第五十段 3/13 ギンヨウアジア わかりません のさらに続々々
「さて、質問に答えてないことがあるのをわかっているか?」
落ち着いた寝息をたてるポンコヅに、安心したように微笑んだお嬢さんに、意地悪く声をかける。
なんのこと?不思議そうな顔をしながら、首をかしげる小悪魔なしぐさを見せるお嬢さん。
「ごまかす気?俺はとことん追究するほうなんで、追求するよ。どっからきた?
外からとか、は無しで。」
「どこから?」
「そう、どこから。
昔、俺の知り合い、友だと思ってたいた奴も、突然出てきた。そして、消えた…あれから30年近く経つ。
あれの同類系なら、ポンコヅにも忠告しなきゃならん。どこからきた?どこへ行くつもり?なにをする気だ?」
「…難しい質問ですね。答えやすい順に、一つづつ言います。
まず、ポンコヅ君に会いにきました。探してました。会いたかった、ものすごく。ようやく会えたのに、なかなかうまく、なんだか…、ラブラブみたいな感じにならないの。どうしたらいいですか。」
「質問に質問で返す?!面倒くさいな。
まぁ、お嬢さんは心の中が、バレバレだからそのうちあいつもわかるっちゃ、わかるだろうけどね。急がなきゃなんとかなると…あいつ頭の切り替えが硬いから気長に徐々に。が基本で。」
「そうなんです。わかっていても、前のめりになってしまうんです。久しぶりなので、気持ちばかりが先走る感じで…あ、それとどこから、だったですね。
空の向こう、遥か彼方。時の向こう側?
ですね言えるのは。」
「説明する気ないパターン。だな。了解。
なら、ポンコヅはやらん。」
「もらうとかもらえる、という話にいつなりました?
欲しいのは事実ですが、ポンコヅ君は物ではないので、本人の自由意思です。お父様がどうこう言うのはおかしいです。」
「コイツにあんな辛い思い、させる気はない。だから、ここから消えな。」
「なんのことを言っているのかわからないです、でも春の雨さんが関係してるのであれば、もうすぐここにくるでしょうから、本人に直接言って下さい。
これは、とばっちりです。どんな思いもその人その人だけの中にあって、それを押し付けるのはおかしいですよ。
どこへ行く?この質問は私に向かってないですよねぇ。
私は、今からなんです。どこに向かうとか、考えててない。です。」
どこに行けば、いいのか。どうすれば会えるのか、考えてて考えすぎていて無意味な問だったかもしれない。
永すぎて忘れるしかなかった問。答えてくれるかもしれない同種の出現で、思わず漏れていたのか。
「まぁいい。それはさておき、これは消えるのか?」
俺は話をそらすかのように、ボールチェアに手をかけた。
「これをもらえるなら、君の存在を許す。」
「えー。こんな物で許しがもらえるなんて、ラッキーです。
けど、私から離れてると、私の椅子は消えます。とりあえず、私をここに、いる間はありますので自由にして下さい」
「お。勝手に消えてなくなる、嫌いなワードだな。消えないようにどうにかしろよ、許すから。」
「どうすればいいか考えてみます。存在の許可、ありがとう御座います。しばらく、看病のために近くにいたいと思っていたので、助かります。
彼の部屋に移動させてもいいですか?」
「いいのか?離れても。」
「あははっ。マンション内くらいの距離なら消えませんよ。心配のしどころが間違ってないですか?」
「コイツなら、大丈夫なんだよ。」
俺はもうすぐ訪れる再会の時を。このボールチェアの改造計画で、気持ちをそらしながら待つことにする。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?