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『The end Shibuya Sillies Street』-24

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 彼女は池袋では降りなかった。

 いや、ドア付近にいたので、乗降する人の導線を遮らないように一度降りるタイプの良い子だった。一度降りて、またドア近くに乗り込んだ。オレも導線上にいたので、一度降りて、彼女がホームで再度乗り込もうと立ち止まっているのを確認して、オレも後から乗り込んだわけだ。導線を潰すようにぼーっと立っている奴は死ねばいいと日頃から思っているんで、彼女に対してとても好感度があがった。

 一度降りたことにより、オレは彼女のすぐそばに立つことになった。今度は忘れずに、スマホを取り出している。先生のいるグループに、なんとか状況を打ち込んだら、案の定先生より、そのまま追跡してほしい旨が送られてきた。この車両にCPAのメンツはオレしかいないらしい。まぁそうか。何人いるかちゃんと見たことはないが、この部屋の人数は300人前後だったはず。アクティブで言えば、100人も満たないだろう。それに、ハンタマ……尻子玉が一部無い人間が何人この部屋にいるのかは、オレは知らない。きっと少ないだろう。仕方ない。仕方ない。

 でも、オレはさっきより彼女に対して好感度があがっているので、仕方ないと言っても随分と面倒臭さは減っている。彼女が危険な目に遭うのはよくないと思う。顔も、まぁかわいいほうだし。でも、あんまり遠くじゃないといいな。この電車、大宮行きだっけ?

 ともかく、被害を出さないことが重要だ。抜かれたのは今日みたいだけど、いつそいつの瞼が開かなくなるかわからない。なんてったって、尻子玉は命の次に大事なものだ。人が人であるために必要な器官なんだから。どこのだれか、男か女か、わからないけど、オレはオレにできることをする。
 持っている女の子だって危ない。なんとかしなきゃ、目の前で繰り広げられてるんだし、緊急事態ってそういうもんだろ。いつもはこんな勇気とか、行動力とかないけどさ、CPAは別。これだけはホントに。

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