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ロズタリア大陸2作目『その8』

【元王太子の苦悩】

すらすらと人体設計や目的を分かりやすく述べるアーシュをシャールヴィは、どこか尊敬と興味津々な思惑を入り交えて感嘆していた。
『シェドの奴からは来る道中、若干十二歳で魔道師達に突出した能力の高さを証明してみせ、評議会議長に選出されている!
数年前からコンシュテール公国と協定を結び、本部管理者として常駐、日夜治安維持や公国民に魔道技術を提供している。とは聞いていたが……』
王国や学術都市の著名な学者からは、決して得られなかった貴重な知識を初めて見聞して、奇妙な敗北感を、自分の向かいに座って真剣に彼女の話を聞き入る様子のレイドルフ大公に抱く。
『シェドの奴は彼を貴重な理解者であり後援的な立場なれど年齢が近い!など様々な理由から彼女とは【親友】関係にある……とも言っていたな』
思い返せば自分は物心つく前から【感情】を表に出さないように!
特に礼儀作法はうるさかった。
一歩間違えれば他国との交流、戦に発展しかねない!!
かつて大陸に平和をもたらした勇者の末裔であるべき!!
徹底的に将来の統治者としての英才教育を施されてきた。
常に護衛として有力な貴族の息子が二名、供についてくれていたが『親友』と呼べる関係ではなかった。
どこか寂しげに、今も熱心に話し続ける彼女の言葉に再び耳を傾けるのだった。

稀代の天才魔道師『アイリッシュ=クルーガー』

どこか灰青めいた銀髪を肩に結い止め、アーシュは人体と魂魄の仕組みについて説明し続ける。
「死んだら魂魄は普通、女神アイラの元に還る仕組みになっている。
しかし、何かしら後悔の感情や強い思念が残ると現世、大陸に留まってしまう。
つまるところお前ら達でいうところのオバケ!状態ってヤツだな」
コンシュテール公国や王国など学術都市から派遣、駐在している神官は、本来このオバケ状態の魂魄を見たり、話を聞いて女神アイラの元に還す。『成仏』させるのも役目のひとつだとも解説する。
素朴な疑問を抱いたレイドルフが手を上げて質問をする。
「アーシュ、君たち魔道師にはその役目はナイの?」
アイスティー飲み、気楽に時代が違っていたことを回答する。
「お前、あたしらが来て以降、公国で怪談話や噂話聞いたコトあるか?」
密かに業務の一環として彷徨える魂を導いていた。理解したレイドルフが苦笑混じり納得する。
「ごめん、そういうことか。ありがとう」
子供の時は『肝試し』など夜にこっそりお墓に遊びに行く!など経験もしたが言われてみれば、ここ数年、とんと幽霊など目撃した!など住民達からも嘆願や意見が来ていない事を思い出したのだった。

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