ。
それに、ゲーム内のカナタは「おねえさん」と「アンジュ」呼びを絶妙に使い分ける。なんとなくだが、ちょっと照れくさいことを冗談交じりに言う時は「おねえさん」、真面目な話がしたい時や冗談に紛れさせたくない時は「アンジュ」と言っている気がする。
 それに、自分がアンジュより年下だと意識している時や、アンジュに「オレはあんたより年下だよ」と意識させたい時には「おねえさん」。年下を意識してほしくない時、対等だと言いたい時には「アンジュ」な気がする。
 つまりカナタが「結構大胆だね、おねえさん」と言う時と「結構大胆だね、アンジュ」と言う時ではニュアンスが違う。
 すまない、これは全て私の妄想だ。考察でもなんでもないのですぐに忘れてほしい。
 いきなり個人的な濃いめの妄想をぶちまけてすまないが、カナタは呼び方一つで、その時の雰囲気の差分を表現できるのだと言いたかった。

 あと、「おねえさん」呼びとも関係するのだが、やはり17歳の男子高校生と社会人ヒロインの組み合わせには背徳のロマンがある。
 リリース前には社会人ヒロインが17歳の男の子と恋仲になるという点にひっかかった人を見かけたが、私はそれほど抵抗を感じなかった。もともと自己投影しないタイプのプレイヤーなので、ヒロインが誰と恋愛してようが、私はそれを眺めているだけというスタンスだからかもしれない。
 しかし「ロマンがある」と書いた矢先に、まさしくその年齢差で「淫行」に引っかかって懲戒免職になった女教師の記事を見つけてしまい、スンッとなったところである。
 そう、この現代日本でアンジュがカナタと恋愛したら条例に引っかかるのだ。男子高校生との恋愛に抵抗がある、と思ったやつは正しい。アウイナイトをやろう。
 カナタとアンジュの組み合わせは、ただ17歳と25歳だから良いのではない。少なくとも私は年齢差そのものに萌えたわけではない。
 ではどこがよかったのかというと、共通の倫理観を持った17歳と25歳が、それを咎められない場所で恋愛したから良かったのだ。
 カナタとアンジュは同じ時代のバース出身なので、「大人が未成年とそういう行為をしたらお縄」という倫理観を共有している。ここが、他惑星出身の年下キャラとカナタとの違いであると思う。
 場所が飛空都市に変わっても、倫理観や価値観はバースにいた時と変わらない。だからお互い「相手は男子高校生だぞ」「相手はオトナのお姉さんだぞ」と意識してしまうのだ。これでカナタが異惑星出身の17歳であったなら、お互いこれほど「年上、年下」を意識しなかったと思う。15で成人年齢の惑星だってあるだろうからだ。
 それに普通、カナタのような育ちの男子高校生が25歳のOLとプライベートで親しくなることはまず無い。だから、アンジュに対して「おねえさんは色々知ってんだろうな」と想像して引け目を感じている。
 そこからカナタは「オレは年下だし、下手なことして呆れられたらやだな」という遠慮や悩みをちらっとのぞかせる。また、逆に「オレのこと、年下だからってなめないでよね」という逆襲的なイキりみたいなものも見せる。それが可愛いし、ときめくのだ。
 年齢差の恋愛が咎められない世界に来ても倫理観はいきなり変えられないため、年齢というかお互いの経験値をどうしても意識してしまうのがこのカップリングの魅力の一つなのではないだろうか。

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