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『Shibuya Sillies Street』-18

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「尻子玉はどこに? あなたはそう考えているでしょう。探す方法はあるのかと」

 その通り。他には興味がないくらいその通りだ。そう叫びたかったが、声がでない。動けないのも、声が出ないのも、尻子玉のせいなんて、どういうことなんだ。いや、尻子玉がどういうもので、体内のどこにあるのかとかは正直いまは興味ない。俺は早く、尻子玉を取り戻して、元通りに戻りたいんだ。どうやったら探せるのか、というか俺が探せないだろうこれ、誰か探してくれるのか。

「そこで、先程のサクラバさんです。サクラバさんは体外に出されてしまった尻子玉を感知する能力があるのです。
「えっ?」

 すっとんきょうな声がした。男の声だ。サクラバは男のほうらしい。そして、尻子玉を感知できることを今まで知らなかったようだ、なんだそりゃ。

「ところで、エザキさん。こちらの方のお名前は?」
「あっ、えっと、コタローって呼んでます。名字は知りません……」

 セイジが答えた。わかる、俺もお前の名字、今知ったよ。箱や飲み屋で知り合った友達なんて名字聞かないよな、正直。エザキだって、グリコかよ。声がでるようになったら、セイジのこと、グリコって呼んでやろう。

「では、コタローさん。ちょっと失礼しますよ」

 そう言うと、オトキダさんは俺の服をまさぐって、ケツポケにあったはずの財布を抜き取った。そして、免許証をスッと取り出した。
「牧原虎太郎さん。XX年5月XX日……28歳ですか。住所は……ふむ、笹塚が最寄り駅ですかね」
「へぇ、そうだったんだ」

 呑気なグリコの声がする。そうだよ、だからなんだよ。なんだかイラッとした瞬間に、オトキダさんは続けた。

「改めまして、牧原さん。今日、家からエザキさんと一緒になるまでの間、誰かにぶつかられたり、触れられた記憶はありますか?」

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