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ロズタリア大陸2作目『その16』

『衝撃の事実!?』

「それは、つまり……現在のコンシュテール公国統治者。
レイドルフ大公は俺よりもはるかに不可思議な現象や出来事を君を通してたくさん経験してる!って事でいいか?」
シャールヴィからの問いかけに、アーシュが捉え方は元王太子とそう変わらないと答える。
「魔術っていう知識や技術がもたらす不可思議な現象は、使い方次第では現在、大陸で用いられている道具なんかより安全な効果をもたらす事が可能だ」
ろうそくは炎ゆえに火事になる危険性がある。その点、魔術の明かりは『熱がない』
常に魔道薬に浸している状態であれば、誰でも昼のような明るさの恩恵を受けられる。
「レイフのヤツ、あたしやフィン達、魔道師を理解して受け入れてはくれてるけど、別に傾倒してる訳じゃねぇよ??」
あくまで公国民の利益、発展!に重点を置いた政治理念で、きっちり線引きして対応。住民達に治安維持向上や魔術による『豊作祈願』を行事に取り込んで実施している。
「魔術って、もしかして……立派な学問か??」
理路整然とスラスラ述べてみせるアーシュの説明を受けて、妙に説得力がある点、あまり理解がナイ自分でも分かりやすく大陸の品物と魔法道具との利便性の違い!などを聞き、うっかり思った事を口にしてしまった。
数年前から補佐官であるフィンに
【魔道とはなにか?】
師事も受けている近衛の一人が、やや疑惑気味にシャールヴィに冷たい視線を送る。
「少なくとも我が国に駐在くださっているアイリッシュさんやフィンさんは、宝石泥棒を働いた貴方よりか断然、素晴らしい功績を我らにもたらしてくれていますよ??」
父同様、失言してしまった!!!
瞬時にシャールヴィが『侮辱する意図がない』ことを慌てて弁明する。
「いや、違う!
俺自身の無知さを自覚しただけだ!
不快感を与えてしまったならば申し訳ない!!」
ククク……
アーシュが呆れ気味に笑いながら、勇者ウィルヘルムとして、語り継がれている通りの人柄だと評価する。
「あたしやフィンは公国来る前に故郷で『試練の搭』って呼んでる施設内で、聖戦時のウィルヘルムの人柄を知ってる。
そういう意味じゃお前さんの真っ先に謝る性格、ホントそっくりだよ」
そうして、以前から抱いていた疑問を良い機会なので尋ねた。
「そもそも、なんでお前さん、金貨数千億枚!なんて無茶苦茶な借金、背負ったんだ??
もしかして疑うことを知らねぇお人好しな気質を賢者の奴に利用されてねぇか??」
借金そのものが【でっちあげ】なのではないか?
問われて、シャールヴィは当時のやり取りを憶えている限り、正直に話し伝える。
「俺はあの簒奪劇が発生したあと、すぐに叔父を頼った。
そうして、しばらく賭博にハマった生活を送っていた」
ある日、突然、叩き起こされ、机の上に置かれた金貨一千億枚の借用書を見せられ、平身低頭!全力で謝り倒してシェドを紹介され、言われるがまま商業都市に向かった。
経緯を聞いたアーシュがしばし、考えこむ。
「ん~……
なんか、いかにもアイツがやりそうな手口だなぁ~……」
そして、シャールヴィを見据えて推察を述べる。
「博打にハマる勇者!ってのは初めて聞くが、仮に一ゲーム銀貨一枚だとしても、たった数年だろ?
数千億枚!!って無茶な言いがかりにも程があるんじゃねぇか??」
なによりそんな滅茶苦茶な因縁付け、統治者である医療都市大公自身が許さないのではないか?
道理を問われてシャールヴィが大きく目を見開き、ハッ!とする。
「そうなのか!?」
根っからのお人好しぶりに同席中の近衛が数名、忍び笑う。仕方なさそうにアーシュが別の羊皮紙に計算してみせる。
「仮に徹夜でゲームしたとする。
しかし、人間三日以上、寝ねぇと死ぬ仕組みだ。
なので徹夜した翌日は爆睡!
んで、三日後ぐらいにまた賭博に出向く!
ってことは通ってた頻度は、毎晩でなく週に二回か三回だよな?
ゲーム中に飯喰ったとしても、料金はせいぜい銀貨一枚から十枚だと思う」
賭博で一晩銀貨二十枚程度、週に二、三の頻度で出入りしていたならば【銀貨六十枚】
一月辺りでも【銀貨三百枚、金貨ならば三枚程度】
約五年程、放蕩生活を送り続けた!として賭博でこさえた借金はせいぜい【金貨二百から三百枚前後】なのでは?
彼女の計算にシャールヴィがそれに加えてるべき遊女代を指摘する。
「お前達から軽蔑されるのを承知で話すが、俺は月四回ぐらいの頻度で妓女と遊び過ごしてもいた。
しかし、それはあくまでゲームに勝った時だけだ」
それを聞き、アーシュが真面目な表情で堕胎手術費用の可能性を羊皮紙に加える。
「意外かもしんねぇが、医療都市はかなり効率重視で人体をあますことなく利用する性質がある。
男が花街で遊ぶと当然、子供が出来るよな?
ただし!相手が不特定多数の場合がほとんどだ」
この時は妊娠が判明次第、堕胎薬などを飲んで【流産】したり、資産家や貴族など富裕層などの人々が医療都市に【病気の相談】をする。
医師が【臓器移植】の必要性を判断した場合に備えて、わざと出産して出自不明の幼児達を『一時的に保育』している。そして患者が到着次第、手術を開始する。
冷酷無比かつ、お金さえあれば他人の臓器や生命すら奪い、健康を取り戻す!患者からは感謝される一面を説明するのだった。


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