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かわロボを進化させよ。

はじめに


こんばんわ。
今回ですが、かわロボアドベントカレンダーA面のトリを務めさせていただきます。

今年で28回大会を終え、自分も参加して10年以上になるかわさきロボット競技大会。通称かわロボ

しばらく続くルール未改定に伴ってか、技術は煮詰まりそのレベルは非常に高くなっています。
自分が初参加した時はちゃんと歩いて攻撃できれば御の字といったところでしたが、今やそれは当たり前で、反射神経の限界に近い高度なロボットバトルが繰り広げられています。

強い機体の形もある程度固まってきており、いかに堅実な技術を用いてそれを再現して、操縦練習の末に自分の物にできるかというのがスポーツ的な勝ち方となってきています。

もちろん勝つための競技においてそれは一つの正解と言えます。が、今一度言いたい。

かわロボを進化させよ。と

 


1.かわロボ設計の陳腐化

  まず提言したいのが、かわロボの設計が陳腐化しているという点です。ありていに言えば、みんな同じようなマシンばっか作りやがってつまんねーよ。という事です。
とある技術が出現した当初は色々な派生が生まれますが、次第に効率のいいものだけが残っていき、次第には目新しさが無くなるというのは必ず通る道です。

 陳腐化というと悪口みたいですが、技術の世界にとっては陳腐化する=普及するというのは最高のゴールではあります。陳腐化しなかった技術とはそのまま普及できなかった技術なので。
スマホも出た当初は物珍しいし、指でデカい画面を操作するなんて手の脂が付くから気持ち悪い、みたいに言われていた時もありました。
しかし、その便利さに気づいた愚民はすぐに手のひらを返してジョブスの傀儡になりました。今では珍しくもなんともないこの状況こそが陳腐化なのです。

 もう一つ余計な話をすると、生き物の世界にも同じような現象で「カニ化」と呼ばれる現象があります。皆さんも知っているのは、タラバガニはカニではなくヤドカリの仲間というやつです。
あれは全くの別種でありながら、効率的な進化を遂げた結果似たような姿になる収斂進化という現象です。同じ甲殻類であればクモなどでも確認されているほどのムーブメントになるほどで、甲殻類界のファッションリーダーはカニと言えます。

 と、余計な話を二つしましたが、その二つに共通する点は「生き残りをかけている」ということです。
生き物の世界では当然ですが、ビジネスも生きるか死ぬかの厳しい世界です。それだけの世界で陳腐化したということは、素晴らしい成功です。
自分も起業している身として、自分の考えたビジネスが陳腐化したら最高です。

しかしですよ、逆に生き残りを考えなくてもいい、ただニッチな物を作っていてもいいものづくりとは素晴らしい世界であるとも思います。
それが趣味の世界。今回の話で言えば、かわさきロボットです。

 特にかわさきロボットでは二つの点で陳腐化が進行しやすい環境だと思います。
一つは変わらないルール。もう一つは開かれた情報です。(このアドベントカレンダーのように)
それによって急速な技術の成熟と、進化の陳腐化が起こっていると思います。
それは競技レベルの向上に直結している素晴らしい結果ではありますが、反面進化が収束する方向に向かっていると感じています。

そこで自分は「かわロボにはまだまだ進化の余地がある」と提案する次第です!

2.自分の開発したものとその発想

 どういった進化の方向性があるのかというのは例を挙げてみたほうがわかりやすいと思いましたので、自分の作ったものでいくつか書きます。
ぶっちゃけ自分のマシンがすごいとか強いとは思いませんが、勝手に他人のロボをここに書くのは失礼なので。

1)シャカシャカアーム

 まずはわかりやすくアームの進化の方向性として、タイトル画像にあるマシンのアームになります。

https://akibasanngy.hatenablog.com/entry/50446128

詳しくはリンクのブログを見て貰えれば書いてありますが、対シールドアームに特化したアームになります。
そのメタ性能は凄まじく、特に小型シールドに対しては特攻兵器でした。

シールドの苦手なアーム構成と、それを運用するための機構を頭をひねって考えた結果できたもので、用途に対する完成度が高かったです。
「特定のアーム許さないマン」は素のマシンの相性で決まるじゃんけんゲーを防ぐものとして有用だと思いますし、結構奇抜なものができそうで面白いとも思います。

2)アームワンタッチ換装

 上のアーム案と併せて運用に必要だと思って作ったもので、ワンタッチでアーム換装ができる機構になります。
相手に合わせて特攻アームを作れば最強じゃんというコンセプトですが、ぶっちゃけいつも使い慣れているものが一番っていう感はあります。

 アーム換装自体は結構ありますが、チャレンジとしてはより製品に近い概念のかわロボにしていきたいなという思いがあり、それなら工具レス(動画のものも手で外せる)が基本だと思い作りました。

これは結構色々なアプローチがあるので正解みたいな形状が無くて、個性が出て面白いです。

3)外偏サーキュラー脚


https://akibasanngy.hatenablog.com/entry/2019/10/13/232431

 これはスライダーヘッケン研究の末にできた特殊比率のスライダー脚です。詳しくはURLで。(ただし最後のめんどくさいとこだけ書いてない)

 独自の脚機構はだいたいみんな考えたことがあるような気がしますが、結局現行の脚機構がよくできていることを確認して終わるみたいなのはあるあるだと思います。

脚機構については目的が歩くしかない以上、アームよりもマジョリティから離れる意味は薄いような気もしますが、やはりロマンはあります。
 この脚については独自という程全く新しものではないですが、従来のスライダーヘッケンの良さを継承しつつ、弱点を克服した点が気に入っています。

 スライダーヘッケンはとにかく頑丈でメンテの必要がほぼ無い点がいいなと思って作り始めましたが、最初に動かすことからここまで形にするのに何年もかかりました。
今では脚がデカくなって側板がかさばる以外にはまじで弱点無いと思ってます。
自分の開発した物の中では一番いいものです。

3Dデータは欲しい人がいたら配ってるので連絡ください。

3.開発のヒント

 そんな感じで、機体の構成だけでなく設計手法や要素開発でもまだまだやれることはあるんじゃないかと思います。
ただ、開発するなんて難しそうと思う人向けにヒントみたいなものを書いておきます。
個人的な考え方ですが、参考になるかもしれません。

 まずは目的を定めます。例えばシャカシャカアームなら対シールド・外偏サーキュラ脚ならスライダーヘッケンの弱点の克服みたいな。
 その次にそのための構成要素を考えます。シャカシャカアームなら物理的に存在するアームと相手への接触、外偏サーキュラ脚なら構成するリンクの役割などを分解して理解します。

その次に来るのが発想で、自分の経験や既にあるものを参考にするなどしてどう解決していくかをフレキシブルに模索します。
そうすることで、理論立てて新しいものを生み出せる気がしています。

 例として、新しい椅子を開発するとします。
まず椅子の目的とはなんでしょう。座ること?元をたどれば「人間が楽な姿勢でいること」です。
なるほどそのために腰より低い位置に座面があり、柔らかいクッションや背もたれがついています。納得です。
 でも、そのための構成要素をよくよく考えてみると、椅子ではなく人間の体構造が根本にあります。骨があり、筋肉があり、脳で司令を出しています。立ったままでいると疲労が溜まるので、座るための器具を使うことは理にかなっています。
ただそうすると別のアプローチもありで、例えば楽な姿勢でいられるなら座っていなくてもよくて、立ったまま体を固定できる外骨格でもいいはずですし、なんなら座らなくても疲れを感じなくなる薬でもいいはずです。
物としては全然違くとも、課題解決とは色々な視点があります。

 まぁそこまでぶっとばなくてもいいですし、そんなものたとえ椅子を作っている会社で提案しても何言ってんだこいつで終わるとはおもいますが、科学の進化なんてそんなもんです。

 一発で新しいものを思いつかなくても、今ある情報を様々に加工して発想していくことで誰でもできることだと思います。

4.来てほしい未来

 かわロボをやっている理由は人それぞれですが、自分のことを言えば設計が楽しくてやっています。
仕様に文句を言ってくる客もいなく、工数の削減を迫ってくる現場もいません。全部自分でやるからこそ一番楽しいものづくりができます。
そういった自分としては、かわロボに期待する役割とはまさにものづくりの登龍門であり、技術者の育成です。
別に育成されようと思っていなくても、設計・製作・エンドユーザーまで自分ひとりで経験している人材とは結構貴重です。
自分はかわロボをやっていたおかげで設計者になれたので、とても感謝しています。

 そんな自分としては、かわロボをやる人の中でもおもしろ設計を楽しむ人が増えてくれたらなと思っています。
入りとして人の機体を真似るのが一番いいと思いますが、ゴールとしては独自の思想を持った技術者になってくれたら素晴らしいと思っています。

 それこそ観測範囲内ではありますが、特別戦に出場したことのある人は面白い技術者になっている率が高い気はします。最近は本大会の特別戦も無いですが、そういった面白さを評価するシステムがあったほうが登龍門的にはいい役割になるんではないかと。

 ただ、かわロボというコミュニティは誰かに誘導されるでもなく自然といまみたいな形になってきたので、また自然にそういうおもしろ設計好きが目に見えてくるような風土が出来上がってくるといいなと思っています。

5.おわりに

 ここまでご覧いただきありがとうございました。
アドベントカレンダーに登録した時の記事の内容を「リア充を破壊する方法」と書いてあったのを真に受けた人がいましたが、そんなわけないだろjk
 一番最初はクリスマスにちなんで「リア充を呪う方法」にしようかと思って呪いについて調べていたのですが、どうも呪いと一口に言っても種類が様々あり、簡単に定義するなら"呪う対象に気づかれないように直接手を出さずに相手の体調や精神などに原因不明のダメージを与える行為"みたいな感じだと思います。
その観点で言うと現代的な呪いとは丑の刻参り的な行為というよりは、SNSで捨て垢で攻撃したり、SEの書いたコードにひっそり全角スペースを入れておいたり、未開封のアクリサンデーの蓋を少し空けておいたりといった感じになると思います。
 そう考えると最新版にモダナイゼーションされた呪いとは想像より遥かに実用的なものになってしまう可能性があり、そちらはやめました。
何より自分に使われたら困ります。

 そもそも他人の幸せを破壊するという行為がドウトクテキに間違っていますので、思ってもやっちゃいけませんよ。

そんなわけで思い直した結果、せっかく最終日に記事を上げるならかわロボ の未来的な内容にしたいなと思ってこういう感じになりました。
気持ち的にはリア充を呪っても良かったんですが、実際問題クリスマスベイビーは現在の少子化に向かっている社会において貴重な財産なので。
エンジニアとしては科学という財産を後世に残していくことで対抗したいと思いました。

 ただそうは書きましたが、全員にこういうチャレンジをしてほしいと思っているわけではなく、自分が本当に作りたいものが新しいものであるなら、チャレンジして欲しいなと思います。
今まで通り強いロボット作って勝つでもいいし、全く新しいものを作って失敗してもいいし。
それこそ生き残りをかけて必死にならなくてもいいものづくりなので。

まずもって、このかわロボという文化が続くことを願います。

♰エイメン♰

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