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映画「パラサイト」がめっちゃ面白かった話

映画「パラサイト」を見た。めちゃくちゃ面白くて「これは全人類が面白いと思っているんだろうな...」と思っていたら「評判聞いて見に行ったけどそんな面白くなかった」という意見を複数聞いたのでどこが面白いと思ったのか書いていこうと思います。

まあ絵面とかについてはポン・ジュノ監督なのでどこを切り取っても美しく、編集についても一切の贅肉がない。まずはこの極上の味を味わうところからですね。

そして、

家族の絆が最高

家族の絆を描かせたら世界で右に出る者はいないポン・ジュノ監督!これまでは片親などの描写が多かったのですが、今回の家族は父・母・兄・妹の4人家族。半地下の家というのは北朝鮮の攻撃に備えたシェルターとして作られたということなのですが、そこに家族仲良く過ごしている。

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この四人、全員無職。

でもものすごく仲がいい

みんな友達みたいにワイワイ話して、一緒に御飯を食べて、力を合わせて生きてる。飲んでるのは安ビール。食べてるのは残飯みたいな食事。それでも四人揃ってワイワイ言いながら食事してる。すごく楽しそう。そこがまず最高の萌えポイントだった。こんなに仲いい家族、みたことありますか?フィクションでも実生活でも?

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もうこの笑顔を見るだけでうれしくなっちゃう。全員キャラ立ちすぎ。この四人のYou Tubeチャンネル作ってほしい。この四人を作ってくれたポン・ジュノ監督にまずは感謝した。

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ネットなんか引けるわけないので、wifiにタダノリしてる兄弟。仲いいなあ

で、この四人、完全無職

なのでピザチェーン(女若社長が切り盛りしてる)の箱を作る内職をしているのだが、「手抜きすんな。クオリティが低い」と言われてギャラを減らされるダメっぷり。

なんでこんなに貧乏なのかというと、父が台湾チキン?のお店を出してそれを潰してしまい、借金が膨大にあるんですね。それで、不景気で仕事もない。韓国は日本と同じくらい流行の流行り廃りが激しいんだと思う。それで、ドライバーをしたり、いろんな下働きをしてコツコツ働いたお金で流行の台湾チキンの店を出したらおもくそ潰れたということで父だってなんにもしてなかったわけじゃないんですよ。

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半地下の家。目の前ではよく酔っ払いが立ち小便をしている。ただでさえかび臭い半地下で、立ち小便の匂いが立ち込める通り、、ひどい匂いに違いない、、

で、母は砲丸投げの元選手。先生の仕事があってもいいのにねえ。それでも仕事がないのが、韓国の

・学歴社会

・コネ社会

を表しているんだとおもうね。

で、貧乏だから子どもは大学に行けず、「フリーター」をやってる。

そんな息子の元に、ソウル大学という超エリート校の友達が「俺留学に行くから、そのあいだ金持ちの家の家庭教師してくんない?」という誘いが来る。

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あと石もくれた。

でも単なるフリーターを金持ちの家が雇ってくれないので、妹が野生で磨いてきたフォトショップ技術を駆使してソウル大学の入学証を作る。

ソウル大学に行ってて、留学するくらいだから友達は富裕層なんですよ。おじいちゃんがよくわかんない石をコレクションしてて、その一つをホイホイくれるくらいに裕福。

この映画、富裕層と貧困層の間にものすごくはっきりとした線が引かれている

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これが金持ちの家だ!坂の上にあるぞ!なんとか先生がデザインしたデザイン物件だ!IT企業の社長一家が住んでいます!

「山の手」「下町」といいますが、昔から金持ちは上に住んで、貧乏人は下に住むんです。

富裕層と貧困層の間の境目。目には見えないけどその線ははっきりとある。その線をじりじりと侵食していくのがたまらんかったですね。

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で、「信頼してる先生の紹介だし、ソウル大学の学生だから」ということでまんまと家庭教師になった長男。

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でもただ家庭教師として潜り込んでも、実力がなかったらすぐに追い出されるでしょう。しかし長男は見事な教育を披露し、母親を感激させる。即採用です。

この四人、すごく地頭がいい

んですよ。貧困層にいるけど、ものすごく頭がいい。

で、信用された長男は、「知り合いにアメリカのイリノイ美術大学に留学していた美術療法士の先生がいるんです。弟さんの家庭教師にいかがですか?」と妹を紹介する。

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妹も「アメリカ帰りの絵画療法士」ということで侵入。「ネットで適当に見た絵画分析の知識を言ったら感激して泣いてたわ」と金持ちの家の信頼を勝ち取る。

地頭がいいんですよ。教育をうけてなくったって、貧困層だって、バカじゃない。でもそんな人たちが、コネがないから、学歴がないから、就職もできないという背景があるんだと思う。

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それで、妹が次に繰り出したのは、「そういえばシカゴに転勤した叔父様の運転手がいま空いているわ。その人が登録しているエグゼクティブなサービスを使ってみたらどうかしら?」という手。

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架空のエグゼクティブサービスを捏造することで、見事父が運転手として潜入成功!

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このへんのくだり、めちゃくちゃ面白いですよ。オーシャンズ11かと思った。サイコーのスリリングなエンターテインメントになってます。

映画の中で、妹が「どうして金持ちって人をすぐに信じちゃうのかしらね」というシーンがある。すると母が「金持ちだからいい人なんだよ。金は人間をぴーんと伸ばすアイロンなんだ」という。

この金持ち家族、全員いい人で特に奥様がホイホイ騙されてしまうのですが、ただ騙されてるわけじゃない。

アメリカという名前にものすごく弱い

という脆弱性がある。イリノイ州に留学していた絵画療法士、シカゴに転勤した叔父さんが使っていたサービス、アメリカのものは全部信じている。

でもこの家族がしてることってそんな悪いことなのか?ちゃんとみんな労働して、その対価もらってるだけだし。能力はちゃんとあるし。

でもコネも学歴もない韓国人がそのまま行っても絶対富裕層には雇ってもらえないから身分を偽ってる

これ、すごいかわいそうじゃないですか?

地下の匂いって、どんな匂いかわかりますか?サンフランシスコの貧困地域とか、アジアのローカルな地域って、なんだか耐えられない匂いがするんですよ。立ち小便の匂いとか、垢っぽい匂いとか、なんだかよくわからないスパイスが煮込まれている匂いとか、生臭い匂いとか、ゴミの臭いとか、ぐちゃぐちゃになって、そこにいるのをためらうくらい。

観光客はそこから歩いて立ち去ることができる。でも、そこにとどまるしかない人はどうする?

どんなに実力があっても、上に行くことができない。そういう構造になっていて、下の人はただ上を見つめるだけ。それがこのテクノロジーの発達した、現代の韓国でも起こっているんだなあと身震いがした。

と、ここまではレイヤー1の話。

ここから、ポン・ジュノ監督がすごいのをぶちこんできます。続きはぜひ作品で確かめてくださいね。

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