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『The end o Shibuya Sillies Street』-25

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 そんな秘密結社みたいなのだったとは思わなかった。

 というか、秘密結社ってなんだろう? 思ってみたけどよくわからない。謎の団体、いや、謎っていうか、尻子玉の団体。あ、別に尻子玉を集めてるわけじゃないか。とにかく、尻子玉が本当なのかも、僕が本当に半分しかないのかも、まだ怪しいわけで。先生も、エザキとか言う人も、もしかしたらそこに倒れてる人も、僕を施術の実験台にしてた女の人も、みんなみんな演技で、壮大なドッキリなんじゃないかと、僕は思い始めてる。なんかそういうテレビ番組あるじゃない。ちゃんと信じ込ませるために、やたらとしっかり設定作ってさ……。いい加減付き合いきれないなぁ、と声に出そうになってしまった。いくらイイバイトでも、妙ちくりんなドッキリに見合うなんてものはない。大体ああいう番組は苦手だし、ちょっと見ちゃっただけでも、なんだっけあれ、共感性羞恥? あれが起きて嫌な気分になるのに、その当事者とかまっぴらごめんだ。もう今日は施術の実験台どころじゃないのは確かだし、もう帰らせてもらおう。

「先生、あの……」
「桜庭さん、いまは帰らないほうが。いえ外に出ないほうがよいかと」
「は?」
「いま外に出るのは、危険です」
「先生……あの僕そういうの、もういいです」
「…………そう思われてしまうのはわかります。けれどこれは……」
「なにが危険なんですか? そのCPAとかいう、尻子玉を抜くヤツがうろうろしてるんですか? それに先生曰く、僕なら尻子玉が感知できるんじゃないんですか? だとしたら近寄らなければ、僕は安全なんじゃないですか?」

 僕はよくわからなさすぎて、一気にまくし立ててしまった。

 先生は黙っている。エザキという男も、施術の練習に来た女性も、当然うごけないとされている牧原という男も。漫画だったら「シーン」っていう書き文字が書かれるくらい、場が静まった。そこで僕はふと気づいてしまった。あれ? 先生って僕が喋ってないのに何度か返事しなかった? 笑い仮面みたいな笑顔を初めて浮かべたときとか、さっき僕がもう帰ろうと思って声をかけようとした時とか。思い出すと、何度か、先回りしたように。

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