アンジェリークルトゥール ブライアン攻略感想

ブライアンはルトゥールで初登場した新キャラだ。
…といいつつ、実は旧作や漫画版アンジェリークではおなじみというか、「よくは知らないものの、お噂はかねがね」みたいなキャラでもある。
早々にネタバレすると、彼は前任の鋼の守護聖ライなのだ。
女王試験のために聖地から飛空都市に向かうには「星の小径」という回廊を使うのだが、この回廊、宇宙空間にむき出しで架かった橋みたいなものなので、ぼーっと歩いてたら宇宙に落ちかねない。気をつけろと言われたそばから、気になる光を追いかけたアンジェリークは小径から落ちる。
け、軽率ーーー!
女王試験の前にうっかり死ぬところだったが、とにかくアンジェリークは転がり落ちた次元のはざまで謎の男を発見。彼と力を合わせて脱出に成功する。
この男がブライアンで、彼はアンジェリークが偶然ここに落ちなければ永遠に脱出できなかったかもしれない。女王のサクリアは時空に影響を与えられるので、そのタマゴである女王候補にも僅かながらその力がある。アンジェリークの落ちた次元のはざまは少しその影響を受け、そのために動くことが出来たのだろう、とディアが説明してくれる。
何にせよ、ここでアンジェリークと出会ったことがブライアンの運命を変えたのだ。
ブライアンはアリオスかゼフェルのような銀髪。口が悪くて偉そうなわりに一人称が「俺」ではなく「僕」。もうそれだけでナイスギャップなキャラだ。性格が穏やかじゃなさそうな奴の一人称「僕」が私は好きだ。

私はいつも攻略サイトなどを一切見ずに適当にゲームを進めるので、ブライアンに出会ったはいいが再会する手段が分からなかった。色々試してようやく、ブライアンと継続して会うためには平日に大陸視察に行かなくてはならないことがわかった。
私は旧作から今まで、行動力を4つも消費する平日の大陸視察になど一度たりとも行ったことがない。そんな余分なハートがあるならラブラブフラッシュしてから聖殿にお話に行くからだ。
これではブライアンと出会えないのも当たり前である。
だが、それに気づいてからは森の湖に人がいなかったら祈り、人がいたら大陸に行く日々が続いた。育成は全くしないが、頻繁に大陸に行くと神官との親密度があがり、プレゼント育成で建物はバンバン建つ。
ブライアンは、そんな金ピカな建物だらけ(ジュリアス様ありがとうございます!)の我がエリューシオンにいた。ブライアンは育成地であるエリューシオンに飛ばされて、そのまま気絶していたのだ。
倒れていた彼を見つけたアンジェリークは、現在女王試験中であることや自分が女王候補であることを話す。
エリューシオンに落ちたブライアンは、大陸の森の奥にログハウスを建てて暮らしているのだが、大陸視察にやってきたアンジェリークはそこで再び彼に会う。
感動の再会とはならない。
何しろアンジェリークときたら自分の作った大陸で迷い腹をすかした結果、ようやく見つけた民家(ブライアンの住居)の敷地に無断で入った挙げ句そこにあった彼のコーヒーを頂くという、泥棒キャットみたいな真似をするからだ。
ブライアンに怒られるのもやむを得ない。
しかし、そこで怒られてすごすご引き下がるようでは乙女ゲームのヒロインとは言えない。
アンジェリークを見ろ。コーヒーを勝手に飲んで怒られたにも関わらず「食べ物も欲しい」と、実に堂々とした態度だ。
これにはブライアンも度肝と毒気を抜かれた様子(そりゃそうだ)。
たが、口は悪いが何だかんだで面倒見のいいブライアンは食べ物をくれて、しかも神殿まで送ってくれる。
その後も不具合を起こした転移装置を直してくれたり、かと思えば編み物を披露したりとブライアンはとにかく機械に強くて器用。
そう、彼はすでにこのあたりでいかにも鋼の守護聖らしいスキルを披露しているのだ。
またブライアンが年月の経過に驚く様子、聖地や女王について知りたがる様子、守護聖が9人揃っている事に驚く様子、目の前にいる女王候補(女神の卵みたいな存在なのに)を有り難がらず「お前みたいなのが女王候補か」と人となりに文句を垂れる様子、王立研究院よりも飛空都市のシステムに詳しい様子から、彼の素性が少しずつ匂わされている。

ブライアンと仲良くなって、頻繁に大陸に行っていると、神官の男の子が成長する時期が来る。大陸の民と、それを育てる側のアンジェリークとでは流れる時間が違う事がはっきりわかるシーンだが、ブライアンもまた年を取っていないことがここで判明する。
またここでブライアンが初めて守護聖っぽい力を使い、その波動をジュリアスが探知するというイベントが起きる。
そこからは展開が早い。
色々あってブライアンはアンジェリークに「僕は罪人で、これからまた罪を犯す」と懺悔する。
どんな過去が!?と、こちらは気になって仕方ないのだが、当のアンジェリークはそれほどそこには拘らず華麗にスルー。
また、その前にアンジェリークはブライアンに襲われかけて貞操の危機らしきことになったはずなのだが、そこも「発熱のせい」で済ます。
おおらか過ぎる。
これが女王のサクリアか。
ブライアンがアンジェリークの事を「バカはバカでも突き抜けたバカ」と評するのだが、全く言い返せない。
とにかくブライアンは年を取らないこと、不思議な力があること、過去に何か罪を犯しこれからまた罪を重ねる予定であること、それらは女王や守護聖には秘密にしていることが明らかになるが、具体的には何もわからない状態である(深くは突っ込まないアンジェリーク)。

その後ブライアンの留守中、家に勝手に入り込んだアンジェリーク(またかよ)は、木造家屋に似合わぬモニターやPCなどの最新機器が設置された地下室を見つける。
このコテージの外観でいったいどこにこんな地下空間が?という疑問は今はいい。王立研究院によく似た機器を見られてしまったブライアンは、アンジェリークにこれまでの事情を聞かせる。というか、「これを見られたからにはもう会えない」と鶴女房みたいなことを言い出したブライアンにアンジェリークが食い下がって真相を吐かせたというのが正しい。
基本的に大雑把なくせに、本当にアンジェリークはこうと決めたら一歩も引かない。
ブライアンの方でも誰かに話してしまいたい気持ちがあったのだろう。いつのまにか、ブライアンにはアンジェリークの来訪を待ち望む気持ちが生まれているからだ。出会いから交流までとても丁寧に描かれているので、ブライアンがアンジェリークに惹かれたことにすんなり納得できる。

ブライアンが話した内容はこうだ。
機械システムや宇宙科学や、とにかく天才であった鋼の守護聖ブライアンは、いち早く宇宙の異変に気づく。
神鳥の宇宙がすでに限界を迎えていて遠からず崩壊することを知ったブライアンは、それをすぐさま女王に進言。混乱させないよう他の守護聖には詳しいことを内緒にして、宇宙の星々を丸ごと新しい宇宙空間に移動させる理論を構築する。
旧作をプレイ済の私には、星々の移動も新宇宙もすでに知った話だが、まさかそれを提唱したのがブライアンだったとは。
ブライアンの理論では、星を移動させる機会はたった一度、新宇宙に新女王が誕生して旧宇宙にもまだ女王が残っている状況でのみ可能となる。星を送る女王と受け止める女王、二人が揃ったときでないと星の移動は不可能なのだ。
しかし、その理論にはたった一つ欠点があった。
それは、星を移動させたあとに旧宇宙空間を閉じる必要があり、それは必然的に最後まで旧宇宙に残る旧女王ということになる、という事だ。
ブライアンは守護聖、それも特に忠誠心の強いタイプなので、女王の犠牲を前提にした自分の理論が許せなかった。宇宙を救うためとはいえ、女王の死を前提にした手段を考えてしまった。これが、ブライアンの言う「僕の罪」である。
女王の犠牲なく宇宙を救う他の手段を探しているうちに、ブライアンは星の小径から次元のはざまに落ちてしまう。内緒で行動していたことが仇となり、ブライアンは仕事中の事故ではなく勝手に失踪したものとして聖地側に認識されてしまったのだ。それをアンジェリークが偶然救い出し、事態が動いたのである。

大陸にいる間も研究を続けていたブライアンは、自分の考えた理論の中で女王を取り残さずに済む手段が一つだけあることに気づく。
アンジェリークは彼を信頼して全面的に協力することにする。ここの選択肢でブライアンを選ぶと守護聖全員と「恋愛失敗」の表示が出て、地味にダメージを食らうのだが、心を強く持ち、もう俺にはこいつしかいねえという気持ちでブライアンに向き合おう。

他の守護聖との恋は女王になることで失うが、ブライアンとの恋は女王にならなくては始まらない。アンジェリークが女王になり、新旧女王が揃って初めてブライアンの考えたシステムが成功するし、それが彼の望みだからだ。
アンジェリークが新女王に決まり、星を移動させたあとブライアンは旧女王の代わりに旧宇宙に残りそこを閉じようとする。そうしたら、女王を犠牲にしなくても済むというのがブライアンの結論だったのだ。
しかし現役の守護聖たちが道をこじ開け、アンジェリークがブライアンを救出。
みんなで協力するこのシーンがすごく良かった。

不可抗力とはいえ聖地での職務を放棄した形になっていたブライアンは、「聖地を逃亡した」という罪で聖地から「追放」されることになるのだが、それはまあ形だけで、要は無罪放免ということだ。
アンジェリークも女王の座を辞退し、ブライアンと共に聖地から旅立つことになる。
ラストは旅先での二人のスチルで締め。

ブライアンの中の鋼のサクリアは消失していないので、それがゆっくり消えていくまで年は取らないらしい。宇宙を救ったアンジェリークはご褒美に(?)補佐官の身分を与えられ、ブライアンと同じく年を取らない体にしてもらう。
この時、ロザリアとアンジェリーク(私)との親密度は0。
女王をいきなり辞退した同期(全然仲良くない)の尻拭いをしてくれ、補佐官にまでしてくれたロザリア陛下の優しさに申し訳ない気持ちでいっぱいである。

面白い話だった。恋愛を抜きにしても、守護聖たちとブライアンの関係がわかったのが良かったし、ブライアンが介入したシステムに気づくのが後任のゼフェルだというのも良かった。この二人が同時に聖地にいたら、交代まで案外仲良くやったのではないかと思う。
ルトゥールの新キャラと聞いて「この上どんなキャラを持ってくるつもりだろう」と思っていたのだが、旧守護聖とは驚いた。また、このルートは私が昔からちょっと不思議に思っていた「女王陛下が一人で新宇宙への星々の移動を考えついたのだろうか」という疑問の解決編になっている。
ブライアンのキャラもこれまでの守護聖にはいないタイプで魅力的だ。そしてブライアンルートの良さはなんといっても、アンジェリークとのタメ語での会話である。
「アンジェリーク」の世界で、ヒロインは聖地のメンバーに対してひたすら敬語で接する。彼らは神様みたいなものなのでそれも当たり前だし、それがあることで自身が女王になった時に敬語が逆転するカタルシスを味わえるといえる。
だが常に敬語で過ごしているだけに、ブライアンとの敬語なしのやり取り、気の置けない言い争いみたいな会話がすごく新鮮に感じる。
これは「天空の鎮魂歌」でのアリオスとコレットにすごく似ている。コレットはこの時すでに女王ではあるが、先輩宇宙のメンバーに対しては敬語だったから、アリオスとのやり取りが「対等」な感じがして新鮮だったのだ。 
予想以上にしっかりしたストーリーで、アンジェリークとのやり取りやブライアンの過去が丁寧に魅力的に描かれている。

ただ、ここまで褒めておいてなんだが、ブライアンとアンジェリークとの恋愛は私のような旧作からのプレイヤー、というか「旧作からのプレイヤーかつ、由羅カイリ版のコミカライズを好む人」には複雑かもしれない。
なぜか。
前鋼の守護聖ライは、ルトゥールより先に漫画版に登場しているからだ。漫画版では「ライは急速に鋼のサクリアを失い、その焦りや苛立ちを後任のゼフェルにぶつけた」という設定になっている。
つまり、漫画版のライとルトゥールのライとは設定が全然違うのだ。
それにブライアンがライだと知った時、私は真っ先に「ディア様は?」と思った。そう思った人は私の他にもいるのではないだろうか。
なぜなら、漫画版でのライには女王候補ディアに恋して夢中になっているという設定があるからだ。二人がくっつく事はなかったのだが、優しくておっとりしたディアとちょっと我侭だが一途なライの組み合わせは、かなり良かった。
しかし当然、ルトゥールではそれが無いことになっている。
だからディアとライの組み合わせを知っていた人間、しかもそれをカップリングとして気に入っていた人間にとって、アンジェリークとライの恋愛はちょっと複雑な気持ちになるのだ。
二人のライは別物と捉えて楽しめばいい。
もちろんそうだ。
ただ、キャラデザがいくら変わろうとも、私は旧作とコミカライズ、そしてルトゥールの世界は同じものだと考えていた。しかしこうして違う設定の「ライ」が出てきたことで、少なくともルトゥールと漫画版は違うものだということになってしまった。
ライルートは面白かったが、ストーリーとは関係なしにそこが少し残念ではある。

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