『Shibuya Sillie Street』-17

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 サクラバと先生が言ったのは僕のこと。

 桜庭良平、25歳、水瓶座のA型。昼間はIT企業の総務、夜はここでアルバイト。そして、尻子玉が半分ない男。
 先生曰く、ゆえに一般的なヒトと感覚が違うんだと。僕が痛みに鈍感かつ、見た目に反して身体がやたら丈夫なことはそれのせいらしい。ついついぼーっとしてしまうのは、尻子玉は関係ないそうだ。
 僕がいつ、どうやって、尻子玉を、しかも半分だけ抜かれたのかはわからない。先生曰く、尻子玉を抜くエイリアンは上等なスリのようなもので、抜かれたほうは気づかないらしい。尻子玉がなんなのかは、僕もよくわからないのだけど、エイリアンは尻子玉を抜き、場合によっては食べているらしい。僕は自分の尻子玉を見たことはないけど、とにかく体内に半分しかなくて、そして抜かれた半分は食べられてしまったらしい。食べられた、というのもあくまで口に入れていたっていうだけの話で、もしかしたら口の中にいれて転送しているのかもしれないけど。そもそも『CPA』がどんな形の生物なのか、口があるのか、僕は知らない。見たこともないし。とにかく地球上、太陽系に僕の半分の尻子玉は存在しない。

 でも、だからって困ったことはないんだよね。むしろそのおかげで、このバイトにありつけているせいで、ぼーっとしているだけでお金がもらえる。昼間の仕事を辞めてもいいくらい夜のバイトだけで稼げている。昼の仕事を辞めないのは、僕がぼーっとしながら仕事をしていても、クビにならないし、やっぱりなんていうのかな、社会的信用みたいのは会社員であるほうが優遇されているから。ただそれだけ。
 それに先生に説明されて以来、尻子玉云々でこういった事件が起きたのは今日が初めてだし。普通にしてたほうじゃいいじゃん。

 正直、ウソだと思ってたんだよね、尻子玉の話。お金くれるから黙ってたけど。

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