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Huret Jubilee RDのモデル変遷

初めに

Jubileeは1972年に発表されたHuret社のフラッグシップモデルのディレイラー。
それまでは、スチール製のLuxeがフラッグシップであったが、軽合金製のJubileeがそれに取って変わった。
1972年から80年代半ばまで製造されたが、少しづつ改良を重ねている。分類のためにこのNoteにまとめてみる。

1972年に発表されたモデル

初期のディレイラーインストラクションより
当初発表されたのは#2200(ショートケージ)と#2248(ロングケージ)の2種だと思われる。フロントディレイラーとwレバーは共通のもの。
ディレイラーハンガーの付いた#2200と#2248の図は以降のカタログには登場しない。

1972 インストラクション

1973年のカタログより

1973年のカタログには、6種の型番が記載されている。

#2200 : アッパーボディ短い、ハンガーあり、ショートケージ
#2252 : アッパーボディ長い、ユーレーエンド対応、ショートケージ
#2240 : アッパーボディ長い、カンパエンド対応、ショートケージ
#2248 : #2200のロングケージ版
#2253 : #2252のロングケージ版
#2254 : #2240のロングケージ版

とても興味深いのが#2252と#2240。#2240はカンパエンド用の爪がボディから生えているが、#2252はこの爪を削ったものになる(細かいこと言うと、#2252はパンタ側の肉がより残っている。)。どちらも、#2200とはアッパーボディの形状が違い、ピボットボルト中心からパンタ支点までの距離が長く、故に最大歯数大に寄与している。

また、ピボットボルトの長さにも違いがあり、#2200は薄いハンガーに取り付けられるため、ねじ切り部が短く19mm。#2240用は22mmである。
#2252は手元にないが、#2240と同じボルトを使用すると思われる。

後述する80年代初頭にはボディが1つに統一されるのだが、#2252がベースとなるのはなかなか面白い。

左#2200, 右#2240
1973カタログより

なお、この1973年カタログではユーレーエンドに#2200が直付されている。

1974年のカタログより

1974年のカタログも1973年と違いはなし。Selection Tricolore Courseのマークが付いた。

1976年のカタログより

1975年はカタログが無く、1976年カタログから。
この年のモデルには2つの変化がある。
1. リターンスプリング形状:手で簡単に外せるようになった。メンテナンス性向上?
2. ケージの形状:いわゆる三又ケージが追加された。

1977年のカタログより

1枚カタログだが、Jubileeについては6種全てが掲載されている。
ロングは#2248が描かれている。

1978年のカタログより

このカタログ、#2200とあるが#2252っぽいものが描かれている。
どうも型番 は#2200と#2252の区別が曖昧になってきて、最終的には#2200に統一される前兆の様子。
分解図の方は、ボディは#2200型、1976年のものそのまま、かと思ったが、ジョッキープーリーシャフトが#2156TLに変更されている。
ピボットボルトは#2228のまま。

1978カタログより
1978カタログ分解図

1979年のカタログより

1979年モデルは大きな変化があった。
ー アダプタが付いた。
ー ピボットボルトの変更。(#2228 => #2270)
#この#2270ボルトが曲者で、ボディとの接触径が11.5mmあり、ボディ側も穴径が大きい。これは#2270が段付きになっているためであるのだが、ボディ厚に合わせてあり、アダプタを押さえつけることになるため、アレレな構造になっている。ちなみに、カタログには2種のボディが描かれており、#2252ベース、#2200ベース。これらの#2200ベースのポリッシュボディの1979年モデルは手元にあり、実在する。
これにより、1978-1979には#2200型と#2252型の2種があったのではないかと推測される。

1979年カタログより#2200ベースのボディ
左#2270ボルト、右#2228ボルト

1980年カタログより

1979年と同じものだと思われるが、"satin finish"とあるので、アルマイトボディなのだろう。

しかし、最大歯数の説明に24 or 28とあるのが奇妙。アルマイトされた#2270ピボットボルト対応の#2200ボディってあり得るか疑問。1979-1982年はJubilee暗黒時代かも。

なお、アダプタが標準的につくモデルはパンタ支点側のボディがアダプタの厚みを残して削られている。

1981年カタログより

1981年から違いはないと思われる。
このカタログまで最大歯数24 or 28の表記があるので、この頃まで#2200型のモデルが販売されていたのではないだろうか。なお、アルマイトがかかった#2200は見た事ないので、1979年型(ポリッシュ)の在庫が販売されていたのかも。

1983年カタログより

1982年はカタログにJubilee不在。1984年カタログも1983年と同じもののため、割愛。
このカタログにあるJubileeがHuret Jubileeが最終モデルと考えられる。
このモデルの特徴は
- 穴あきケージかつ、Successと共有しているため、リターンスプリング、バネ止めの形状が異なる。
- ロングケージはテンションスプリングカバーなし。
- テンションスプリングにカバーが付いた。
- #2252型ボディにアダプタ、#2276のピボットボルトが採用されている。
- 最大歯数は28になっているので、#2252型ボディに絞られたのだろう。
- #2276ボルトは10mm径なので、ボディは先祖返り。
- ロングケージは#2253の型番と判明。

SACHS Jubilee

最終型からロゴが変わっただけでなく、上ボディのケーブルアウター受けの形状が異なっており、型が異なると思われる。

まとめ

1972年から1984年までHuret Jubileeであり、この間に
- 上ボディ形状(8種)
- アルマイト(80年からアルマイト仕上げ)
- リターンスプリング(2種)
- テンションスプリング(ショート用2種、ロング用1種)
- プーリーケージ形状(4種、初期、三又、穴あき、ロング)
- ピボットボルト(4種、#2228, #2228ショート、#2270, #2276)
- ジョッキープーリーシャフト(2種、#2156L, #2156TL)
に変化があることがわかっている。上記に挙げたカタログに上げたもので大体の年代は推定できると思われる。

結局、何種類あるの?かというと
初期型#2200, #2252, #2240
2次型#2200, #2252, #2240
1979型#2200, #2252(ポリッシュボディ)
1980型#2200(#2252型アルマイトボディ)
1983型#2200(#2252型アルマイトボディ)+穴あきケージ等の最終版
ショートケージで10種類あると思われる。

蛇足

・#2200はよく見つかるが、カンパエンドではアダプタを使っても、エンドとボディが干渉するのでどちらかを削らないと使えない。
・#2240はカンパエンドに使えるが、ネジを裏止めしないといけないので、1段分ほど無駄になる。120mmエンドだと5段に。
・#2200 > #2240 > #2252の順でよく見かける。
・#2252ボディの初期型はレア。やや区別つきにくいためもあり。
・カンパエンドの完成車用に#2240は大量に生産されているので、それほどレアではない。1975年までの初期型もそれなりに存在する。
・#2200と#2252の関係は、Luxeにおけるコンペティションとツーリングの関係になるが、Jubileeのカタログではそう明記されているわけではない。なお、カタログ上は最大歯数、キャパとも#2200と#2240は同じになっている。
・#2200のロングケージ版#2248が公式に存在することにより、#2200と#2252の違いはエンドへの取り付けの違いと解釈できるのではないか?というのが自論。
・日焼け?のためか、ロゴ部分が赤茶っぽくなっている個体も多い。
・謎の#2270ボルトボディだが、1979年から1982年までの可能性がある。ポリッシュ(#2200型)とアルマイト(#2252型)の実物が手元にあるので、少なくとも1979-1980年は作られていたのではないか?
・とすると、1979年モデルはポリッシュで#2200型、#2252型があり、1980年モデルはアルマイトで#2252型のみになったのかもしれない。(アルマイトされた#2200型は見た事がない。)
・上記では、ショートケージの話ばかりしているが、ロングケージモデルは最後まで生き残り、バネ、ケージの部品は最初期から変化しない。

写真

最初期#2200と最後期#2200

最初期#2200手前、最後期#2200奥
最初期#2200手前、最後期#2200奥
最初期#2200奥、最後期#2200手前

以上

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