『Shib Sil Str』-08

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 眠くて眠くて、マジ体調悪くて、なんでこんなことになったんだと、トイレの個室で頭を抱えた。

 この箱は案外防音がしっかりしていて、床から伝わる振動だけがまだライヴが続いてることを教えてくれる。女の子ぶつかりそうになって、その娘の笑顔がかわいかったから、歩いて会場に向かったら到着直前でゲリラ豪雨。滝みたいな、ホントのずぶ濡れ。当然着替えなんて持ってないし、物販のTシャツは売り切れだし、フロアの空調はガンガンだし。

 そう、風邪を引いたのだ。
 酒飲んで踊ってれば大丈夫なんて言ったやつをヘッドロックしてやりたい。そうするしか方法がなかったとしても、だ。寒い。心底寒い。帰ろうか、どうしようか。トイレの個室なら暖かいんじゃないかと駆け込んだけど、人の居ないトイレはこれでもかと空調が効いていて、どうにもこうにも寒いだけだった。眠気もひどいのは、飲酒したせいか、便器に腰掛けたまま寝てしまおうか。いや、この状態で寝たら本当にヤバイんでは。頭の中はぐるぐるするけど、どうにも動けない。いやこれもしかして、頭痛的なぐるぐるなんだろうか。

 どうしよう、どうするのが正解なんだろうか。立ち上がる気力もない、こんなケツ丸出しのまま、倒れるわけにはいかない。けど、1mmも動けない。

 寒い、眠い、ぐるぐる。せめてパンツくらい履いて倒れたい。いやそういうことじゃなくて、ホントに。ああいう笑顔の子が助けに来てくれたら、最高なのに。いや、最低か、俺が。

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