私の願う幸せ?

お母さんはまた寝てる。
いつも寝てる。
寝てるお母さんは幸せそう。
私はお母さんが幸せならそれでいい。
お母さんが大好きだから。
でも最近のお母さんは元気がない。
なんだか寂しそう。
どうしたのかな?
また好きな人が出来たのかな?
お母さんはたぶん恋愛体質なんだと思う。
男の人を好きになると
その人しか見えなくなるのだと。
私は邪魔をしたくない。
お母さんが幸せにならないのなら
私が邪魔なら私はいなくなってもいい。

お母さんが起きてきた。
私は元気よく
「おはよう♪」
と言う。
「おはよ。朝ごはん食べたの?」
「うん。ちゃんと食べたよ。」
お母さんの分も用意してあるけど
きっと食べないよね……。
「そう。いってらっしゃい。」
「いってきま~す♪」
私は元気よく玄関を出て行く。
お母さんの負担になりたくない。
私が寂しいと思ってるとか
お母さんは思いもしないんだろうな。
お母さんにとって私は必要なのかな?
お母さんは……
私と居ても幸せではないのかもしれない。
ほんとは何処かへ
行きたいのかもしれない。
私が居なければ
お母さんは自由なのに……。
私のせいでお母さんは不幸なのかな?
そんなことをずっと考えていた。
だからかな?
こんなことになったのは……。

「お母さん……笑ってる……」
「きっと幸せな夢を見てるんでしょうね」
「幸せな夢?どんな?自分だけが幸せなの?
 私は?一人になっちゃったよ?
 いつ目覚めるかわからない!
 もう目覚めないかもしれない!
 なのに……。なんで?
 そんなに幸せそうに笑ってるの?」
こんなこと言うつもりじゃないのに……。
口をついて出る言葉は
お母さんを責めてしまう言葉ばかり。

いいハズなのに。
お母さんが笑ってる。
お母さんが幸せ。
それならそれでいいのに。
置いていかれた。
やっぱり私は邪魔だったんだ。
そんな気持ちでいっぱいになった。

いくら泣いても変わることない。
だからもう
泣くのはやめる。
進まなきゃ。
私は私の足で!

いつか目覚めるかもしれない
お母さんを支えられるように……。

それまで頑張ろう!
私は不幸じゃない!
私だって幸せだ。
大丈夫。
お母さんは誰も不幸にしてないよ。

ふと聞こえた優しい声……
『ごめんね。ありがとう』
誰だろう?男の人の声だ。
……あれ?
この声……この翔って人の声?
お母さんの荷物を少し整理していて
見付けた沢山のCD……。
聞いてみた。
きっとお母さんはこの人を
好きになっていたんだろう。

なんとなくわかったかも。
お母さんが
どうしてあんなことになったのか。

お母さんはお母さんの世界で
幸せに暮らしてるんだ。
きっと……この翔って人と一緒に。

そうか。
……。
一筋涙が流れる。
わかっていたけど……
もう帰ってこないんだと
確信した。

私は私の幸せの為に
生きていかなきゃいけない。
ううん。
生きていこう。

誰も不幸にならないように。

《おしまい》

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