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ロズタリア大陸2作目『その15』

『現実と視えない領域との関わりあいかたの距離感』

一通り食べ終えて満腹となったアーシュがジト目で賢者であるシェドをみつめ、嫌味を放つ。
「なぁ……賢者さんよ?
お前、何年も勇者の末裔の側にいながら色々、一通り教えた成果が今のそいつなのか??」
視えない出来事や領域に関する知識や理解度の足りなさを指摘され、シェドが自嘲混じりに肩を竦める。
「シャールヴィ様に側仕えして以来、今回の私はどちらかというと現実での問題解決に鋭意、取り組んでいました。
即位前からレイフさんに接触し、理解、賛同を得られた貴女とは、かなり立場も状況も違う感じですね」
商業都市を真っ先に陥落、奪還したのは現実でシャールヴィ王子は勿論、民衆からの理解、共感が得られやすかった。
「ふぅ~ん……
理解、ねぇ~……!」
アーシュが含みを持たせた疑惑を視線をシェドに向ける。
『(たぶん)ほとんどバレてるな、これ……』
態度にはおくびも出さないが自身の過去の所業に内心、冷や汗をかく。
商業都市の仕上げに、招聘に応じてくれた里の守護者をわざと邪教集団の信奉者に誘拐させて【降臨儀式】の一部を執り行わせた。
その事を指摘している。

話が分からないシャールヴィや近衛達は、ただ食後の飲み物や冷たく甘いデザートを堪能するだけだった。
「ま、道中まだまだ積もる話もたくさんあるし、一応【協力関係者】だ。
あたしはお前さんと事を荒立てる気はねぇよ」
そう吐き捨てて、ぷい!と顔を背ける。
腹を満たした一行は、会計を済ませると人数分の馬を調達して城下町を出て、参拝用の街道に沿って馬を走らせたのだった。

『魔道に関する講義』

どうやら自分はシェドではなく、彼女からもっと詳しく聖剣の扱い方や悪霊?など視えない存在や邪教集団に関する知識や関わりあいかたを教わった方が良い!
そう感じたシャールヴィは近衛達にも声をかけて、道すがら宿泊中に色々、教わる事にした。

風呂に浸かり、日中の移動で流れた汗や埃などを洗い流し、宿が用意してる浴衣式の寝間着姿で一同はシャールヴィの部屋に集まって、羊皮紙と羽ペン片手に分かりやすく講義してくれる彼女の話を熱心に耳を傾けるのだった。

「シェドのヤツ、商業都市を武力制圧してから数年後のある日、俺を断崖絶壁の岬に連れて行って小一時間ほど地べたに這いつくばらせ続け、あいつ自身はなんか叫び続けていた」
あれは魔術的にどういった理由からの行動だったのか?
以前から疑念を抱いていたのだった。
ポリポリ頭をかきながら、アーシュが推理を述べていく。
「商業都市駐留中の魔道師達からある日、突然【里の守護者】と、うちら魔道師、特に高位の実力を備えている!と認定された極一部の魔道師にのみ伝えられている存在。
薄紫色の髪色をした神秘的な少女の姿で現れて、薬剤師として活躍していたのは報告を受けてる。
お前さんを地べたに這いつくばらせて叫んでいたのはたぶん【里の守護者】への応援要請だ」
「里の守護者とは??」
近衛の一人が初めて聞く存在について手を上げて質問する。
アーシュがとある夏の合宿の際に、見たことない毛色の鳥を目撃した時の事を指摘する。
「エレナが誘拐されかけた時の事を憶えてるか?」
たまたま食堂に居合わせ、誘拐犯討伐に加わった経験を持つ近衛が当時の光景を思い出す。
「あ、はい!」
「そん時、うちらが誘拐犯達を攻撃しようとした矢先に見たことねぇ色したオウムだか鷹だか?分かっんねぇ大きな鳥が相手を襲撃したろ?
あれが【里の守護者】と呼んでる存在だ」
邪教集団、または信奉者の所業!と判断した場合のみ本来は人の姿ではなく、動物などの姿で大陸人に武力干渉してくる。
殲滅完了!と判断次第、速やかに拠点に戻る。魔道師は勿論、大陸人と交流する組織や人物達ではない!と古来から魔道都市に許可された魔道師のみ伝えられているいにしえの習性を明かしたのだった。

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