誰の為の俺の幸せ?(一年近く前に書いていて下書き保存のままだった)

時々俺は誰かの内側にいるような
そんな気持ちになる。
誰かの思いに取り付かれたように。

解放されたいといつも願っている。
お前は誰だ?
俺の名前を気安く呼ぶ。
『ねぇ、翔』
「なんだ?勝手に俺の中に入るなよ」
『冷たいのね……』
そう言って消えてしまう。
いつもいつも……。

今日はイベントだ。
握手会だ。
沢山のファンの人が俺の為に
集まってくれる。
有り難いことだ。

『ねぇ!私よ!わかるでしょ?』
「えっ?えっと……ごめん!」
『覚えてないの?』
「う、うん……」
不服そうな顔で俺を睨み付けながら
去っていった……。
もしかしたら?
時々俺を呼ぶあの声の主か?
だけど
俺にはわからない。

何度も会いに来てくれる人は
覚えてるつもりだ。
だけどあの人は……
ぼんやりと輪郭がボヤけて
ハッキリしないんだ。
此処にいるのに此処にいないような。
不思議な人だ。

『おい!』
ん?誰だ?
『もうあの人を苦しめないでくれ!』
この声って……俺?
「あの人って?」
『俺を作り出した人だ』
「どういう……?」
『お前のことが大好きなんだ』
!?こっ!告白?
『ちっ!違っ!違う!
 俺がじゃない!あの人がだ!』
「あの人って言われても……」
『わかった!お前はあの人の事なんて
 なんとも思ってないんだな?』
「いや……。だから……」
『じゃあ、俺があの人を幸せにする!
 それでいいだろ?』
「いや!だから
 なんの事だかさっぱり……」
『もう二度と俺とあの人に関わるな!』
「なにがなんだか?」
『わかった!と言えよ!
 そしたら俺はあの人と……』
「……」なんだかわからないけど……
「わかった。幸せになれよ」
『ありがとう!必ず幸せにする!
 必ず幸せになる!じゃ……』
消えた?

……。
なんだったんだ?
夢か?
俺が俺に会いに来て……?
あれっ?なんだったっけ?
幸せに……とか?

う~ん?俺は幸せだけど……。
どういう事なんだろう?

いつもの日々に戻っただけだ。
不思議な声も聞こえなくなった……。

《おしまい》

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