金色のコルダAS横浜天音 氷渡貴史攻略感想

※個人の感想ですよ

AS横浜天音3人目は氷渡。
ラブレットにビジュアル系メイク、小物やアクセサリーはスカルモチーフと、ネオロマンスとしてはかなり攻めたファッションの男だ。
実は最初に攻略したかったのだが、まんまと失敗した。氷渡は2人きりで練習が出来るようになるまでにやたら時間がかかるくせに、2人練習が出来るようになってから新密度を上げ始めたのでは攻略が間に合わなくて時間切れになる。
とにかく追いかけまくって一人練習を聴かせ、カルボナーラを食わせ、スタートダッシュをキメなくてはならないのだ。
氷渡は転入生の小日向の事をはなから見下している。というか小日向に小日向に限らず「天音の室内楽部アンサンブル正規メンバー」以外は認めていない。音楽エリート揃いの生徒たちの中でも正規メンバーは特別、そしてそこに選ばれている自分もまた特別な存在なのです、とヴェルタースオリジナル理論を盾に出会い頭から「ムカつく」としか言いようがない態度をとってくる。
プレイヤーとしては「ヒロイン様にこんな態度をとっちゃって、この人これからどうなるんだろう」とかぶりつきで見守らざるをえない。

氷渡はコルダ3からすでに登場していて、冥加ルートで爪痕を残したのだが、コルダ3(PS2版)発売当時は、まさか彼が攻略キャラにランクアップを果たすとは考えてもいなかった。神南の芹沢が今後攻略対象になるだろうというのは薄々感じていたが、まさか氷渡が抜擢されるとは。
だが「もしかしたらあり得たかもしれないif」を体験出来るのがASの醍醐味である。ASは「冥加を逆恨みしていない氷渡、犯罪行為に走らなかった氷渡」がいるif世界であり、氷渡ルートはそんな彼と恋愛が出来るルートである。小日向が天音に転入したことで氷渡の運命は変わったのだ。
氷渡は冥加に憧れて天音に入学し、天音トップの証であるアンサンブル正規メンバーに選ばれる。しかし、氷渡は冥加や天宮のような天才ではなく、まだ未熟だがこれからおそらく天与の才能を開花させる七海のようなポテンシャルを持っていない。それを自分でもよくわかっていて、努力に努力を重ねてメンバー入りした秀才型である。だから正規メンバーでいる事は、氷渡の努力の結果で自己の証明といえる。天音で特権を持てるとか尊敬されるというのはオプションに過ぎない。アンサンブル正規メンバー入りというのは、氷渡にとってもっと自分の根幹に関わることだ。
親しくなるにつれて、こちらにもそういう氷渡の事情が見え始める。努力して正規メンバー入りを果たした氷渡は、とにかく努力を重んじるし、そこから結果を残す事にも拘る。小日向が心配だからというよりは、大事なアンサンブルが小日向のせいで失敗する事を恐れて練習を手伝ってくれるようになる。
この時点になってさえ、びっくりするほど心を許されないまま氷渡に付きまとっている小日向(私)だが、同級生キャラというのは基本的にお互いタメ口なのがいい。小日向がアンサンブルに残って大会を勝ち進んだ事で、初期よりはだいぶ氷渡の対応がまろやかになり「普通の同級生」くらいには会話を交わせるようになる。
そんな中ででかいイベントが起きるのだ。
大会で氷渡は上手く演奏できず、冥加から「うちのアンサンブルに必要無い」と言われてしまう。氷渡の場合、同じポジションには七海がいる。七海は自覚はないにせよ、特待生待遇の才能を持っているし成長も著しい。「氷渡より七海」と冥加は判断したのだ。
しかし上記のように氷渡にとっては、正規メンバーでいること自体が自己証明である。
氷渡はアンサンブルに残してほしいと冥加に食い下がるが一顧だにされない。あんなに尽くしてきたのに……!と闇堕ちしかけたとき、居合わせた小日向のアドバイスによって、氷渡は冥加にラストチャンスを貰うことに成功するのだ。
このシーンこそ、氷渡の運命の分岐である。冥加を逆恨みして犯罪行為に走るか、逆恨みせずに努力を重ねるかの瀬戸際で、小日向が氷渡の運命を変えた瞬間だったと思う。ASシリーズならではの、つまり正史では存在しないイベントだ。
氷渡とて自分だけでは冥加の気持ちを動かせなかった事、小日向がいたからこそアンサンブルに残るチャンスを得た事はわかっている。冥加に対して一歩も引かず、自分に力を貸してくれた小日向に氷渡は感謝し次第に惹かれていく。
これがすごくいい。
再三書いているが、私は攻略対象がどうしてヒロインに惹かれたのかがよくわからないシナリオが好きではない。また、ヒロインがただヒロインであるだけで、つまり特に何もしていないのに「君が見守っていてくれたから僕は頑張れました」などと言われて惚れられる展開が嫌いだ。
氷渡ルートの場合、それらのストレスが一切無い。小日向の助力があって氷渡は救われ、それがきっかけになって彼女が気になりだす。実にわかりやすいし、「そりゃ好きにもなるだろうな」と納得しかできない。
このシーンだけでも氷渡ルートは充分良いのだが、ここからが彼の真骨頂である。
薄々わかってはいたが、氷渡は凄腕のツンデレである。明らかに小日向に惹かれながらも「お、お前の事が気になってるわけじゃないんだから!自惚れないでよね!」と真っ赤な顔で走り去ったりするのだ。かと思えば小日向の笑顔が眩しすぎて「女神…」とうっとり呟いたりする。
とにかく、プレイヤーにしたら最初の助走(小日向への暴言、偉そうな態度など)があっただけに、「こいつはどこまで高く飛ぶつもりだ」とニヤニヤしてしまうのだ。
しかも氷渡はかなり終盤まで自分が恋している自覚がない。いや、自覚がないというか、何となく判ってはいるが「まさか自分が小日向なんかに恋!?」とそれを認められないのだ。
とにかく氷渡は土俵際の粘りをみせ、これは恋じゃない!となかなか認知しない。それがまた「お、お前なんか(以下略)」というセリフに分かりやすく表れてしまうから、こちらは画面の前で超イイ顔だ。
小日向側から見ても、氷渡の努力家ぶり、意外な面倒見の良さと子どもの気持ちをつかむ話術など、この人いいなーと思える部分を見つけられるようなイベントがたくさんある。
物語の終盤になってようやく氷渡は、つり橋効果で小日向にときめいていたわけではなくマジ恋だと気づく。
明らかに好きなのにそれに気づかない、薄々気づいているのに認めないスタイルは、彼が尊敬してやまない冥加とよく似ている。
氷渡は何度か小日向に告白しようとするが邪魔が入って、彼の思うようなかっこいい告白にはならない。それがまた可愛くてとてもよかった。氷渡のようなビジュアルと態度のキャラをプレイヤーに「可愛い」と思わせる、これはシナリオの大勝利であろう。
氷渡ルートは才能の有無というシビアな部分と、恋に落ちてからのコメディ部分とのバランスが丁度良かった。

そういえば私は氷渡を「凄腕のツンデレ」と評したのだが、よく考えたらツンデレの定義をよく知らない。何となく「好意を抱いている相手に対して素直な態度を取れずツンツンしてしまう人」みたいなイメージで話していた。
イメージのみで語るのは良くない。
そう思って「ツンデレ」をググってみた(他にやるべき事が100個くらいあるにも関わらず)。
調べたところによるとツンデレとは「他人への接し方にトゲがあるツンツンした部分と、恋人などにデレデレ甘えるような部分の二つを併せ持つ性格。またはそういう性格の人物そのものを指す」らしい。
しかしそこからさらに細分化していて、私は途中で考えるのをやめた。有識者に叱られそうだからだ。だが、私が先に述べた「ツンデレ」のイメージもあながち間違いではないらしい。
良かった。
ただ「ツンデレ」を調べてわかったのだが、この単語は元々女の子キャラのみを指す言葉であったらしいが、次第に男でも人外でも「ツンデレ枠」として語られるようになったのだという。男のツンデレキャラの例として出されていたのが海原雄山だったことは今はいい。
だが「ツンデレ」が女の子キャラのみを指す時代があったのなら、男キャラのみに対応する類語があるはず、そう思った私は調べた(何故そこまで)。
そして見つけた。
「オラニャン」。
オラつく事とニャンニャン甘えるデレを併せ持つ男子キャラを指すらしい。
初耳だ。
ツンデレの同義語とのことなので、もしかしたら氷渡はオラニャンなのかもしれない。
まさか氷渡ルートをやってオラニャンとやらにたどり着くとは思わなかったが、とにかく面白く、やって損なしのルートだった。

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