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ロズタリア大陸2作目『その19』

第二章 【視えない存在と不可思議現象】

『大地の巫女』

薄い藤色の髪を腰までのばした、凛とした風格の女王がわずかに眉を潜ませて、里人として転生を選び修行中の人物を憂いる。聖戦後に交わした古い盟約に基づき、賢者からの要請に応じて大陸に派遣したものの、真意が未だ見抜けず結果として愛し子同様の大切に見守り育み続けていたローザを苦しめてしまった。
「芳しくありませんね……」
どこか口惜しげに下唇を軽く噛む。
冥府に封印した神を信奉する信者によって、誘拐され現実の人知れない洞窟内で密かに生贄儀式を無理矢理行わされ、魂魄毎、冥府に落とされかけてしまった。
駆けつけた勇者の末裔のおかげで、降臨儀式は無事に中断!心身共に救出に成功はしたが、未だ魂魄の穢れ祓い落としが中途半端なのだった。
ふいに褐色肌の精悍な男性が心配そうに見守る女王の隣に現れる。
『我が盟友とも は、守護者となる以前からどこか大陸人の習慣や風習に憧れめいた考えを抱いていた』
そこに緑色の髪の颯爽とした雰囲気を放つ男性も腕組みながら、俗世での出来事を忌々しげに吐き捨てる。
『我らにとっては確かに恩人なれど、実に愚かな男だ。
賢者の言われるがまま、詳細も聞かず普通するか?』
シャールヴィ自身のなかに連面と受け継がれている勇者ウィルヘルムとしての血潮を一滴飲ませ、息吹きとともに吹きかける。さすれば【里人】と勇者の婚姻は為され、女神アイラまたは荒ぶる神と化した者をその身に降霊成し得る子供を産むことが【叶う】
透き通った湖の髪を床まで伸ばした女性が、ややヒステリック気味に喚き散らす。
『ホッント信じらんない!!
もしかして、あわよくば王太子と恋仲になって、子を為す事すら考えてたんじゃない!?』
褐色肌の男性が冷静に反論する。
『もし、そうならば【誘拐劇】は奴の思惑と反するぞ?』
肉体が下界(大陸)に固定されてしまった里人は穢れに耐えきれず妊娠、出産して直後、肉体を失う定め。
冥府に封じ込めた神に対抗すべく子を成そう!と考えた場合、信奉者達に誘拐させずに少しでもローザの心身への負担を軽減した政策や環境作り【厳重な保護による『延命行為』】を図ったほうが、仮にローザの懐妊が賢者の真の狙いだった場合、無事に出産出来る。
「此度の賢者の考え……
本当にどういう意図なのでしょう???」
その後も様子をみながら四精霊長と議論しているが、一向に結論はでないのだった。
ゆらゆらと透明な液体の中に全身すっぽり浸され、浄化作業を受け続けているローザの今後をどうすべきか?
女王は一人静かにずっとその場に立ち続け思案するのだった。

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