金色のコルダAS横浜天音 七海宗介攻略感想

※個人の感想ですよ
横浜天音転入の下りから書いたので長めです。

ASもついに三校目。天音に着手だ。
ASシリーズは、ヒロイン小日向が対象校に転入を決める所からストーリーが始まる。
AS神南では恩師の薦めによって、AS至誠館では祖父の薦め(と新との出会い)によって、小日向は自分の進む先を決める。ところがAS天音では、初めて学校側から勧誘が来る。
このままじゃ自分はダメだとなんとなく気づきながらも何ら行動せずに地元で燻っていた小日向は、新たな可能性にかけて天音に転入を決める。 そして、どちらかといえば「現状のままでもまあいいや」みたいな響也も引きずられるようにして天音に。
このオープニングだけで、小日向と響也があまりよくないタイプの共依存に陥っていた事が判るし、後の展開の伏線になっているのだが、その辺は響也ルートをやってからまた感想を書こうと思う。

天音学園は近未来とバロックを混ぜたような豪華な校舎で、設備や練習環境も申し分ない。生徒たちは各地からスカウトされてきた選りすぐりの音楽エリートばかり。AS至誠館で感動の優勝を果たしたばかりの身で言うのも何だが、よくこんな学校に勝てたなと思う。
しかし転入早々(初日)、小日向たちは学園に君臨する冥加に「とうてい天音のレベルに達してないから帰れ」と言われてしまう。
ア、アホかーーー!!
こちとら制服(高そう)も教科書も揃えて、住む場所も決めて長野から出てきたんだっつーの!来いって言われたから来たんだっつーの!はいそうですかって帰れるかーーー!!
という気持ちは響也が代弁してくれるし御影さんが取りなしてくれるので、プレイヤーは冥加の前髪を強めに引っ張りたくなる気持ちをぐっと抑えよう。
話を聞くにどうやら2人を天音に呼んだのは理事長のアレクセイで、冥加はその件を知らなかったらしい。
くあ~~~~!!
報(ホウ)!連(レン)!相(ソウ)!
と真っ当な社会人なら叫びたくなるが、とにかく、来て早々ノコノコ退散するわけにはいかない。小日向たちは、天音にふさわしいレベルにあることを証明するため、アンサンブルを組んで演奏会に出ることに。
そのメンバーに今回攻略した七海がいる。

さて、ここでいつもの注意喚起だ。
これから先、私はコルダ3の七海ルートを当社比でボロクソに言う。新ルートの時にも同じようなことを書いたが、私はキャラについて悪く思っているわけではない。だが、シナリオについてはいくらコルダが箱推し作品とはいえ、どんなシナリオでも全部許せる!好き!とはならない。
だから、コルダ3七海ルートこそ自分の好きなシナリオだという方、七海に関して一言でも悪く言われたくない方は、退避するか自己責任で閲覧して欲しい。

七海は小柄で女の子顔。いかにも「年下の可愛い少年」という感じだが、七海の真の良さは可愛い顔ではなく、やたらと素直で表情豊かなところだ。落ち込んでいたらしょんぼり、嬉しかったらビッグスマイル、怒っていたら握り拳と、とにかく感情が分かりやすい。皆に隠している深刻なコンプレックスだとか、ましてや裏の顔など何も持っていないが、七海の場合はそこがいいのだ。
七海は自己肯定感が低く自信がないタイプなのだが、それすらも他人に全然隠す気配がない。プレイヤーは彼と出会って数分で「オレなんて…!」と落ち込む彼の涙を(2回も)見ることになるからだ。
そして七海は、ヒロイン小日向に惹かれるのがとにかく早い。まあ、あんなスクールカーストを煮詰めたような学校でそれに染まった生徒たちと過ごしてたら、優しく可愛く気さくな小日向と話すのは楽しいに決まっている。七海はかなり早い時期から小日向相手にドキドキし、色々妄想してキャー!となっている。
小日向がヴァイオリンで冥加に認められているらしいと知った七海は、一層小日向に憧れるようになる。「惚れられた」というより「懐かれた」という表現がぴったりだ。こちらとしても、転入当初は氷渡をはじめとした天音のスクールカーストにかなり辟易しているので、子犬のような七海の素直さが沁みる。
小日向に懐いた七海は、一緒に料理をしては新婚妄想、ドレスを見たら結婚式、睫毛を取るために近づかれたら「キキキキス?!」と赤面、小日向との関係を両親に冷やかされて大慌て、など、私たちオタクが自担自カプでやりがちな脳内妄想と萌えシチュを全部さらけ出してくる。
それを小日向に知られまいとあたふたして、結果、全然隠せていないのが七海の可愛いところである。

このように、恋愛イベントでの七海は全て「よーし、よしよし」と頭をなで回したくなるのだが、シナリオの肝はそこではない。彼のルートはコルダ3の時代からヒロインとの恋愛より七海自身の成長に重きがおかれている気がする。
つまり彼のルートは完全に七海が主人公で、そこに小日向が入り込む余地が元々あんまり無いのだ。
コルダ3でも彼のルートは、技量の無さに悩む七海が自分の演奏に向き合って前に進むまでが描かれる。小日向はAS以上に、七海を励ましたりなだめたり同情したり慰めたりしているのだが、3の小日向は七海にとってはライバル校の生徒である。そのせいで、せっかく誠心誠意七海に向き合ったのに「オレとあなたはライバルだし戦わなくてはならないから…」と、距離を取られて突き放される。今まで散々懐いてたくせに今さら何事?と、小日向にしてみたら訳がわからんだろうなと思う。もしや作り手はロミオとジュリエット的なものを描きたかったのかもしれないが、私としては「七海に突然手の平を返された!」とマイナスイメージにしかならなかった。
このシナリオの小日向は彼に恋するヒロインというより、彼を叱咤激励し時には諭すコーチ役に近い。「諦めるな!大丈夫!」と言い続ける松岡修造みたいな役どころであるし、そのわりには七海が冷たい。
だから正直に言って私には未だにこのルートの良さがわからない。

一方、ASはどうか。
自信の無さに惑わされがちだが、実は七海は天音の特待生である。だが入学後、冥加たちを間近にして完全に自信を喪失。元々は強気で、明るい演奏をしていたのに、現在はその伸びやかさが失われてしまった。
その事は七海にもよくわかっていて、殻を破ろうと必死なのだ。しかし、いくら努力しても苦しんでもなかなか技術が上がらず自信が持てないままだ。
そんな時に七海は理事長アレクセイから誉められ認められる。しかもアレクセイは不思議な力で一気に七海の才能を開花させる。その結果、自信に満ちて堂々とした理想の演奏ができるようになる七海。
最初は素直に喜んでいたのだが、その演奏技術は真っ当な手段で手に入れたものでない。次第に七海はそれが後ろめたくなる。それは元々持っていた才能なのだからズルではないと言い聞かせてはみたものの、努力して技術を獲得しようとしているハルや氷渡、小日向の姿を見て益々自己嫌悪に陥る七海。
前述のように七海は隠し事が下手なタイプだから、彼の唐突な変化に小日向が気づき、七海らしくないと指摘する。
自分でもそう感じていた七海なので、小日向に背を押された形でその力をアレクセイに返すことになる。一度は手にした高い技術を返却するのはさぞ勇気が要っただろう。しかし七海は、未熟ではあるが自分らしい演奏をする方がいいと気づき、自分自身の才能を信じようと決めるのだった。

このように、ASの七海ルートは彼の成長に焦点が当たるという意味でコルダ3とよく似ている。だが、個人的には3より圧倒的にいいと思った。
それは多分小日向が七海と同じ学校にいるからだ。ASの七海は、3のように「ライバル校の生徒だから」と小日向を遠ざけたりはしない。小日向は同じアンサンブルのメンバーとして七海に色々指摘し助言をする。だから七海がアレクセイに対峙できたのは小日向のおかげだと思えるし、切っ掛けをくれた小日向を七海が本気で好きになったんだなと納得できた。
ASの七海ルートは全体としてコルダ3によく似た流れなのだが、それが悪いわけではない。むしろ、3でストレスを感じた部分が完全に改善されているので、七海の猪突猛進ぶりや意外と怖いもの知らずな言動を安心して楽しめる。
それによく考えたら今までクリアしたルートの中で、こんなに「自分の音楽」「自分の演奏」について真剣に悩んでいた攻略対象がいただろうか。
どちらかといえば、家族問題や健康問題や友人関係や将来についてなどを悩み、それを小日向が支える中で恋が生まれていた気がする。
それを考えたら、七海ルートは音楽をテーマにしたコルダらしいシナリオといえる。
王道少年漫画(バトルもの)みたいな七海ルートではあるが、随所に散りばめられた恋愛イベントは文句なく可愛いのでそれを噛み締めたい。素直な少年キャラが好きなプレイヤーなら尚更だ。
ただ、欲を言えば私は七海の可愛さ素直さ、そこから来る空回りぶりだけでなく、特待生として天音に来た彼の才能の凄さだとか頑固な所だとかをもっと取り込んだイベントが欲しかったと思う。
氷渡ルート(当然のように恋愛不可になっちゃった)あたりで、七海のバケモノぶりが見られることを期待して待つ。

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