見出し画像

怒りはポイント制

私は怒っていた。

女の人の怒りというのはポイント制だと思っている。1不満=1ポイントとしてポイントカードに貯めていく。スタンプが満額になるまでは何も起こらない。だがそのシートが10ポイントなり15ポイントなり、いっぱいになると、突如その怒りが現実化し、地獄の業火となって全てを焼きつくす。いわゆる「我慢の限界」というやつだ。他人には、このポイントカードが見えていないので「突然怒りだしてびっくりする」ということが怒る。

私もつい先日、ポイントカードが満額になり、怒りが爆発した。イライラしすぎて日常生活を送るのも困難になった。そのため「私が怒っていること」「怒っている出来事の経緯と理由」を相手に説明した。その結果、私が「怒っている」ということは伝わったようだった。だが、どうも、「どうして怒っているのか」というところが伝わっていない。

私が怒っているのは結果(トラブルによる負荷の高さによる肉体/精神の疲労)ではなく、「そのトラブルが発生する思考回路」に怒っているのである。あなたは私のことをこう思っているから、こういうことが起こるんでしょう。

だが、先方は「負荷をかけて疲れたことに怒っている」と思っているようだった。違う違うそうじゃない。もし全身の骨が疲労で骨折してミイラ人間になるくらいの負荷がかかったとしても、もしそのことが本当に必要なことなのならば、人間は怒らない。だが軽んじられているんじゃないかとか、感謝されていないんじゃないかとか、尊厳に関わることについては怒りの沸点が低くなる。人が怒るのはたいてい「自分がしかるべき尊敬を受けていない」みたいなことである。クレームつけてるおじさんとかを見ると、だいたいそういうことで怒っている。

しかしわたくしのそういう真意は、多く見積もっても、どうやら2割ぐらいしか伝わっていないようだった。

2割!!!!!!

絶望だ。少なすぎじゃないのか。あんなに説明して二割。なんにもわかってないのと同じやんけ。これはショック。

せめて7割、いや5割、いや4割ぐらいはわかってほしいと思い、追加で説明しようとしたり、どうにかしようとしてみた。でも人間(特に男性)、相手が怒っていると思うと「また怒られる」ということでもう話を聞いてくれなくなる。そうすると怒る→聞いてくれない→怒り倍増→聞いてくれない→さらに倍増、ということで、怒りポイントがポイント二倍セールになって天文学的に増えていく。なんだかほんとにやりきれない気分ばかりが募っていくものだ。

と悶々として苦しんでいたのだが、ハタと気がついた。

そうか、そもそも他人の気持ちというのはわかってもらえないものなんじゃないのか。最大限にわかってもらって2割ぐらいなのかもしれない。

そうすると、解決法は「諦めること」。諦めるしかない。諦めというのは、木の棒にできたささくれをぱきりぱきりと手折って燃やす、みたいな感じである。満額になったポイントカードをゴミ箱に捨て、まっさらなポイントカードを始める。そんな風に、怒りを手放していくこと。

おそらく人生というのはそういう感じで進んでいくのだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?