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どらねこのおくりもの

*この物語はフィクションです

登場人物 

 ・  ボク(ロビ)  ・  きよみちゃん ・  ジャビン ・  スー太 ・  デキ ・  どらねこ 


 小学校を卒業して、ボクは裏山近くにある中学校へ通うことになった。みんなで通っていた小学校は裏山をはさんで反対側にあった。その中学校へはデキ以外はみんな通った。デキは東京にある私立の中学校へ行った。市内の小学校を卒業した人たちのほとんどがこの中学校へ通うため、クラスの数は12をこし、ジャビン、スー太、ボク、きよみちゃんはそれぞれ別々のクラスとなり、結局3年間、4人は誰とも一緒のクラスになることはなかった。

 みんな、中学校へ入ってからガラリと変わった。いつもなら学校が終わって空き地で野球やサッカーをして遊んでいたのに、中学生になってからはみんな部活をはじめた。だから放課後は部活の練習で遊ぶ時間もタイミングもなかった。このことで、4人が顔をあわす機会が減り、しだいに関係は疎遠になっていった。一緒にいっぱい冒険した仲間なのに。

この中学校では、全員入部の校則があって、4人ともそれぞれ部活をしていた。ジャビンは持ち前の体格と力の強さを体育の時間に、柔道部の顧問の先生から認められ、柔道部へ誘われた。しかし、小学校の頃から大好きだった野球から離れられず、その誘いを断った。そしてジャビンは野球部へ入部した。彼はけんかよりも野球が大好きだった。3年生のころには、キャプテンをつとめ、4番バッターとして、チームを全国大会に導いた。

スー太は、相変わらず誰かのバックにいることから離れられなかった。自分から進んで何かをするということが苦手だったのかもしれない。スー太は、みんなが入るテニス部へ入り、多数の中の1人として、毎日を過ごした。スー太は毎日を生きることで精いっぱいな感じに見えた。人間関係でうまくいかなかったらしい。  


きよみちゃんは吹奏楽部でフルートを吹いていた。周囲の男の子からは絶大な人気を得ていて、女の子ともすごく仲がよかった。当然ボクが入るスペースはどこにもなかった。大人になっていくきよみちゃんをボクはうらやましく遠くからみていた。ボクのことを忘れてしまったのかと思うくらい、ボクときよみちゃんとの間には大きな距離ができていた。  

ボクはというと、スポーツができない上に何もとりえもなかったので、園芸部へ入った。毎日放課後に学校中の花に水やりをしていた。部員はたった3人だったので、いつも家に帰るのは夜だった。いつからだったろう。昔みたいにどらねこと話をしなくなったのは。思春期に入り、パパともママとも、いや、父さんとも母さんともあまり口をきかなくなった。


家族そろってどこかへ行くこともなくなった。食事のときは、そこに会話はなく、ただ単調に箸がすすむだけだった。それはまるで機械のようでそんな機械的な作業だけが、無言のうちに続いていた。「ごちそうさま!!」と言っても、どらねこですら反応してくれなくなった。いつからか、どらねことの間にも距離ができはじめていた。どらねこはボクに遠慮しているように感じた。

高校生のころだっただろうか。部屋を別々にしたのは。ボクが原因だった。その日、定期試験の勉強のためどらねこの生活する音がむしょうに邪魔でムシャクシャしていた。マンガのページをめくる音、歩く音、おかしを食べる音、部屋を出入りする音、すべてが邪魔だった。小学生のころは、あれだけ泣きながら頼っていたが、高校生になったボクは、大半のことが自分でできるようになっていた。前みたいに泣くことなんてほとんどなくなっていた。今では、どらねこがいなくても困ることはなくなっている。

定期試験の前日の夜、ボクが勉強しているそばでどらねこがマンガを読んで笑っていた。その声がうるさくて、テストを前日に控えたボクはとうとうどらねこに言ってしまった。「もう!うるさい!!ボクは明日大事なテストがあるんだ!!邪魔だからでてってよどらねこ!!」そう言い放ったとき、一瞬空気が止まったが、「ごめんね。ロビくん。。」と言って肩を落としながら外へ出て行った。どらねこが読んでいたマンガはその場に置いてあった。 

ボクの時間が止まったのは試験最終日の帰り道だった。秋の少し冷たいはずの風と夕日が妙につりあっていた、そんな日だった。急にボクの携帯が鳴った。母さんからだ。テストが終わって早々できを電話で聞くつもりだろっと内心思っていた。最初は電話にでないつもりでいたが、何度も何度もかかってくるので不思議に思ってでてみた。

電話口で母さんが泣いている。「どうしたの?」とボクが聞くと、言葉にならないような声で、「どらちゃんが・・・ど・・ら・・・・ちゃ・・んが・・」はじめは何を言っているのかわからなかった。だが、「どら・・・・ちゃ・・んが・・車と事故に・・・あ・・って、ご・・・・動かな・・くなっちゃ・・た・・。」

この言葉を聞いた瞬間、ボクは携帯を片手に我を忘れて走りだした。電話口でその場所をきき、どらねこがまだそこにいることを確認しながら無心で走った。そこはジャビンの家の近くだった。現場についた瞬間、頭が真っ白になった。軽自動車の横に、青い物体が横たわっていた。

「どらねこー!!」ボクは一目散に駆け寄った。「どらねこ!!起きてよ!!!」どらねこは完全に体の機能が停止していた。どうやら事故の衝撃で部品の一部が飛び、内部の機能もおかしくなり、動かなくなってしまったらしい。次の瞬間、ボクは心から後悔し、泣きじゃくった。

どらねこが横たわっているすぐそばに、どら焼きが2袋あった。いつもどらねこは、自分が

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