アタリをつけてかいてみよう
全て主観です。アタリを使って人物イラストを描きます。
イラストを描き始めた人向けの記事です。初心者向けのイラスト講座を見る前に読むことをおすすめします。
大雑把な図形で捉えてみよう
まず、無から絵は生じません。絵を描く時には、常に何かしらの「もの」をベースにします。「もの」には、物体や概念、知識など、様々なものが入ります。
この記事では、人物を中心とした「物体」をベースに話を進めていきます。
アタリ
アタリを描く作業は、「もの」の概形を掴む(画定する)作業です。
頭の中のイメージや目の前にある物体は、あまりにも曖昧か複雑であるため、そのまま描くことが困難です。そのため、これらの「もの」をシンプルな形状に落とし込み、その上で実際の姿に近づけていく(細部を詰めていく)という手順を踏む必要があります。
上の手順のうち、「『もの』をシンプルな形状に落とし込む」手順が、アタリを描く作業にあたります。
基本のアタリ:骨と肉
人物イラストを描くための基本的なアタリは、全身の「骨」と「肉」です(図1)。顔面は不要です。
![](https://assets.st-note.com/img/1660887649211-el1lSHwkHn.jpg?width=1200)
骨
まずは骨のアタリから説明します。これは、骨格をベースとした棒人間です。
頭の骨を「円」、四肢と背骨、鎖骨と骨盤を「直線」に簡略化して配置します。それぞれの線の交点と、四肢・背骨上にある赤い点が関節になります。
この時点で、人物の大きさと頭身、ポージングの下地が出来上がりました。
肉
次は肉のアタリについて説明します。これは、骨格に筋肉などが付いた状態をベースとしています。要は、骨のアタリに肉付けをしたものです。
頭を「球」、四肢と首を「円柱」に見立てて配置します。胴体は、連なった1つの長方形と2つの台形が各面を底面とし、四肢の直径を奥行きとしている「箱」に見立てて配置します。手と足は、直方体と四角錐に見立てると捉えやすいです。
この段階で、人物の厚みとポーズの奥行きが出来上がりました。あとは、この上に服や髪、顔面などを乗せるだけで全身の人物イラストが出来上がります。
補足:胴体
「骨」「肉」の項で、胴体に2つの関節を置きました。上側の関節は鳩尾の辺り、下側の関節はへその辺りです。なぜこの分け方をしたのかを、この項で説明します。
![](https://assets.st-note.com/img/1660892512547-bGewz2rtO7.jpg?width=1200)
まず、胴体を3つに分けてできた部分を、上から「胸」「腰」「骨盤」とします。では、ここで一旦画面から離れて左右に伸び、前後にストレッチをしてみてください。
……胸と骨盤の部分は曲がりましたか?曲がっていませんね。肋骨と骨盤が邪魔だったと思います。
胸と骨盤の部分には、肋骨と骨盤があります。これらは内臓を包み込むような器状の構造をしており、形状が変わりません。一方、腰の部分には背骨しかありません。そのため、胸と骨盤の部分と異なる方向をとることができます。
また、腰では前後左右に背骨が曲がるのに連動して、腰の筋肉や皮膚が伸縮し形状が変化します。なので、腰の部分を胸と骨盤の間の大きな関節だと捉えることもできます。
頭と顔面について
この章では、頭と顔面について説明します。
まず、頭蓋骨は、脳を格納する部分と顔面の部分に分かれています(図3)。
![](https://assets.st-note.com/img/1661092066581-5mhQAk0i6A.jpg?width=1200)
頭蓋骨から下顎の骨を除いた部分は、「球形」とみなすことができます。この中に脳が格納されており、この部分だけで十分に頭のアタリをとることができます。
顔面は、脳が入っている「球」に、「紙」や「板」を貼り付けたものとしてみなすことができます。この「紙」は、おでこの髪の生え際から垂れ下がっており、顎先(下顎)は、首の付け根から伸びた糸によって固定されていると考えます。
補足:下顎
前項での頭部の分け方は、「頭蓋骨から下顎の骨を除いた部分」と「下顎の骨の部分」という分け方とも考えることができます。
下顎は顎関節によって自由に動くことができるため、下顎以外のパーツと分離して扱います。ざっくりとした頭の大きさ、頭が向いている方向は、下顎以外の部分のみで決定されるので、全身のアタリをとる際には不要となります。
アタリをつけてかいてみよう
「アタリ」の項で、アタリを描く作業は「『もの』をシンプルな形状に落とし込む」作業だと述べました。この記事では、アタリを使って人物イラストを描く方法について述べてきましたが、ここで踏んだプロセスは他のイラストを描く時にも使うことができます。
「直線」「円」「四角形」→「筒」「球」「箱」→細部(細かいパーツ、質感、陰影など)というように、描きたい物体をなるべく簡単な図形に落とし込み、その図形に肉付けをしていくことで大抵の物体を描くことができます。
![](https://assets.st-note.com/img/1661094594674-9Ic1DWXA1S.jpg?width=1200)
トレスと模写で練習しよう
アタリの描き方が分かっても、使わなければ描けません。練習が必要になります。その練習法としておすすめしたいのが「トレス」と「模写」です。
手本となる写真やイラストの中の人物に実際にアタリを描く、という方法でトレスや模写をします。この練習の目的は、「アタリをつけるのに慣れること」、「絵のバランス感覚を掴むこと」、「引き出しを増やすこと」の3点です。
まず、トレスと模写は「写す」行為です。必ず手本があります。ここでは写真やイラストを手本として使用しますが、この写真やイラストは常に自分よりも絵が上手いです(図5)。
![](https://assets.st-note.com/img/1661789775976-O5BXWtzoQI.jpg?width=1200)
図5にも書いていますが、なぜトレス・模写の手本が自分より上手いのかを説明しておきます。
写真は、実際の物体の姿に限りなく近い姿を収めています。そのため、立体としての構造が(ほぼ)正しいです。また、人物写真は、人体の表面に現れるあらゆる構造をほぼ全て踏まえたうえで描写された絵としてみることができます。つまり、「実際的なデッサンや構図がとても上手い」と言うことができます。
イラストは、写真や肉眼などに現れる物体や概念を大なり小なりデフォルメしています。イラストには、写真の等身にイラストとしてのデフォルメをしたり、イラスト特有の虚構を織り交ぜたりするための方法が詰まっています。また、「写したい!」と思うような絵は、「こういう絵を描きたい!」「こういう描き方がしてみたい!」と思った絵です。つまり、「描きたいイラストの方向性において絵が上手い」と言うことができます。
トレスと模写を続けていると、手本無しで絵を描いてみるときに、思ったイメージにより近い絵を描ける確率が高くなります。はじめはトレスをしてバランス感覚を掴み、慣れてきたら模写をしてみるのが良さそうな気がします。模写からしてみるのも全然アリです。楽しく描ける方法で練習してみてください。
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