『Shibu Silli Stree』-13

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 倒れて、助かった。俺がわかることはただそれだけ。

 痛いとか苦しいとかは無いんだが、なんでか身体が動かない。そして声がでない。暑くも、寒くもないが、ただただ身体が重い。自分の意志で動かせない。そういう感じ。なにが起きているのかはサッパリわからない。
 倒れる前、倒れる前は箱にいて、トイレで寒がってて、そうだ寒かったんだ。けどいまは寒くない。たしかずぶ濡れになったけど、服は濡れているんだろうか? それすらわからない。すべての感覚が失われているような気がする。なんだろうこれ。
「あのな、お前。抜かれちまったんだよ……その、あれを」
 セイジの声がする。俺に話しかけているようだ。あれってなんだよ。声は出ない。
「あれ……じゃわかんねぇよな。えっと、どこから話せばいいかな……」
 困惑した声をセイジが発しているが、困惑しているのは俺のほうだと言ってやりたい。
「私が話しましょう」
 知らない声がした。とてもとても小さな声だった。そして、天井しかなかった視界にぬっと顔が現れた。

「オトキダと申します。この部屋の契約者で、東洋医学全般の研究及び施術を行っている者です」
 綺麗な男なんだか、女なんだかわからないけど、中性的美人。オールバックで眼鏡の人間がそう言った。オトキダがどういう文字を書くのかさっぱりわからない。
「端的に申しますと、あなたは『シリコダマ』を抜かれています」

 シリコダマ……? シリコダマって……尻子玉?
 は? なに言ってんの?

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