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STAR LIGHT DASH!!まとめ

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ほろ苦系キラキラ青春群像小説『STAR LIGHT DASH!!』のまとめマガジン。 陸上一筋で走ってきた主人公・谷川俊平と、彼が高校3年最後の夏に出会った仲間たちとの日々を綴っ…
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青春小説「STAR LIGHT DASH!!」7-4

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第7レース 第3組 叶わない約束 第7レース 第4組 星空アマレッティ  一昨年の俊平の全国大会の日。その日は藤波高校の文化祭の日でもあった。 『俊平があまりにごり押すから買ってきてやったよ。これはゆーかちゃんの分。あと、しゅんぺーの分。せっかくだし、ゆーかちゃんから渡してやってよ』  後夜祭の片づけを終えて遅い帰宅になったにも関わらず、和斗がわざわざ持ってきてくれたクッキー。  包

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-10

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第9組 正直者のジレンマ 第4レース 第10組 せっかちなantinomy 「あー、ちゃんと来たね。いい子だ」  電車、バスと乗り継いでたどり着いた、オープンテラスのあるカフェ。  横髪を三つ編みにして後ろで結わえ、カフェ用のエプロンを着けた舞先生が笑顔で迎えてくれた。  電車に乗った後は、世界陸上と甲子園の話をしながらここまでやってきた。 「……来なかったら空席できるで

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-9

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第8組 星屑チケット 第4レース 第9組 正直者のジレンマ  あれはいつの夕暮れだったろうか。  逢沢先生に強制的に部活休みを言い渡された冬の日だった気がする。 『受験生だぞー』  邑香はそう言いながらも、出掛けないかと俊平が誘うと嬉しそうに笑った。  この子がこんなに可愛く笑うこと。みんなは知らない。  表に出すのが苦手な彼女の、いろんな表情を、みんなは知らない。  独

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-8

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第7組 こぼれ落ちた雫 第4レース 第8組 星屑チケット 『藤高の子? 大丈夫?』  今年の1学期の始業式の日、具合が悪くなって道端でうずくまっていると、傍に停まった車からそう声を掛けられた。  顔を上げようとしてまたくらりと視界がぐらつく。 『わー、無理しなくていい。そのまましゃがんでて。えっと……どうしようかな』 『舞、学校まで乗せてこうか?』  運転席からそんな声。

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-7

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第6組 Miss you―不適格な存在― 第4レース 第7組 こぼれ落ちた雫  俊平は湯船に浸かってぼーっと浴室の天井を見上げていた。  過ぎるのは夕方の邑香とのやり取り。  拒絶はされていない。でも、困った顔をされる。どうすればいいのか、やっぱり分からない。  ずるずると姿勢を崩し、お湯に顔を半分浸けた状態で息を吐き出す。ボコボコと音を立て、水面に泡ができては消える。

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-6

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第5組 キミは星だから 第4レース 第6組 Miss you―不適格な存在―  ――キミを守れなかったのはあたしだ。  結果に結びつかないことから生じた彼の焦りを、自分はきちんと認識していたのに、彼のことを守ることができなかった。  フォームが崩れていること。調子を崩していること。分かっていたのに、きちんと止められなかった。  松葉杖をつき、自身への憤りを抑えきれない彼が

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-5

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第4組 剥がれてゆく翼(ダストテイル) 第4レース 第5組 キミは星だから 『退屈じゃない?』  中学1年の冬。俊平の練習風景を眺めていたら、そう聞かれたことがあった。  寒い中、所属していない部活の居残り練習を見守っている女子生徒なんて、今考えてみても、普通ではないように思う。  しかし、彼も問うなら問うで、もっと早くに問えばいいものを、半年以上それが当たり前で過ごして

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-4

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第3組 キミを映す鏡 第4レース 第4組 剥がれてゆく翼(ダストテイル)  高校入学後、すぐに陸上部に入部した。  外部活の負荷に耐えられるか不安があって、中学の頃はできなかったことのひとつ。  かかりつけの先生からも、少しずつ負荷を強くしていっても大丈夫だろうとお墨付きをもらえた。 『邑香はシュンくんのおかげで随分変わったね』  入部の話を一番に相談したら、姉がそう言っ

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-3

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第2組 キミノオト ハ ボクノオト 第4レース 第3組 キミを映す鏡 『え? スカウト断ったの?』  中学3年秋、俊平たちは進路決定の時期だった。  1人残される邑香は、2人の進路の話を寂しい気持ちで聞いていたのだが、俊平が意外なことを言ったので、驚いて声に出してしまった。  いつもの3人での帰り道で、俊平が藤波高校に進むと話してくれたのだった。  2人の間ではもう話が終

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-2

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第4レース 第1組 はじまりのストップウォッチ 第4レース 第2組 キミノオト ハ ボクノオト 『そんなこと言われても、あたし、その先輩と話したこともないです』  人通りの少ない階段まで呼び出され、ついていくと、先輩の女子数名に囲まれた。  刺さるような圧力を感じたものの、邑香は声を震わせることなく、そう言い返す。制服の袖をきゅっと握り締めて震えそうになる指先を隠した。  彼女たちが

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」4-1

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第3レース 第10組 遠い夏の日 第4レース 第1組 はじまりのストップウォッチ 『……おそとでたいなぁ』  幼い頃、よく入院をしていた。  窓の外を眺めて、ぽつりと呟くだけ。  出たいと思ったって出られない。倒れてしまうから出てはいけない。それをきちんと理解はしていた。  邑香には生まれてからずっと制限があった。  同じ年の子たちがしていることの半分も楽しむことができない。  小学

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」3-10

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第3レース 第9組 ESCORT FRIEND 第3レース 第10組 遠い夏の日  高校1年晩夏。 『好き、なので、付き合って……くださぃ……』  秋祭りの最中、突然いなくなった和斗を探したが見つからず、具合の悪くなった彼女をベンチに休ませて、電話を掛けようとした。  その時、彼女が俊平の服の裾を掴んで消え入りそうな声でそう言った。服の裾を掴んでいる彼女の手は震えていた。  いつも堂

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」3-9

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第3レース 第8組 誰よりも優しいあなたへ 第3レース 第9組 ESCORT FRIEND  普段仲良くしているノリのいいタイプとは異なるスローテンポの、ひよりの間が好きだった。  できるのに前にでしゃばることを嫌うひよりは、見ていてたまにもどかしい。  ひよりと見上げる空はいつだって綺麗で、ひよりと並んで料理をするのはいつだって楽しい。  部活のない日に2人で寄り道をして食べるハン

連載小説「STAR LIGHT DASH!!」3-8

インデックスページ 連載小説「STAR LIGHT DASH!!」 PREV STORY 第3レース 第7組 すり硝子の向こう側 第3レース 第8組 誰よりも優しいあなたへ 『ひより、料理教えてくれない?』  良くも悪くも注目を浴びやすい綾と、つかず離れず、親密ではないけれど、たまに話す関係が続いていた中学3年の初夏。彼女からそう声を掛けられた。  困っている様子の彼女を放っておけなくて、そのお願いを引き受けてから、もう3年が経つ。  料理を教えに、瀬能家に行って、弟の麻