ネオリアリスモは作れる!!アルフォンソ・キュアロン監督の『ローマ』
アルフォンソ・キュアロン監督の「ローマ」、評判どおりものすごく良かった。
Netflix限定のアルフォンソ・キュアロン監督の「ローマ」、評判どおりものすごく良かった。主人公は、メキシコ市内のローマ地区にある中流家庭で働くメキシコ人のメイド、クレオ。
舞台は政治的混乱に揺れる1970年代のメキシコ。「ちゃんと犬のフンの掃除をしなさい!」とか怒られながら頑張って働いているが、雇用主は優しく、子供たちはクレオのことをお姉さんみたいに慕っている。忙しい毎日にも休みがある。休日には家政婦仲間とダブルデートをして、映画を見に行く。クレオにはフェルミンというボーイフレンドがいる。ちょっと危ない感じのとてもハンサムな若者だ。
映画は彼らの日常をものすごく淡々と描く。クレオは寝転んでいるこどもに聞く。
「何をしているの?」
こどもは答える。
「死んだフリだよ」
クレオはこどもの横に横たわる。こどもがクレオに尋ねる。
「何をしてるの?」
クレオは答える。
「死んだフリよ。死んだフリも、なかなかいいわね」
何気ない日常の一コマが心に深く刻まれる。
そんな中、まるで澄み切った水に墨汁が落ちるように様々な出来事が差し込まれてくる。メキシコであった、警官がデモ隊と学生を虐殺した「トラテロルコ事件」みたいに全く知らなかったことも知ることができる。
クレオはいつもすごく静かだ。どんなに動揺することがあっても石のように表情を変えない。そんな彼女がラストシーンにその表情を変える。その瞬間に涙があふれる。映画のトーンは始終淡々としていて、まったく何気ない風景ばかりで、なのに一瞬一瞬が心に染み渡る、素晴らしい映画だった。
フェリーニやロッセリーニを心から思い出した。彼らが蘇り、またメガホンを取ったようだった。こんな映画が今も作れるんだ。本当にスゴイと思った。ヌーヴェルヴァーグとかネオレアリズモがこの2018年でも作れる。なんという希望。ショートバージョンもあるみたいですが絶対にフルバージョンのほうがいいと思います。135分あります。
たしかに映画館でみたかったけど、この映画を作ってくれて、netflixありがとう。
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