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ロズタリア大陸2作目『その12』

『変わらぬ日常』

まばゆい光が収まったら、別の転移部屋に瞬間移動していた。
一同は、事前の打ち合わせ通り、旅集団として入国手続きを行い、医療都市の魔道支部を通り抜け、城下町に歩き出ていく。

「可愛い甥よ、旅に出す!」
莫大な借金をこしらえたことで般若顔の叔父から告げられる前と変わらぬ活気に満ちた城下町の様子に、どこかシャールヴィは拍子抜けしていた。
『いつも通りに思えるがなぁ~……』
そんな彼に構わずアーシュがのしのしと大股で急ぎ足がちに東に向かい進む。
置いてかれては意味がない!
シャールヴィは急いで、彼らについていくのだった。

小一時間ほど城下町を東に歩き続け、アーシュが鉄混じりの匂いを感じ、目的とは若干かけ離れているが、ふと裏路地を覗きこむ。
シャールヴィや旅人に扮した他の近衛もつられて、驚愕の光景を目にしてしまった!
「なっ!?」
そこには、まるで家畜を屠殺するかのような造作ない様子で人間を解体している様子だった。
思わず声をあげてしまった事で作業していた人物に気がつかれてしまった。
煙草を咥えた髭だらけの柄の悪い貧相な男が訝しむ。
「あ"ぁ~?」
敵意がない!
相手に思いこませる為に、アーシュが咄嗟に機転を効かせて、気楽な口調で取引を検討してるのを伝える。
「悪りぃ!
うちら、とある金持ちに依頼されてて、ね!
活きの良いブツないか?調べてきてくれ!って頼まれてんだよ」
『客か……』
彼女の話を聞き、男がクイッ!と顎だけ向けて案内する。
「なら、旅籠の親父のとこ行きな。
病人にあったのを用意してるぜ?」
「ありがとう!」
軽く手を振り、その場を立ち去ったのだった。

護る為に盗賊などを討ち倒し、生命を奪い慣れているはずの近衛兵が数人、心臓ドキドキ
いまにも爆発しそうなほど驚いた心境を吐露する。
「な、なんですか、あれ!?」
アーシュが意外そうに眉を潜める。
「なんだお前ら、医療都市の裏側を知らないで来たのか??」
そこにシェドが工芸都市同様、他都市も隠された物事の実態を淡々と解説する。
「工芸都市が裏では軍事都市と呼ばれている同様に医療都市は臓器売買都市として、政務高官達は密かに呼んでいるんです」
初耳の裏側にシャールヴィが以前、押し付けられた矛盾に激しく憤る。
「あぁ!?
なら、殺しご法度ってどういうコトだ!?」
どこか呆れ気味にシェドが一歩間違えれば、シャールヴィ自身がその扱いにされていたのを明かす。
「解体されていた人間は、暗殺を企み実行しようとした人間だったり、賭場で負け続けた人です。
繁華街の賭場で借金こしらえ過ぎると自分の臓器で支払わせているんですよ……」
『えええ!?』
「なら、叔父は理由つけて俺を逃がした!ってコト……なのか??」
腐っても元王太子だからか?
あるいは統治者の親戚だから助かったのか?
釈然としない様子でシャールヴィが戸惑う。
そんな彼をみてシェドが淡々と医療都市の特徴を解説し始める。




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