アンジェリークルミナライズ ミラン攻略感想

※個人の感想ですよ

アンミナ攻略6人目は緑の守護聖ミラン。
オレンジの髪、緑と黄色が混じった複雑な色の瞳。外見からも言動からも明るさと天真爛漫な印象を受けるし、彼を見ていると「家族や周りに愛されて育った人間は自己肯定力が高い」という、子育て本のサブタイトルみたいな事を思う。
ミランは踊りや歌などの娯楽を楽しむ余裕がある土地で天与の踊才を持って生まれた。踊りに関しては妹に複雑な感情を抱かれているようだが、全体として家族仲は悪くなさそうだ。
こういう環境で育ったミランの明るい性格と言動から、私は彼を自分の欲求に忠実な人だと思っていた。しかし、イベントが進み会話が増えるにつれてむしろ彼には「欲」が極端に少ないことが分かってくる。
ミランに「欲望とは何か?」と尋ねられたアンジュは、人間の「欲」は生きていくために必要なものだと答える。ミランは重ねて「豊かに生きるために必要なものとは何か?」と尋ねるのだが、アンジュはそれに対して、相手を思う心であり広義の「愛」であると答える。ミランは同じ事をレイナにも尋ねているが、レイナは「目標」が大事だと答えた。ミランが興味を持ったのはアンジュが答えた「愛」の方である。
家族愛や隣人愛ならともかく、ミランは恋愛を知らないまま守護聖になったから純粋に興味があったのだろう。「豊かさとは愛」という答えを出したアンジュに、ミランはそれを自分にも教えてほしいと頼む。そうしたら、自分がまだ知らない「豊かさ」を知ることができるからだ。「君は女王候補なんだから僕がよりすごい守護聖になるのを助ける義務がある」と言うミランに、そうかも(そ、そうかも??)と引き受けることにしたアンジュ。
ミランはアンジュに恋人らしい振る舞いを要求するのだが、自分に恋愛感情を持っていない男に上目遣いだの壁ドンだのをしても全く効果がない。唯一ヒットしたのが、ミランの前で踊りを披露することだった。
そしてアンジュ渾身のロボットダンスはミランの心を捉える。ダンスの内容よりも、ミランのことを考えてミランのためだけに真剣に踊ったことが彼には嬉しかったようだ。
おそらくミランはここから、アンジュのことを「面白い」「気になる」「一緒にいると楽しい」と思い始めたんだと思う。
ロボットダンスを披露しておいて本当に良かった。

ミランは自分でも気づかないうちにアンジュに惹かれていく。祝福のキスを拒まれて動揺したり、なんでキスしたくなったのかを考えたり、少しずつ恋を自覚し始めるのだが、まだ確信には至らない。ただ、アンジュといるのが楽しいのは確実なので「もう少しこの恋の真似事を続けたい」と言い、人間の娘に恋して堕天した天使の話をしてくる。
「これは僕達の状況に似てる」と言いつつ、ミランには深刻さのかけらもないので、この時点で彼はまさか自分がその物語の天使と同じようになるとは思っていない。
ただ、ミランが自分を「天使」になぞらえたのはちゃんと理由がある。彼は傷がすぐに治る疲れにくい身体、そして類まれなる踊りの才能を持って生まれたからだ。
人が願いを持ってミランの踊りを見るとその願いが叶うご利益まであり、ミランは「神の踊り手」と呼ばれて育つ。
ミランの踊りによる大願成就システムについては、何度聞いても「なるほど、わからん」と思うのだが、悩みなり願望なりを抱えてミランの踊りを見ると、ゴチャついていた悩みが頭の中ですっきりして目標が明確になるという感じだろうか。目標がはっきりすればそこに向かって努力しやすくなるのは確かだ。
また物質的な願い(お金がほしいなどの)については、それを得るための手段を緑のサクリアが補強してくれたりするのだろうか。
なるほど。心は全然なるほどではないが、なるほど。
まあ、どうして願いが叶うのかは本人にもよくわかっていないし、そんな事を考えながら踊っていたわけではないだろう。
単に好きだから踊っていて、踊ったらみんなが笑顔になってくれてそれが嬉しかったのだと思う。そこに「願が叶う」という付加価値をつけたのはミラン本人ではないはずだ。
なぜなら前述したように、ミランには欲が極端に少ない。着るものも食べるものもなんだっていい。気遣いがないわけではないが、基本的に好きなことを好きなようにやる。当然大好きな踊りについても、それで有名になりたいとか稼ぎたいなどとは思ったことがないだろう。

そんなミランが、最近「欲」が止められないと告白してくる。アンジュともっと話したい、そばにいたい、もっと触れたい、とミランは具体的にアンジュへの「欲」を本人に向かって話す。
唇にキスしたい、などとストレートに言われてもイヤらしい感じがしないのは、自分の欲に対してミラン本人が一番戸惑っているとわかるからだろう。今まで感じたことのない感情をどうしたらいいのか、彼が本気で困っている事が伝わってくる。
もしかして、本当にアンジュに恋をしたのかもしれないと困惑した様子のミラン。
そこから、満を持して恋愛段階7を迎えるのだ。

アンジュに本気で恋をしたミランは、神話通り「神」の力を失う。身体の傷がすぐには治らなくなり、心は自分自身の感情によって容易く乱れる。
彼は、自分が物心ついた時から今まで普通に持っていたものを失ったのである。ミランは神じゃなくなるのが嫌なわけでも、特別な力を失った事を惜しく思ったわけでもない。ただ、これまで当たり前にあった物を突然失い、それに伴って身体や心までが変わってしまうことに恐怖している。
頑張って想像するに、交通事故でいきなり脚や腕を失ったアスリートの気持ちに近いのかもしれない。
そしてそうなったのは、アンジュに恋をしたせいである。アンジュに恋したことで、彼女に対する「欲」や、一般的にはマイナスといわれる感情をミランは知ってしまったのだと思う。その欲や感情を得たことで「神」たる力を失った。
サクリアそのものをなくしたわけではないのだが、ミランの動揺は凄まじい。普段はふわふわしてとらえどころの無い言動のミランだからこそ、ここで初めて見せる彼の強い言葉が胸を打つのだ。
これはなんとなく私が勝手に思ったことなのだが、緑の守護聖であるマルセルもセイランもカティスも自分の欲をそんなに持たないタイプっぽいので、緑のサクリアはもしかしたら世俗の欲があんまり無い人に宿るのかもしれない。司るものが豊かさだけに、緑のサクリアはそれを悪用しないような精神構造の人を好むのだろうか。
それはともかく、これまでミランから自然と溢れていた神のような力(たぶん緑のサクリア)が、欲を持ったことで通常モードに抑えられたのだと思う。
「アンジュのせいでこうなった」と強く糾弾するような言葉は、恋をする前のミランからは出てこなかったはずだ。ミラン自身が自ら発したその言葉に驚いていることからも、彼の動揺の激しさがわかる。
そんなミランをアンジュは抱きしめて、怖くなくなるまでそばにいると伝えるのだ。

ただ、ミランの場合はここからの立ち直り方がすごい。
「神の力」を失ったというのに、その動揺からはわりとすぐに回復。これが恋のせいだと自覚し、アンジュが嫌がっていないとわかった途端、彼女にくっつきたくて仕方ない様子を見せる。
つ、強い。
「人」になったショックから立ち直るまであと2回くらいは落ち込みイベントが続くのかと思っていたが、全然違った。
なんたる回復力の早さ。
ステイステイステイ、まだ恋愛イベント7やぞ。もうしばらく座して待て。
乙女ゲーには、ミランみたいに「恋愛感情がわからない」というキャラはがたまに出てくるのだが、その多くは「感情そのものが薄いから、恋愛感情もわからない」というタイプだ。だから恋を知ることで他の感情をも知ることになる。
しかしミランはそうではない。喜怒哀楽はちゃんとわかるし、むしろ感情豊かなのに、恋愛感情だけがよくわかっていないのだ。
ゆえに恋を知り「欲」を受け入れた後のミランは、持ち前のストレートな感情表現でアンジュに自分の意思を伝える。
私が好きなのは、自分を堕天せしめた「欲」をミランが憎まずに受け入れているところだ。幼い頃から人間の欲をたくさん見てきたはずなのに、ミランは欲を持つことを汚らわしいとは思っていなかったし、欲を持つ人間を不思議には思っても蔑んではいなかったはずだ。もしミランが「欲」を汚らわしいと思っていたり、その欲を持つ人間を馬鹿にしていたのだとしたら、彼は人になることにもっと苦しんだと思う。
上弦の弐みたいに、胡蝶しのぶにぶっ殺されていたかもしれない。
ありのまま自然なままでいられる事も豊かさかもしれないが、欲があることでさらなる豊かさが導かれるのだとミランは知る。そしてそれに気づかせて(=自分に欲を教えて)、新たな価値観を与えてくれたアンジュへの恋心を新たにする。
告白を受け入れると、本当に嬉しそうなミランが見られる。キスしてほしい、キスしたい、ハグしたい!大好き!全部欲しい!幸せ〜!と、これでもかこれでもかとストレートな言葉をくれる。
女王試験については続けてもやめても「どっちでもいい」と、マジでどっちでもいいやと思ってるのが丸わかりなのがミランらしくていい。
ミランの告白は「僕を欲深にさせる」「君の欲深な顔が見たい」と、これまでの恋愛イベントからの流れをくんだセリフが絶妙だったと思う。

私が思うミランの良いところは、やはりあの自己肯定力だ。ミランはしょっちゅう同僚にいたずらを仕掛けているが、彼はそれをして怒られることは考えていても嫌われる可能性はあんまり考えていないと思う。また、初期のアンジュとの会話を見ても「こんなこと言ったら相手に本気で嫌われるのでは」などと思っている様子は微塵もない。
ずっと周囲に自分の存在を肯定されてきた人間ならではの強さ(時には無邪気な残酷さ)をミランは持っている。それに、幼い頃から周りに愛されて育った人は、自分が周りを愛することにためらいがない。誰だって自分に好意的な人間にはやはり好意的になりやすいものだ。だからミランはサクリアがなくてもきっと沢山の人に愛されただろう。やはり彼の自己肯定力の強さは羨ましい。
ぜひ今後の子育てに(部分的に)活かしたい。

あと、ミランは「恋愛をしたことがない」と言っているわりに、照れもせずにやたらと接触してくる。しかも「うっかり触ってしまった」などではなく、確信犯的に触る。
恋したことがないという無垢なところと、でも性的接触はしたことがありそうな(もっとはっきり言えば全然童貞っぽくない)ところを、ミランは同時に持っている。心の体験と身体の体験がアンバランスな印象があるのだ。だから、こいつ無邪気だなと思った直後に雄っぽさを出してきてこっちを戸惑わせる事が可能なのだと思う。
私はミランのそういうとこが好きだ。

そして、私はミランの腕から肘にかけての筋肉の線が好きだ。フードを持つ腕を曲げてる立ち絵があるだろう。それだ。
その腕を見ると、ミランは細身に見えるけどダンサーらしく筋肉質なんだなとよくわかる。あと、衣装の脇から少し覗く腹筋も良い。
ロレンツォみたいに派手に露出してはいないが、その分衣服に隠されし腹筋や胸筋に思いを馳せることができる。
私にとっては、ユエの手、ノアの首元に続くお宝である。人は隠れた部分にこそ、よりロマンを感じるものなのだ。多分。

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