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2/2 日記

2/2 13時55分、入籍した。

目黒区役所に手を繋いで婚姻届を出しに行った。家を出る前にもう一回プロポーズしてもらった。よく晴れて空が青かったので、「来年も空が綺麗だといいね」と話した。

婚姻届を出すときに受付書類を書いた。書類をただ出すだけのもの、と思っていたが、少し緊張して不安になった。鉛筆の音が人生が決まっていく音だ、と感じた。

「おめでとうございます」という受付の言葉で、じんわりと温かくなって、すっかり満たされた気分になってしまった。

何も変わっていないのだが、紙を出しただけで、今までの自分と連続性があるようでないような、どこか不思議な気持ちになった。捉えがたいが、代え難いものを得たような気持ちになった。

うっとりしながら駅に向かうと、お世話になった遠縁の親戚から電話が来ていたので、電話をかけてたった今入籍した旨を伝えた。

「あちらのご両親がとても良い方と聞いてるよ」と言われ、相手の両親の存在がありがたく、素敵に思っていたので、心からうなづいた。

電話を終えると予約していたブライダルジュエリー店へ、日比谷線で向かった。
恵比寿、六本木、銀座と駅が移り変わるに連れ、それらの駅に勤めていた頃のことを思い出した。当時は頼れる家も親族もおらず、毎晩泣き暮らしていた。

銀座のオーダーメイドリングのお店で、指輪のデザインを描き起こしてもらった。なかなか似合うデザインが見つからなかった矢先に衝動的に予約したが、店員が心からジュエリーが好きなことが伝わる、あたたかい店だった。
相手が節のしっかりした大きな手なので、太めのボリュームのあるデザインにしてもらった。婚約指輪は私の趣味に合わせてもらったが、結婚指輪は相手の趣味で選びたいと思う。双子のダイヤ、お互いの趣味の刻印…考えることはいっぱいあったが、ひとつひとつにこやかにデザインに書き起こしていくデザイナーやアドバイザーが輝いて見えた。 指輪のストーリーを作っているのだな、と思えた。

出てきたコーヒーが美味しく、ウェッジウッドの茶器がメルヘンな店内に似合っていた。

ほぼデザインが本決まりになったが、やはり決めるには早く感じ、少し考えたいと言い、店を出た。店を出るときに指輪の職人がにこやかに微笑んでくれた。

婚約指輪を買ったお気に入りの宝飾店に行き、指輪のクリーニングに出している間、結婚指輪のショーウィンドウを覗いた。中には2000万の指輪などがあり、目を剥いた。
比較的世間の平均予算の指輪を見ても、プラチナの質が高く、艶が美しく見えた。
「はめごこちがとてもよい」と言って婚約指輪を買った店だったので、早速結婚指輪を試着させてもらったが、とてもよく手に馴染み、先ほど書き起こしたデザインを脳裏に浮かべても、心が揺らいだ。デザインを取るか、機能を取るか、悩ましい。クリーニングから帰ってきた婚約指輪は、やたらときらめいて、買った日のことを思い出させた。

指輪に悩んでいるうちに時間になったので、恵比寿へ向かった。
このところプロポーズや顔合わせなどで、良いフレンチに行き過ぎていたので、肩肘張らずに気軽に食事できる、ちょっとだけ良いレストランを予約していた。店はお互い勤めていた恵比寿ガーデンプレイスの中にあった。道中、思い出話で盛り上がった。

店は雰囲気が良く、苺のシャンパンとメルローに酔った。シーズナルコース、前菜の帆立と文旦ソースキヌア添え、スープ、180gのカルフォルニアカットのプライムリブの肉汁で口の中がいっぱいになった。「これからも美味しいものたくさん食べようね」と話した。
デザートが運ばれてくるときに、お店の人がハッピーバースデーの曲に合わせて「Happy marriage to you」と歌ってくれたが、しばらく気付かず、二人でFacebookを見ていたため、たいへん驚いた。イングリッシュトライフルに花火が散っていた。お祝いしてもらえたことがとても嬉しく、思い出になった。

お腹いっぱいになった後歩くのが辛く、ロブションの前のベンチで休んだ。冷えたのでウェスティンホテルのロビーでくつろいで、ケーキのショーウィンドウを覗いて帰った。

あそこのランチがお気に入りだとか、どこどこで忘年会に行っただとか、初デートのときにどうとか、ガーデンプレイスは話題が尽きなかった。

地面のタイルの同じ色のところだけ歩いたり、ひび割れた地面を飛んだりしてだらだら家に帰った。楽しかったね、と話した。

終わり。

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