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STAR LIGHT DASH!!まとめ

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ほろ苦系キラキラ青春群像小説『STAR LIGHT DASH!!』のまとめマガジン。 陸上一筋で走ってきた主人公・谷川俊平と、彼が高校3年最後の夏に出会った仲間たちとの日々を綴っ…
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#音楽

青春小説「STAR LIGHT DASH!!」8-14

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第8レース 第13組 翼なんてなくたって 第8レース 第14組 brillante cielo 世界の光に手が届く存在だと思っていた。  自分にはその力があって、その資格を持った人間だと疑わなかった。  聴いた音は鮮やかな色彩を放って、いつでも拓海の視界を覆いつくす。  耳で感じたものがすべて視覚化される。  その才能は演奏家として歩む自分にはとても相性のいいものだった。  自分が

青春小説「STAR LIGHT DASH!!」8-13

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第8レース 第12組 その背中を追う者は 第8レース 第13組 翼なんてなくたって「月代さんの師匠だったんすか」  賢吾がハンバーガーをおごってくれたので、俊平はモグモグした後、そう返した。  向かいの席に座って、ご機嫌斜めの表情の30代後半か少し上くらいに見える外国人の名前は、エドワード・クロムウェル。  クラシック界ではなかなかの有名人らしい。  賢吾はサングラスを外して、やれや

青春小説「STAR LIGHT DASH!!」8-9

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第8レース 第8組 夏の香りが消える前に 第8レース 第9組 世界(青空)の共有 拓海はじゃじゃ馬演奏を聴きながら、うーんと首を傾げた。  自分の作った曲なのもあって、難易度高めの楽曲であることは認識しているが、ここまでぐちゃぐちゃになるとは思ってもいなかった。  さすがに自分の耳が悲鳴を上げ始めたので、手を叩いて演奏を止めさせた。  演奏が止んで、5人とも失笑を漏らして、各々視線を

青春小説「STAR LIGHT DASH!!」8-7

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第8レース 第6組 音のさざなみ 第8レース 第7組 届かない夢の果て 震える手でピアノを弾く。  ああ、大丈夫だ。自分はまだピアノを奏でられる。  世界を描き出せる。自分にはまだピアノが弾ける。  よかった。よかった。よかった。  弾いているうちに涙が込み上げてきた。  けれど、とある1節に差し掛かった瞬間、拓海の右手は言うことを利かず、音が乱れた。  見えていた青空がそこで霧散す

青春小説「STAR LIGHT DASH!!」6-5

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第6レース 第4組 Basking in the sun 第6レース 第5組 Minute Waltz  奈緒子の行きたかったカフェで時間を潰し、少し早めに会場に入った。  杖と鞄を持ってやり、俊平は先に階段を降りる。  地下への狭い階段を、奈緒子は手すりを利用して、器用にケンケンで下りてくる。 「大丈夫?」 「慣れたものなので、お気になさらずです☆」  お茶目なトーンでそう言い、最