私はこん

これは我が家によく遊びに来てくれてた
犬のような性格のでも猫らしい性分の
半野良の猫こんちゃんの物語。

大きく伸びをして人工芝に爪を立てる。
ここの人工芝は爪研ぎにいい感じ♪
ガラッ!窓が開いた。
『こん!こんちゃん!来てたの♪』
あらあら。賑やかなのが来たわ。
『お母さん!こんちゃんいるよ』
いつも喜んでくれる。
『こんちゃん!大好き♪』
よく遊んでくれるし私も好きよ♪

私の右目は見えない。
きっと見た目も
ちょっと引くような感じのハズ。
それなのにこの子はいつも私の目なんて
気にしてないみたいに私を撫でてくれる。
道すがらに出会う
子供連れのお母さん達は
『病気を持ってるかもしれないから
 触っちゃ駄目よ!』
と言ってる。
でもこの家の人達はそんなことを
気にしてないようだ。
『こんちゃんは美人だね~♪』
と私を抱き締めてくれる。
暖かい。
ポカポカする。

『うわぁ!こんちゃんが!』
あっ!バレちゃった!
怒られるかな?
『どうしたの?』
『鳥?なんだろ?鳩かな?』
『鳩?』
『食べてる……』
『えっ?ほんとだ!口の回り血だらけ……』
隠しておこっと。
お隣は草がボウボウだから
見付からないよね♪
私は食べ終わった鳩の残骸を
お隣のお庭に隠した♪

あれ?お母さん?何してるの?
『すみません!あの……
 うちの……、あっ!いえ!
 飼ってるんじゃないんですけど……
 うちによく遊びに来る猫が
 お宅のお庭に鳩の残骸を……ええ!
 ほんとにすみません!
 片付けるのに
 お庭に入ってもよろしいでしょうか?
 あっ!ありがとうございます!
 ほんとにすみません!
 失礼します!』
ありゃ?お母さん
軍手してごみ袋持ってお隣のお庭に……。
片付けてる?
え~!あとでまた食べようと思ってたのに!
ちぇっ!
『もぉ~!こんちゃんたら!』
『あちこちで餌もらってるのに
 なんでだろうね?』
『野生の本能?』
『あ~、それじゃ仕方ないか……』
口の回りについた血を
拭こうとしてくれるけど……
いや~ん!押さえ付けられるの嫌い!
スルッと逃げちゃうもん!
『あ~!まだ血がっ!』
へへん!私は自由なのよ♪

なんて……
調子に乗ってたからかしら……。
キキィー!!バンッ!
イタタタ……。
後ろ足が動かない……。
私は車にぶつかって骨を折ってしまった。

気付けばずっとお家の中。
半野良だったのに……。
あちこちのお家に遊びに行って
可愛がって貰ってたのに……。

心配してるかなぁ。
あの人工芝のお家の子……。
元気だといいんだけど……。

結局……。
私はもう外に出ることはなかった。
15年も生きれば大往生!
寿命だった。
最後にあの子に
お別れを言いたかったなぁ。

私の目を気にしないで
優しく抱き上げてくれたあの子に。

《おしまい》

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