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ロズタリア大陸2作目『その11』

『いざ、医療都市へ!!』

いつの間にか隣に移動している補佐官のフィンの顔を見据えて絶対に自分が行く!
意思が固い事を伝える。
「悪霊に気がつかず憑依された状態で活動してる!となれば事は一刻を争う!!
フィン、これは議長であるあたしの責任だ。
留守と評議会の連中の対応、頼む!」
こうなると彼女は絶対に譲らない。
仕方なさげに軽く吐息を漏らして承諾する。
「分かりました……
無理だけは絶対になさらないでください……!
と言いたい所ですが、貴女の事ですから無理ですね」
続いてフィンは魔術に関する理解者でもあり、親友でもあるレイドルフ大公に意見する。
「レイフさん、僕達は賢者の要請に応じて出撃の準備に入ります。
胆力のある精鋭部隊の選定、並びに今後を踏まえた打ち合わせをこの後、行って頂いてもよろしいでしょうか?」
『医療都市が片付いたら、恐らく次の標的は自分達。コンシュテール公国の可能性が高い』
そんなフィンの思惑を感じ取り、あっさりと快諾する。
「いいよ、まずは近衛隊長に話して急ぎ人選しないと、だね!」
城下町で門前払いされた時と違い、トントン拍子に話が進んでいく光景にシャールヴィが密かに唇を尖らせる。
『俺……門番の人にどつかれる必要あったか??』
そうして【疑え!】と伝えてきたシェドの言葉をぼんやりと理解し始めてきたのだった。

執務室での話し合いから三日後……
すっかり旅人になりすまして、準備万端整ったアーシュ、シャールヴィ、シェド、戦闘魔術が使える高位魔道師が二名、そして護衛や魔獣との交戦経験を獲得するべく選出されたコンシュテール公国の精鋭近衛隊員が数名。
女神の言語ガレス・スフレクト が刻まれた白銀の剣を帯剣した状態で、コンシュテール公国魔道都市本部の転移部屋に全員、集合していた。

どこか不安が入り交じるも、全幅の信頼を寄せた眼差しを向け、レイフはアーシュに見送りの言葉をかける。
「それじゃアーシュ、任せたよ?」
レイドルフの隣に居る小柄な女性が心配そうに彼女を抱き締める。
「話は彼から大体、聞いたけど気をつけてね、アーシュ……」
愛らしい小動物を思わせる女性を抱き締め、快活に笑いながら心配不要!だと返す。
「大丈夫だって!
ちょっと神器の状態を確認して、必要とあらば派手にドンパチしてくるだけだからよ!!」
ぽふぽふ!!
金髪を肩で切り揃えた彼女の頭を軽く撫で、夫であるレイフの側にそっと戻して、頼んでいる用事を果たして欲しいとお願いする。
「それよりエレナも神器の使い方の練習、頑張ってくれよ?
お前さんは視えない領域を管理してる公国守護者からも認められた正式なコンシュテール公国の公妃だ。
詳しいやり方はフィンやディアが教えてくれるはずだから、あたしが戻ってくるまでには使い方をマスターしといてくれ!」
小さくガッツポーズして快諾する。
「ええ、任せて!
私、頑張るわ!!」
いざという時は絶対に発動させてみせる!
ふんぬ!!
使命に燃えてみせた。
そこに留守を預かる補佐官のフィンが、上司てあるアーシュに対して、凍てついた視線で厳しく釘を刺す。
「議長、魔道師ならば要請に応えてみせて【当たり前】です。
しかし……くれぐれも!!
やりすぎないでくださいね??」
下手すれば他国侵略と疑われかねない!!
故にコンシュテール公国としても、切り捨てやすい精鋭の正規兵を旅人に扮しさせての同行だった。
作戦そのものは成功させても、一歩間違えると後が怖い!!
理解したアーシュが小さく身震いして、そそくさと転送魔術の呪文を唱え始める。
「お、おぅ……!
なるべくやりすぎねぇように心がける。
そいじゃ、行ってくる!!
じゃあな!!」
魔法陣の上に居る十人前後がまばゆい白い光に包まれたのだった。




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