第三十六段 ー吐くー 右手のてのひらを上に向け、口元から孤を描きながら前に出す。
ー吐くー
。 。。
。。 。
吐き出せ。
ポンコヅ君は、激しく咳きこみながら倒れこんでいた。が、吐き出せない。
襟首を掴みあげると、
「吐き出せ!!」
と怒鳴るが、私の行為に怒りの眼差しで睨み返してくる。鋭い眼差しは、強い。
αお嬢も、動揺して私とポンコヅ君の間に入り込み、
「なにしてるの、やめてよ、ポンコヅ君に手を出すなんて…やめて。やめなさーい」
と私を激しく責めた。
こういう時に、自らの行為の非を責められ、説明をしてもうまく伝わらない事を、思い出す。
間違ってはいない。きちんと正しく伝えなければ、私は、悪くない。間違っていない。
「…」
「怒るよ、春の雨。離せ!」
どるりゅー。
ポンコヅ君が殴り返した。
私との間に入り込んだαお嬢様に当たらないように、お嬢様を右手で抱き寄せながら左の拳で。
だっがたっ。
激しく地面に弾き飛ばされる。
なん、だ。強い。もう、こやつには本気以上に出していかないと、対応できないんだ。
きちんと、伝えなければ。こんな風に揉めている場合ではない。
そう、思うがいなや。
ポンコヅ君が。頭をおさえながら、苦しみはじめた。
「く…なんだ、ものすごい耳鳴りが…苦し…」
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