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嗚呼、学童ものがたり①

少年野外兵育成施設『GAKUDO』

ナイーブで活動的ではなかった私が就学した頃、とある施設に所属することとなった。その施設では共働きの両親を持つ子どもたちが小学校の放課後にプレハブ小屋に集められ野外で調練繰り返し野生的な心身を備え来る有事に備えることを目的としていた。その少年野外兵育成施設『GAKUDO』(学童)。きっと令和の世にもひっそりと日本各地にあるに違いない。

私はどのような施設なのか全く知らない。どんな子どもであったかと言えばケンカひとつしないインドア派で絵を描くことが好きな内向的な少年だ。
入所初日、GAKUDOの指揮官である青年Nに簡単に施設の説明を受けた。
設備はプレハブ小屋と野外調練ができる整備されていないグラウンドのみ。
基本的な日々の活動内容は学校から施設へ来たらプレハブで勉学に励み、駄菓子を食べ野外での調練。

外遊びが苦手な私は少し辟易としながら初日の自由時間で初めのGAKUDOの洗礼に合う。下っ端風の少年に呼ばれ何故か100人乗っても大丈夫な物置の中に案内された。そこには数人の少年が待ち構えており、リーダー風の少年が開口一番「俺たちの下につけば虐めないでやる。」といきなり脅し文句。
保育園を出たばかりの甘ちゃんな私には衝撃的な交流。もちろん、今後のGAKUDO生活を円満にするために仲間になると誓いその場から解放された。

おやつの時間は癒し時々流血

GAKUDO生活の最大の楽しみはおやつの時間である。基本的には駄菓子やチューペットなどリーズナブルなメニューだが子どもには関係ない。
ケロッグの「コーンフロスティ」が登場した時があった。量はおよそ一握り分に牛乳をかける。奇人の少年Oは「コーンフレークを食べたあとの牛乳がたまらんねぇ」とゴクゴク飲み干していたのが印象的だ。

かくいう私もおやつで柿の種が出た日に柿Pを思い切り噛み砕こうとしたら柿Pが口内で滑って縦向きになり上の歯と下の歯の歯茎で噛んでしまい歯茎に柿Pが突き刺さり口内が血だらけになってしまう奇人ぷりを発揮してしまう。口内には傷が残り20歳頃まで柿Pが食べられなかった。

餓狼の心は少年にも宿る

1990年代、巷ではストリートファイターⅡ、通称ストⅡがブレイクし子供たちは波動拳や昇竜拳などの鍛錬に余念がない時代であった。
もちろんかめはめ波やアバンストラッシュも忘れてはいけない。
GAKUDOでもバトル物のゲームやアニメが流行りごっこ遊びをよくしていた。いらない紙を丸めて作った剣でチャンバラをしていたある日、私の剣が少年Bの目の下をかすめ、あやうく目に当たってしまうという出来事があった。Bは大事をとって帰宅し私もモヤモヤした気持ちのまま帰宅し翌日GAKUDOに出所した。Bは元気そうで、すぐに謝りにいくと快く許してくれた。今後は紙剣は無しというルールを定めその日もごっこ遊びをする流れに。
今回はSNKの代表作「餓狼伝説」ごっこだ。ちなみに私はジョー・ヒガシ派。Bは主人公テリー・ボガードになりきりバトルが始まった。
開始早々、Bは両手を高く上げ「バーンナックル!」と咆哮し渾身の拳を私の顔面に叩き込んだ。一発KOの私にBは「昨日の仕返しだ」
少年にも餓えた狼が宿る瞬間であった。

②に続く

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