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金色のコルダAS神南 土岐蓬生攻略感想

 AS神南攻略ラストは土岐蓬生。
 土岐は長髪にメガネ。関西弁というより土岐弁といった方がいい特徴的な話し言葉。自分を隠す傾向があるにもかかわらず、実は構われるのも嫌いじゃない。そういう矛盾を抱えた一筋縄ではいかないキャラだが、光の中を歩いてきた真っ当な陽性ヒロインがこういう男に惹かれちゃう心理も何となくわかる。
 怪しい、気だるげ、でもちょっと寂しげ。本当の自分を見せられるのはあんただけやで。
 く~~~! こ、この~~~!! 雰囲気エロくて何考えてるかわかんない上にメガネだけど、何故か好きだ~~~!!
 と小日向が思ったかどうかは知らないが、土岐は最初から優しいし冗談も通じるタイプなので、話しやすいとは思ったのではないだろうか。
 ただ、土岐は女に優しくはあるが、誰から見てもそれがファンサービスであり恋愛ではないとすぐにわかる。来るもの拒まず去るもの追わず、退廃的で何事にも本気で取り組んでいるように見えない。
 それだけだと土岐はただの色っぽいお兄さんになってしまうのだが、彼の場合そこに「病弱」が加わる。その設定によって彼の言動は色んな意味を持ってくる。
 AS珠玉ルートは土岐の病弱部分にかなり焦点が当たったシナリオだったように思う。
 このルートでの土岐は自分の体力の無さや不調をひたすら周りに隠している。これはコルダ3ではそれほど見られなかった描写なので、土岐が病気がちな自分をどう感じているのかが3よりかなり掘り下げられていると感じた。
 ストーリーが進むにつれて、土岐が自分の体力の無さを密かに恥じており、周りにはその不調を知られたくないと思っている事がわかってくる。
 土岐は、周りに「体調が悪いのね。大丈夫?」と気遣われるより、怠惰だと怒られた方が精神的に楽なんだと思う。情けない姿を見せたくないというのも勿論あるだろう。だから不調を隠す。土岐は退廃的でメランコリックな雰囲気を隠れ蓑のようにして、本当に具合が悪い時も巧妙に誤魔化してきたんだと思う。
 しかし、彼の不調に小日向が気づく。小日向は、ファンや持ち上がりの神南生徒とは違う目線で土岐をよく見ていて、しかも誤魔化しが効かない真っ直ぐなタイプだ。
気づかれた事に土岐は驚き、それ以降は彼女の前でだけは病弱な自分を隠そうとしなくなる。それに、ヴァイオリンが上手くなりたい一心で神南に転入してきた小日向は、何事も諦めがちな土岐には眩しく映ったのだろう。幼い頃からの病弱は、きっと土岐に色んな事を諦めさせてきたのだろうから。
 土岐に限らず神南3人のシナリオは全て、小日向が「ヴァイオリンのために神南に転入してきたこと」が攻略対象の気持ちにかなり影響を与えている。これは、ASというifルートを実にうまく使っていていいなーと思う。

 さて、一旦心を許した後の土岐は、前以上にスイートな事を言ってくるのだが、中でもやっぱりプレイヤーとして嬉しかったのは、彼が階段で弱音を吐くイベントだ。
一度は甘い言葉で誤魔化そうとするが、すぐに「実はこの階段上るのキツい」とカミングアウトしてくる。もっと体力があればこんな階段簡単に上れるのに、と悔しそうな顔を見せる土岐。それはストーリー進行前には見られなかった事なので、彼が小日向に心を許したのがわかってとてもいい。
ただ私は、土岐の珠玉と東金の逆注目を同時に攻略していたので、土岐が階段で息をきらすイベント直後、東金に軽々と姫抱っこされて庭園散歩を楽しんでしまった。生まれつきの病弱の辛さをこれ以上ない対比で見ることになり、甘いはずの東金イベントで何故かしんみりである。
 ステージでのアンコール演奏も、土岐がパトラッシュとネロみたいになってる教会のエンディングも彼らしく甘やかなのだが、やはり私はこの階段イベントが一番好きだ。

 土岐珠玉ルートはざっくり言うと、真っ直ぐな情熱でヴァイオリンに向き合う小日向、さらに、隠し続けた自分の不調に気づいてくれた小日向に土岐が惹かれるという流れになっている。前述したようにそれはそれでいいシナリオだった。
 しかし、私はどちらかというとコルダ4の土岐ルートの方が好きである。
 真っ直ぐな小日向を「自分にはない物を持った眩しい存在」ではなく、「めんどくさい」もっと言えば「鬱陶しい」と思い、そこから根負けするように恋に落ちる4のシナリオの方が、土岐の一筋縄ではいかない感じがよく出ていたし、攻略した時の達成感が凄かったからだ。
 土岐が矛盾と捻れを抱えたキャラなのは最初からわかっているのだから、ASでももうちょい土岐の曲者っぽさを出しても良かったのではないだろうか。

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