アンジェリークルミナライズ ロレンツォ攻略感想

※個人の感想ですよ

アンミナ攻略5人目は地の守護聖ロレンツォ。
深緑の髪と紫の髪。かなり珍しい配色だが、まっ先に目が行くのはカラーリングではなく胸筋である。
ノアの衣装が守備力10だとしたらロレンツォは3くらいだろう。
ロレンツォは地の守護聖らしく賢い。それは知恵を司っているのだから当たり前なのだが、「頭の良い人」には色々な種類がある。
何らかの学問の研究や教授をする人、あらゆる書物を読み込む博覧強記の人、難解な試験を突破しないと得られない資格を持つ人、自ら事業を立ち上げてそれを成功させる人、人が思いつかないアイデアを思いつく人、またはそれらの複合タイプなどなど。
そのどれもが「頭のいい人たち」なのは間違いないのだが、それぞれ「ジャンルが違う」のだ。ルヴァとロレンツォが同じ地の守護聖であり、どちらも知識欲が強いタイプであるにもかかわらずまるで違う印象なのは、この「ジャンル違い」のせいだろう。
ロレンツォは知識を蓄えるだけでなく、それを元にして何かを作り出す。作り出すだけではなく、それを流通させ販売し、利益を上げるところまでいく。
守護聖になる前、その故郷でロレンツォの名を知らない人はいなかったというから相当な実業家である。また彼は自分で開発を手掛ける発明家でもある。だからロレンツォは、友作というよりどちらかといえばビルでありスティーブではないかと思う。
ただ、なんとなくロレンツォは趣味が多そうだし、絵画やワインを嗜みそうだし女優と付き合いそうだし好奇心が高じて月にも行きそうなイメージがあるので、プレイヤーの頭にはスティーブではなく友作がちらつくのではないだろうか。

恋愛イベントが進行していっても、ロレンツォはほとんど本心を覗かせない。もしアンジュの夢に出てくる守護聖同士の会話イベントが無かったらもっと謎に満ちていたと思う。
ロレンツォとの恋愛は、モブに「女王候補らしくない」と言われたことを気にしたアンジュが、セルフプロデュースの方法をロレンツォに教えてもらうところから始まる。
恋愛イベントというか、もしかしてこれはセミナーなのかな?と思ったし、ロレンツォ本人もどうやらそのつもりでアンジュに接している。ロレンツォは自分が知識を得ることも好きだが、知識を得て変わっていく人を見るのも好きなのだろう。
ただ、もしこれでロレンツォが「立ち居振る舞いを教えているうちに次第にアンジュに惹かれ、告白に至る」という流れだったら、あまりにもベタで興醒めだったと思う。
ただでさえロレンツォは乙女ゲーでよく見かける「ヒロインに出会うまで人生に退屈していた男(やたら賢かったり何不自由ない身分だったりする)」や「本心を見せない女慣れしている大人の男」のテンプレに近い。そこに、いつの間にかヒロインに惹かれていくイベントを被せたら、間違いなく「悪くはないけどいつかどこかで見たような気がするストーリー」になってしまったと思う。
だから、ここでアンジュの方がロレンツォの事をもっと知りたい、本心を見たいと追いかけていくのが面白かった。攻略対象の男が先にヒロインに惚れるのが当たり前の乙女ゲー界において、ヒロインが先に対象に執着するというのがすごく新鮮だったのだ。
それに、ロレンツォの恋愛イベントで出てくる選択肢は他のキャラよりも断然難しかった。なにしろ、彼の発明品に対して「すごいですね」と言っただけで恋愛失敗である。
一度も選択失敗せずにロードせずにロレンツォとの恋愛を成功させたお嬢さんがいたら、心からの賛辞をおくりたい。

追いかけられる形になったロレンツォは、アンジュをやんわり牽制する。「自分は恋愛不適格者」「こんな男はやめておいたほうがいい」と、その理由を詳らかにして自ら忠告してくるのだ。
だが、アンジュはそれでもロレンツォに踏み込もうとする。まあ、ロレンツォみたいに本音を見せない男の本音が知りたいというアンジュの気持ちはわからんでもない。
だが、自己プロデュースに長けたロレンツォにとって「本音を見せる」というのは自分の精神を屈服させられるという意味に近いようで、簡単にさらけ出せることではないのだ。
アンジュとロレンツォとのやり取りからは、従来の無垢タイプヒロインとでは生まれないような駆け引きが感じられて、プレイヤーとしてとても楽しい。
ただし、ロレンツォはやすやすと落ちるような甘い男ではない。個別、恋愛、守護聖同士の会話、様々なイベントが起きるたびに「こいつは一筋縄でいかない」と思う。
何しろ彼はこの女王試験に、宇宙を救うためなどではなく完全に個人の興味から参加しているし、もし力及ばず令梟宇宙が崩壊しても「それはそれで見てみたい」と思っていることがありありとわかる。シュリが「お前はいつか自分の好奇心によって死ぬ」みたいなことを言っていたが、全くその通りだと思う。
おそらく彼は、もし守護聖としての仕事に飽きたら「聖地を滅ぼしてみたくなる」と十二国記の延王みたいなことを言い出すだろう。令梟の宇宙が波乱に富んでいて助かった。
その厄介な性分を一番良く理解しているはロレンツォ本人なのだが、それでも彼は退屈に生きるより好奇心によって死にたいのだろう。何かを作り出すだけでも発展させるだけでも足りず、崩壊まで見届けたいと思うあたりが、ロレンツォの不穏な部分だし、よく見るタイプの「人生に退屈してる系」とは違うところだ。

こんな男なので、たとえ付き合うところまでいけたとしてもその後はどうなるのか、ロレンツォに飽きられずに恋人関係を維持できるのかとはっきり言って不安である。
ロレンツォはアンジュの振る舞いや気の強さ、可愛らしさ、自分に踏み込もうとする好奇心に少しずつ惹かれていくが、それでも「特別」とまではいかない。ロレンツォがアンジュに恋する決定打がなく、これだけでは今まで彼が付き合ってきた女たちと大差がない。
も、もうすぐエンディングのはずだけど大丈夫なんかな…と不安なままで次のイベントを迎えたのだが、なんとというか、やはりというかロレンツォはアンジュからの告白を断る気満々だったらしい。
ロレンツォは、自分が飽きっぽい質であることもそれが女性にとっては不誠実だということもきっちり理解している。
親友を破滅させた自分の人でなしぶりを語り「もし付き合っても君に飽きるかもしれない。失望してしまったらどうしよう」とはっきり言う。こっちはロレンツォに飽きられる可能性を考えて不安になっていたので、そこを本人が自ら言及してくるのがすごく良かった。
ここでアンジュはロレンツォが一番言われたくない言葉をピンポイントで発する。それが「臆病ですね」である。
アンジュに声はついていないし、どんな表情で発したのかはわからないが、おそらく呆れた顔か小馬鹿にした顔、もしくはがっかりした顔で言ったのだと思う。
付き合う前から「飽きるかも」とかごちゃごちゃ抜かすな。私は凡百の女とは違うかもしれないだろ。
へ〜え?あなたって意外と未知のものに対して怖がりだったんですね。
という全てが「臆病ですね」という言葉に込めれていたのかもしれない。
ロレンツォはそこに思いっきり引っかかる。
新しいことに次々挑んできた自分がまさかそんな…とショックだったのだろう。ロレンツォ自身が気づかなかった停滞をズバリと指摘したその一言によって、彼はアンジュにようやく特別なものを感じ始める。そして、もう一回真剣にお互いの気持ちを考えてみよう、と返事を保留するのだ。
自分の恋愛感情に対してこんなに慎重な乙女ゲーキャラは初めて見た気がする。
告白の際も、ロレンツォは「君を愛し続けられるか自信がない」とはっきり言う。それでも「愛してみたい」と続ける。
マジの本音である。
ロレンツォくらい口が回るタイプなら、嘘でもなんでも「こんなに好きになったのは君が初めてだから一生愛す」とでも言えば良かったのだ。いくらでも適当な甘い言葉を吐けたはずだ。なのに彼は、要約するに「途中で飽きたらごめん。でも付き合いたい」と言っているのだ。
一切偽っていない本心をロレンツォは初めてアンジュに見せてくれたことになる。彼の本心を暴けるのは、彼が上位と認めた人間だけのはずだ。とすればこれはロレンツォが、停滞を指摘してくれたアンジュのことを自分よりも上の視点に立つ人間だと認めたということである。
告白成就後のロレンツォは、彼らしい色っぽいセリフや行動を見せて、期待通りの仕事をこなしてくれた。
また、恋人関係になってもすぐに飽きられて捨てられたらどうしよう、ロレンツォのためにかくし芸の一つも用意しておくべきだろうか…という不安はエンディング後には感じずに済んだ。
ロレンツォ本人があれだけ「君に飽きたらどうしよう、失望したらどうしよう」とこちらの不安を先取りしてくれたため、緩和されたのかもしれない。
しかしそれ以上に、女王システムのおかげでもある。
サクリアとは?守護聖とは?宇宙とは?女王とは?
博覧強記のルヴァ先輩にだってまだわからないこの謎がそんなに簡単に解けるとは思えない。
だから、この謎がある限り女王のサクリアを持つアンジュはロレンツォにとって神秘のままであり、彼が飽きることはないと納得できるのだ(だから私はロレンツォの最良エンディングが好きだ)。

ロレンツォの良いところは「退屈だな」と思ったらそのままにせず、自分で面白いことを探しに行くところ、探しても無ければ自分で作り出すところだ。
自分の興味から生みだしたものを製品化して販売して利益をあげて、世界に影響を与えるところまでいくというのはやろうと思ってもなかなかできることではない。
ただ、ロレンツォが興味を持った分野がたまたまIT系だったから良かったものの、もし「兵器」だったらきっと彼は核を超える破壊兵器を生み出していたような気がする。ロレンツォは倫理観より興味を優先させそうだし、故郷では会社経営にもそろそろ飽きが来ていたところらしいので、そのまま放っておいたら危なかった。彼が兵器ビジネスに手を出す前に守護聖になってくれて良かったと思う。
あと、ロレンツォの服装は執務服もバース帰省衣装も首元胸元がガバーッである。
だからこそ私が今後望むのは、「首元まできっちり覆った極力露出のない衣装を着たロレンツォ」である。
ロレンツォは窮屈だと言って嫌がりそうだが、露出が多いキャラが肌をきっちり隠すとそれだけで「いとをかし」なのだ。
できればイタリアの国家憲兵の制服でお願いしたい。もちろんマントと手袋と帽子も必須だ。
マニアックですまない。私は軍服とか制服が好きだ。
「カラビニエリ」で検索してもらったら多分その衣装の概要はすぐに出てくるが、「これをぜひロレンツォに着てほしい」という、単なる私の趣味なのでもちろんわざわざ調べる必要はない。

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