いっそのこと

化け物のままだったら良かったのかも。
人になりたいと願い、
人として生きたいと願い、
人の皮を被って過ごしてきた。
化け物であることを隠して。
嫌われないように。
仲良く出来るように。
好かれるように。
皆の中に溶け込めるように。
目立たないように。
馴染めるように。
必要とされるように。
頑張って、頑張って、
化け物の部分を殺して。
嘘なのか。ほんとなのか。
偽りの姿で偽りの自分で偽りの世界を。
騙して、騙して、
見付からないように。
化け物だと気付かれないように。
人以上に人らしくして。
隠してきた。
今まで。
ずっと。
何度も人の皮が破けそうになり
化け物の自分が見え隠れして。
何度も繕って
ほんとの自分を沢山殺して。
化け物だとバレないように
人だと思われるように。
もう何年も。何十年もの間。
やっと人の皮が馴染んできた。
そろそろ人になれるのかと
やっと自分も人として生きていけるのだと
そんなことを思い描いた。
そんなことはなかった。
どう頑張ってもどれだけ頑張っても
馴染んできたと思っても
所詮は自分ではない人の皮が疼くのだ。
どんなに望んでも無理だった。
遠く儚い夢だった。
人のフリだけだった。
人にはなれない。
諦めて人の革を破り捨てて
殺されるべきなのかも。
この汚らしい心だけは変えられない。
穢れてるドロドロの腐った心。
どんなに隠そうとしても匂ってくる。
匂いは隠せない。
吐きそうだ。
もう誤魔化せない。
それならば戻るしないのか？
化け物に。
人になりたいと願わなければ
こんな思いもなかっただろう。
何故願ってしまったのか？
何故？化け物として生まれたから。
人として生まれたなら
人になりたいと願うハズはなかった。
化け物は化け物でしかない。
教えられた。
神だったハズのアナタに。
人として生きていかねばならない
神だったアナタに。
アナタは人として生まれたのに
神として生きようとしていた。
私はアナタが羨ましかった。
人として生まれた。
人になれる。
神として生きたいアナタは
私の思いなんか分かるハズもない。
でも私は
人として生きていけるアナタが憎かった。
ズルいと思った。
人なのに…人として生きようとしない
アナタが嫌いだった。
妬ましかった。
だから殺したかった。
でも殺せなかった。
殺せなかったから、
殺して欲しかった。
アナタに殺されたい。
最後の願いも叶うことはない。
生きることも殺されることも
叶わない。
そう。
願うことは呪うことだから。
人になりたかった。
人として君の傍にいたかった。
人として君を抱き締めたかった。
まだ願うのか。
もう終わりたい。
殺されるようにとそれだけ願う。
いつまでもずっとそれだけ願う。
早いとこ終わりにしてくれ。
この悪夢を。
アナタが私を殺してくれたら
それで終わるハズだから。
私の…願いという名の呪いを解いてくれ。
神として生きられない
人としても生きていられない
アナタのその手で。

〈おしまい〉