『Shibu Sill Stre』-11

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 なんだか眩しくて薄目をあけると、視線の先に照明があった。
 ライブとかのじゃなく、ごく普通の。蛍光灯だか、LEDだかの家庭の天井にあるやつ。あれ、トイレこんな照明だったかな。いや、トイレじゃない。
 俺、仰向けだ。なんで、どうして? トイレでひっくり返ったのか? と起き上がろうとしても起き上がれない。仕方なく眼球だけで、周囲を見回した。知らない場所だった。

 座って背を向けている人、知らない女、知らない男。見えない場所にもう1人いるっぽい気配がする。起き上がれない俺は、眼球だけをキョロキョロ動かすしかなかった。目がまわりそうだ。
「お、気がついたか」
 知った声だ。箱友達というか、現場でよく会うことで顔見知りになって話すようになったセイジの声だった。見えないところにいるのがセイジか。
「トイレで倒れてたんだ、声は出せるか?」
 言われてみて、声を出そうとしたがひゅーひゅー喉がなるだけで声にならなかった。なんだこれ。
「ああ、無理すんな。いまのところ生命に別状はない。ここの先生が助けてくれたんだ」
 背を向けていた人が回転椅子ごとくるりとこちらを向いて、小さく会釈した。
「ここはー、なんつーか先生の研究所とか養成所っていうか。お弟子さんへの指導をする部屋で、そこにいるのはお弟子さんと患者さん役の方」
 女のほうが会釈をし、男のほうはぼーっと突っ立ったままだった。

 いまのところ生命に別状はない。いまのところ?
 なんだ俺に何が起きたんだろう。風邪とかそういうんじゃないのか、いまのところっていうのは。なのに病院ではないのはどういうことなんだろう? 
 聞きたいことがたくさんあるのに、俺は声ひとつあげられなかった。

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