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Quiet Nights Of Quiet Stars

ちるぽよさん、お元気ですか。わたしは元気です。ちるぽよさんがエモい日記を書いていて感銘を受けたのでわたしも書いてみようと思っていま筆を取っています。

わたしはといえば、最近引っ越しました。前の家から川を挟んだ向こう、距離にして徒歩3分。理由は前の家が狭かったから。いまの家はいちおう前よりは広く、窓が大きくて日当たりがよく、眺めがいいのが良いところ。毎朝、窓から見える景色に見とれています。

引っ越したばかりだから、というのはただの言い訳で、前の家から似たようなものですが、とにかく家に何もありません。冷蔵庫も、洗濯機も、テレビも、ラジオも、電子レンジも、インターネットも、何もない。あるのは床と壁と天井、風呂とトイレとコンロとベッド、IKEAで買った600円の机くらいのものです。とりあえず命に関わることでもないからそんなに問題ないと思っていて、いまのところ購入の予定も立てていません。洗濯機はさすがに買うと思いますが。

まあ、そんな家なので、いまわたしには娯楽というものがないんです。

なにもない家は、ものすごく静かです。わたしが家に帰ってくるのは、だいたい12時をまわるぐらいで、少しお腹が空いているので、りんごをむいてたべたりします。時々車の音が聞こえます。友人が家に置いていった木彫りのガネーシャが、何もない部屋で異様な存在感を放っている。しゃくしゃくとりんごを食べる音だけが部屋に響いたりしています。

ベッドに入る頃には、世界はもう夜中になっています。娯楽のない家で、わたしは枕元の電源に繋いだスマホを握って誰かに話しかけます。わたしの電話は速度制限がかかって、まるで牛の歩みのように遅い。でもそんな電話でもメッセージを届けてくれるからありがたいと思いますよ。

電話の向こうの人は、子供の頃どんな家に住んでいたのかとか、好きな映画とか、最近見て気になったもの、共通のともだちの近況とか、いろんなことを教えてくれます。まるで、寝る前にお母さんが絵本を読んで聞かせてくれているみたいです。「アラビアン・ナイト」みたいにいろいろな冒険談があって、お気に入りのエピソードを「またあの話して」とお願いすることもあります。たくさん笑って、笑い疲れたら「おやすみ」と眠りにつく。

むかし、高校生とかの頃って、呆れるくらい長電話をしてましたよね。2時間も3時間も、テレビに誰が出てたとか、先生がどうだとか、思い出すのも困難なくらい、些末なことをずっと話していた。あれは何だったんだろうと時々思い出すことがあります。

その頃、わたしたちの脳はまだいまほどカチカチに固まっていなかったから、誰かと繋がって、お互いのことを知って、コミュニケーションをすることができた。いまでは大人になって、時間もなくなってしまったので、そんな長電話をすることもなくなったけど。こうして真夜中に誰かの話を聞くというのは、何にも代えがたい幸福な時間だなと思いました。

それではまた。






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