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博多華丸・大吉が素晴らしかった

あけましておめでとうございます!

年明けのお笑い番組で博多華丸・大吉さんのコントを見たのですが素晴らしかった。「締めの挨拶」というネタだった。コントはこれからの新年会シーズン、飲み会の締めの挨拶をどうすればいいのか?と相方に相談するところから始まった。以前は「乾杯の音頭」というネタがあったが、そこからさらに進化して「締めの挨拶」になったという。

華丸さんが演じるのはどこの会社にも一人はいそうな”お調子者”だ。

「えっ?!わたし?!締めの挨拶?!いやー、並み居る先輩を差し置いて、わたしができるのはこのテーブルの上の鍋で雑炊を作ることくらいです。締めとしてね。笑 えーとそれではアンケート取ります。麺と雑炊どっちがいい?それでは4対3で雑炊の勝ち。それじゃ卵溶きまーす」

締めの挨拶で卵を溶かれても困る、ということでやり直し。華丸さんは終始酔っ払って気が大きくなっちゃった”いい人”を演じている。「挨拶お願いしまーす」と呼ばれても「おっ◯◯ちゃん!ちょっとゴルフの時のドリンク代返してよ!」なんて話して寄り道ばかりして、なかなか前に出てこない。きっと会社でもこんな調子で過ごしている、釣りバカ日誌みたいな人なんだろうと想像が膨らむ。

「いや昨年はね!我がソフトバンクホークスが日本一になって素晴らしい年でしたけども、まさか九州場所でなんとかかんとかが引退して驚きましたけども、何が一番驚いたかと言いますと、目の前に座っている山下本部長が今日はハイボールを飲んでいること!『日本酒以外は酒じゃなか』と豪語していた山下本部長が、昨日今日酒を覚えた若者のようなハイボールを飲んでいるとは驚きです。それではお手を拝借!」

あまりにも山下本部長に媚びているのではないかということでやり直し。

「えー今年は戌年ですが、わたしも同僚からよく”会社の犬”と呼ばれてまして、ある意味わたしも年男といっても過言ではないかと。とにかくわたしの今後の目標といたしましてはですね、このお店を出まして、行きつけのカラオケスナックで覚えたての星野源を歌おうかなと思っておりますが、どうでしょう、付き合ってくれる人!おっ結構おるね。えっそんな人数はいるかな?!あっ山下本部長が手をあげていない!あのミスター二軒目、逆シンデレラと言われた山下本部長が直で帰られる!ことし初めてのサプライズであります。それではお手を拝借」

華丸さんが素晴らしいのは、”会社の飲み会”のあの独特な雰囲気がそのまま真空パックされているところだ。会社の飲み会は行きたい人もいるし行きたくない人もいるし、ああここに至るまでに幹事がぐるなびで店を探して予約して、部署全員にメールが地図添付で回ってきたりしたんだろうなという空気感までが見える。会場は座敷だからみんな靴を脱いで上がって、ブーツのOLは「座敷なんてヤダ」と言う。会が始まれば部長が昔話をしたり、サラダが運ばれてきて新人が取り分けようとがんばったり、「早く終わんねーかなー」と空気になってひたすら耐える人がいたり。メインの鍋が来て、ラストオーダーになって、一次会の2時間なり2時間半なりが過ぎていく。

華丸さんは、こういう社会のコードで使われている、「酔っぱらってるけど、いちおう体面があるから日本の社会で使われている丁寧な言葉遣いをしているお調子者」を完璧に演じているのがすごい。この番組では他にもサラリーマンのコントがあったけど、スーツを着た人が演じている「まあ、ありそう」というシチュエーションだった。「なんとかくん、これコピーしてくれ」「ちょっとあんた、経理のなんとかちゃんと浮気してるでしょ」みたいなやつだ。そういう「まあ、ありそう」は頭で考えられる。まあ笑えもする。

でもここまで、アルコールと鍋の熱気が座敷に充満しているような空気感が伝えられるのは博多華丸・大吉だけである。そういうことが出来るのは、普段からすさまじい観察眼で人を見ているのだろうし、ものすごい愛を持っているのだろうなと思った。段違いだった。新年から素晴らしいものを見せてもらった。

YouTubeに動画があがっていたので、消されるまでお楽しみください。


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