金色のコルダオクターヴプレイ記 柚木ルート感想
最初に言っておく。
このルート、オクターヴの中で一番好きだと思った。
私がオクターヴで見たかった恋愛イベントはこういうヤツなんだよ!と途中で何度も机をバンバンした(うるさい)。ちなみに私の最推しは柚木ではない。だから、推しならなんでも尊いという推し補正がかかっているわけではない。
私はオクターヴというゲームを、15周年記念のお祭りゲームという位置付けで楽しんでいる。
オクターヴの時間軸はコルダ2とアンコールの間、コルダ3と4の間にあたるので、オクターヴをプレイする私たちは少し先の彼らの姿を知った状態である。つまり、オクターヴの世界では、アンコールと4に矛盾するイベントは起きないということになる。
だから新展開はないと予想していたし、その分、妖精の世界ならではイベントを期待していたのだ。
しかし、フェスタルート。月森、加地、志水、王崎、吉羅と攻略してみたが、そういう楽しいやつはなく、どちらかと言えば重い。
せっかく一夜の夢なんだから、フェスタルートでもそろそろ楽しい魔法や不思議を駆使したハリポタ的なイベント、まあ、ぶっちゃけ、二次創作に出てきそうな人格交代とか分裂とか惚れ薬とか心の中が見えちゃう眼鏡とか、そんなやつが見たいんだよ!
そう思っていた私の前に、満を持して登場したのが柚木様だったのだ。
オクターヴの柚木は最初から日野の事をわりと気に入った状態で登場する。時期がクリスマスコンサート後ということは、日野だけでなく火原も柚木のもう一つの顔を見た上で親友宣言をしていることになる。好きな女の子と親友の前で柚木はもう取り繕う必要がないわけだから、彼が意外にもハルモニアで伸び伸びしているのも頷ける。
騒がしさにひとしきり文句を言ったりはしているものの、日野の手を取ったりからかったり徒歩通学したりと楽しそうだ。
でも次第に、実は日野が自分に意地悪されるのを嫌がってたらどうしよう、優しくした方がいいのかなと悩み始める柚木。
日野じゃなくても優しい方がいいに決まってるだろ!
と私などは真っ先に思ったのだが、柚木は日野に対して意地悪なのがデフォルトなので、今更優しくっていってもなあ…みたいな話らしい。
確かに彼との馴れ初めは「目障りなんだよ」とか「壁打ちの壁になれよ」なんだから、今更優しくするのも、と柚木が思うのもわからないではない。
そこで、悩める柚木が相談相手に選んだのは、当然ながらズッ友の火原。よく考えたら、あのプライドの高い柚木に意見を求められるなんてすごいことだ。
「火原を好きな子が、火原に意地悪してきたらどう思う?」と尋ねた柚木に、火原が出した答えは「好きなのになんで意地悪するの?おれなら好きな子には優しくしてほしいな」。
ど正論である。
火原には、柚木だけでなく全小学生男子の前で演説してほしい。
火原の話を聞いた柚木は、この世界にいる間だけでもと、日野に優しくするようになる。
しかし、突然降臨した白柚木を喜ぶどころか、裏があるのではないかと疑い出す日野。
優しくしたい柚木と、優しい=自分はもう柚木の特別じゃないと考える日野(なぜそうなる)。
そんな精神状態の時に絆を試す試練が起きるのだ。
皆とはぐれた日野の前に二人の柚木が現れて「本物はどっち?」と迫る。
片方は優しく一人称は「僕」、もう片方は意地悪で一人称は「俺」。
柚木クラスタなら一度は夢想する(そうかな)、白柚木と黒柚木によるサンドである。
優しい柚木。意地悪な柚木。どっちも柚木だ。どっちも柚木じゃない。
以上のような4つの選択肢が出てきた。
ちなみに「どっちも私の柚木様です!!」と自信満々に答えたら、永遠にハルモニアで暮らす羽目になった。
どうやら「どっちの柚木でもない」と答えるのが正解だったのである。
優しいだけでも意地悪なだけでも柚木ではない。日野は、優しくされるのは嬉しいが、取り繕った柚木を見たいわけじゃないと言いたかったんだろう。
意地悪されたいわけではないが、柚木がそういう顔を見せてくれる相手は自分だけという優越感、独占欲もある。
白と黒どちらか一方ではなく、ありのままの自然体な柚木がいいということだろう。
このあたりで私の頭の中では某有名カフェオレのCMが歌詞を変えて鳴りっぱなしだった。
♪意地悪な柚木もいいけど 優しい柚木も素敵なの
と。
つまり、柚木に白黒つけたらいけないのだなという話である。
さて、無事に絆を深めて試練を突破した日野だが、目の前に現れた本物の柚木に対しても「偽物だったらどうしよう」と、少し疑っている。
そこで柚木がとった行動は、フルートを吹いて聞かせること。「自分」が一番はっきり伝わる方法をとってみせ、日野はそこで彼こそ「本物の柚木だ」と認める。
実は私はこのシーンが好きなのだ。
というのも、無印のエンディングで柚木は日野に「数あるフルートの音色の中から俺を見つけられるか?」というような問いかけをしているのだが、今回日野がそれに応えた形になっているからだ。
柚木の音をちゃんと聞き分けられるほど絆が深まってたんだなあと感慨深かった。
柚木というキャラは乙女ゲーム界に間違いなく革命をもたらした。無印発売当時はまだ乙女ゲーそのものが少なかったのもあるが、物腰柔らかな中性的美形が実はS気味というのは柚木登場まで私は二次創作でしか見たことがなかった。
今でこそわりとよく見るS気のある優男や、あんな優しい彼が「実は」という豹変は、乙女ゲーでは柚木が最初だと思う。
近いのはセイランだが、彼は豹変せずとも最初からキツい。
柚木のいいところは、意地悪は言うが日野を本気で貶めるようなことは言わないとこだ。分かってないな、とひとしきりからかった後はちゃんと教えてくれる。そしてたまに甘やかしたり、自分が照れてみたりする。
飴と鞭の使い方が抜群である。
エンディングでも、いつもの意地悪を言いつつ髪飾りをつけてくれるわ、「特別だ」「可愛い」「好きだ」と言ってくれるわ、まさに大盤振る舞いだったし、知らんうちにキスまでされていたようだ。
柚木は本当に、甘くて苦いママレード(ある程度の年齢以上にしか伝わらないたとえ)だな、と改めて思った。
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