金色のコルダAS 函館天音についてのちょっとした考察、あるいは妄想

※個人の意見ですよ

ASを始める前から「函館天音だけは特殊」「ifともifでないとも言い切れない」「パラレルワールド」とは聞いていた。
現在私は他の学校に戻るルート、ソラルート、トーノルートの3つをクリアし、ニアルートの話を聞いたところだ。
函館天音編をクリアした後、私の中には大きな疑問(小さいのは山ほどあるがとりあえず脇に置く)が4つ残った。それは、1.なぜ小日向は記憶を失って函館天音に向かっていたのか、2.ソラは一体何者なのか、3.どうして冥加や天宮はあれほど函館天音に対して忌避感情が強いのか、4.どうして最後にわざわざ他の学校に戻る選択肢が出るのか、ということだ。
これらの答えはゲーム内で明確には語られていない。だから、なんとなくすっきりしない。
ゲームはクリアしているのに、函館天音については依然としてあやふやなままであり、だがそれこそが、現実と非現実の狭間にあるような函館天音の魅力になっている。
野暮な話ではあるが、せっかくだからちょっと疑問点を整理して考えてみようかなと思った次第である。
どうせ明確な答えは無いんだから、妄想を楽しみたい。

さて、一つ目の「どうして小日向は記憶を失って函館天音に向かっていたのか」という点はトーノが自分のルートで話している。「(俺が)君の運命を捻じ曲げたのは許されることではなかった」という彼のセリフから、トーノが例の天球儀に「あのヴァイオリンの主に会いたい、触れたい、音楽を聞きたい」と願った結果、小日向はここに呼び寄せられたのではないかと推測できる。
本当にそうなのかは判らないが、少なくともトーノ自身はそう思ったから小日向に謝っているんだろうと思う。自分が願ったせいで、小日向が記憶を失ってしまったこと、函館にまで来させてしまったことを「許されることではなかった」と話していると私は解釈した。

そして2つめ「ソラは一体何者なのか」だが、彼はルートをクリアしてなお謎が多い。ニアの兄で、幼い頃に父方の伯父に預けられたというのはわかった。
だが、正史のコルダ3、4とオクターヴに彼の姿はない。ニアの口からアレクセイについての話は出ているが、そこに兄ソラの話は出てこない。
ニアはミステリアスな女の子だし、自分について積極的に話すタイプでもない。だが、親友になった小日向に対して兄の存在を隠す理由はない。生き別れた存在がいたとしてもニアはそれを口に出せないほどセンチメンタルなタイプではない。それに彼女にとってソラの存在は、アレクセイと血縁関係にある事実以上に隠したいことだとは思えない。何より、ニアなら隠すより、むしろとびきりの秘密を打ち明ける顔で「実は私には兄がいてね」と話し、小日向が驚いたり「ニアに似てるの?」などと尋ねる様子を見て、「さてね、どうだと思う?」と反応を楽しみそうだ。
では、ニアが正史でどうしてソラについて話さないのか、トーノでさえ再登場した正史の世界になぜソラだけが影も形もないのか。
それを考えた時に「実は正史でのソラはすでにこの世にいないのではないか」と仮定するのが一番しっくりきた。
最初から産まれていないのではなく、正史でソラは両親と共に事故で亡くなっていてニアだけが残された、あるいはその事故でソラは眠ったような状態のまま今もベッドにいる。
そういう仮定、妄想を私はした。
AS函館天音はソラとニアの二人とも生きて成長した平行世界であり、正史はニアだけが生きている世界なのではないかと思った。
だからニアはソラの事を話さないのではないかと思ったのだ。
彼女には物心つくかどうかの歳に死別した兄がいた。だが、それを悲しみ、折に触れ思い出すような環境(位牌があったり墓参りに行ったりする)で育ってはいない。一般常識からかけ離れた伯父と暮らしていた女の子が、記憶に無いほど幼いときに死別した兄について懐かしがるとは思えない。だから、ニアはわざわざ自分からは周りの人間にソラの事を話さないのではないか。懐かしいとか、夭逝したのが気の毒だとか思うほどの思い入れを持たずに成長して、彼を覚えてもいないからだ。
妄想が極まってしまって申し訳ないが、ソラが実は亡くなっている、もしくは通常の生活が送れない状態にある、そう考えると彼が正史に全く出てこない理由、ニアが話題に出さない理由にはなる。

そして、疑問点の3つ目「どうして冥加や天宮があれほど函館天音に忌避感情を持っているのか」と4つ目「どうして最後にわざわざ他の学校に戻る選択肢が出るのか」。
よく考えたら、函館天音のアンサンブルメンバーは四人とも何かを欠いているのだ。それは記憶、または自分の居場所である。
記憶がなければ居場所、所属もあやふやになるからその2つは連動しているのだが、とにかくそのどちらか、あるいは2つとも欠けている。
もしかしたら、それが欠けていることが函館天音に入学するための条件の1つなのではないだろうか(あとはもちろん音楽的才能)。一度門をくぐったら何度でも函館天音に戻ってこられるし、出ても行ける。入るのは難しいが出るのは易しい。閉じ込められるという類の話では無いことが、函館天音編をホラーではなくファンタジーに留めているのだ。
記憶か居場所のどちらかが欠けた者しか入学できないとするなら、リラの家出身者にはもともと居場所がない。寄る辺のない者ばかりだから、その条件はすでにクリア済みだし、トーノは願いの代償として記憶を失ってから函館天音に入っている。小日向も同じく記憶がないし、ニアの記憶にも欠落がある。ソラには記憶はあるが、伯父がなくなった事で居場所、帰る場所がない。
あそこにいた函館天音のモブたちも、実は記憶や帰るべき場所を見つけられないでいるのかもしれない。函館天音に入学すると、記憶や帰る場所が見つからないうちは、戻りたくても戻れないのではないか。
ということは、逆に言うと、記憶や居場所を思い出したら戻る事ができるようになるのということだ。小日向が記憶を取り戻してコンクールに優勝したエンディング直前、わざわざ「他の学校に戻る選択肢が出る」のはそのためだと思う。
「函館天音から元の居場所に戻る条件が整った」から、他の学校(帰るべき場所)に戻る道が開いたのだと私は考える。

上記のように、記憶が戻って自分の居場所を思い出せば、元いた場所に帰ることが出来るようになる。
だが、そこで帰らずに函館天音に残ることを選択すると、函館天音がその人間の「居場所」になってしまうのではないだろうか。
深く関わりすぎると「帰ってこられない」「囚われる」と冥加や天宮が心配したり恐れたりするのはそのことを指すのではないかと思う。
コルダの世界、いや私達の世界には沢山の平行世界が存在していて、函館天音とはその分岐地、ゲートなのかもしれない。妖精の住むモンドに近い場所だと言われるのも頷ける。
ただ、モンドでも浄土でも天国でもヴァルハラでもハミスタガーンでも何でもいいのだが、それは言ってみれば彼岸ではないか。
函館天音には妖精も、条件さえ整えば死んだはずの人間すらいてもおかしくない。
どの平行世界にも行けるゲートのような場所が函館天音なのだとしたら、そこにずっと居ること、そのゲートを使って平行世界を行き来することは、確かに健康上良くない気がする。
肉体的にも死ぬほど疲れそうだし、精神的にも「自分の本当の居場所ってどこだったっけ?」と自分の存在があやふやになりそうだ。ただでさえ、あそこは彼岸に近い。
冥加や天宮が警戒しているのはそういう理由もあるのではないか。
以上が、4つの疑問に対する私の考え、妄想だ。

このように函館天音について色々考えてはみたが、結論は特にない。全部私の妄想に過ぎないし、そもそも判断材料も正解もないから、かっこよくQED(証明終了)とはいかない。
ただ私が、こういう事を考えるのがめちゃくちゃ好きなだけだ。
貴重な時間を使って読んでくださった方には感謝しかない。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?