第四十三段 ボールチェア さらに続き

体が固まってしまった。動かない。

ポンコヅ君のお父様に顎クイ、され覗きこまれた瞬間に体内の時が止まった。

怖い。

この人は、なんだか凄い。

どうしよう。

ボールチェアの中では、ポンコヅ君が苦しそうに呻きながら顔を歪めている。

急がなきゃ。

なのにこの、お父様は。ボールチェアの改造計画を嬉々として、思案している。

呑気が過ぎる。

ポンコヅ君の、のんびり気性はこの人由来なのでしようか?


ふいに、変なメガネ。左側のレンズが黒い、黒い縁のメガネをかけて、あらためて、私を覗き込んできた。

ぐわーん。ぐらたっ。全身に電撃を食らったような感覚から、急に体が軽くなる。

動いた。

そして、少しの、会話。

お父様からの、変な2択。

どちらが助かるのか。想像がつかない。

ごめんなさい。

2択の回答を、お父様に投げ返したような形にしてしまった。

お願い。助けて。



「…わかっているなら…助けろ…」

どこからか遠くから、声が聞こえる。彼が発した、あの言葉が。



思ひいづる ときはの山の 岩つつじ

言はねばこそあれ 恋しきものを

よみひとしらず



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