第四十八段 突然ですが、漂っているです

石化できるという、怪しい親父さんの指令により、私は仕方なくポンコヅ君の体内にあるという、虫に寄り添うチャレンジをやることになった、漂っているです。

生まれたばかりの、か細い物体です。伸びたり縮んだりをやろうと思えばできる、浮遊物です。

本当は、実体化してはいけない存在なんですが、何故か、形としてあり、空中をうろうろとしておりました。

まぁ、自分でもなんだかよくわからないのですか、指令には従う。全力で従う。と思ってしまっているので、できるかどうかわかりませんか、やらさせてもらいます。

早速、ポンコヅ君の体内、喉辺り張り付いているうごめくものを、発見しました。

半分白くて黒い生き物です。虫と呼ばれていますが、生態系に存在する虫とは、違う。思想から実態化した生き物というべき代物。

古書には存在しております。

私と同じ境遇なのかもしれません。思想からの実体化という点では。

私は、ポンコヅ君の言葉?気持ちからの発生物です。あやふやなままで申し訳ありません。

黒い細長い糸のような、雰囲気でさまよっておりました。あのままなら、多分消えてなくなる運命だったと思います。

ポンコヅ君自身が、無自覚に発した能力なので、あやふやな感じではありました。しかし今、彼の体内に入れてもらったおかげで、確実に生きる力みたいなものが、蘇りまして、すごく気分がいいです。

母体に戻った感覚?うまく言えませんが、ここの中のなら、怖いものがない。と思える、ワクワク感があります。

なので私に出来ることといえば、ポンコヅ君の生命危機を脱するために、取り憑いた虫の活動を少しでもやめてもらえるように努力するしかありません。

「あの、お忙しいところに恐縮ですが、お時間少し、いいですか?私の話しに…聞いてもらえるだけでもいいのですが…」

がつがつっ。四方八方に触手のように伸ばし広がる、足?手?にちょっと話しかける。

「忙しいんで、また今度に」

虫は、ぶっきらぼうに返事を返した。

「ぐほっ。ちょっと、上から抑え込まれて、相手してる暇ない、またにして」

虫は中心部を両脇から抑え込まれて、どうしたらいいのか思案しながら、膨らんだり、しぼんだりを繰り返している。あの親父さんが、押さえ込んでいるので、なかなか外れるはずもない。

「あの〜。上から抑え込まれて、大変なのはわかっています。その事について、ご相談がありまして、ですね。」

話しかけながら、おずおずと近づいた。このままじゃいけない。わかっている、この虫と仲良くなるすべはわからないけれども。理解してもらえるように努力するしかない。

「あの、この上から押さえ込んでいるのが、恐ろしい御方な訳でして。多分、あまりに時間をかけすぎると、上からはさみ込んであなたを潰してしまうと思うのです。」

「そんなことしたら、この体の奴に、すごいこと起こる。毒が飛び散るよ、俺は潰してもらっても、再生できるから、被害しかうまない。それわかっているのか?」

「わかっていると思います、この親父さんは、核心を外さない。恐ろしい方です。出会って少ししか知りませんが、一番ヤバい。人です。人じゃないかも知られませんが。

あなたがこの体の持ち主に傷つけることを一番気にしている、でも、手だてがないのならあまり手段は選びません。それでご相談なのですが、」

そう言いながら虫の背後にすうっと、寄り添う。虫は、わずかに驚いているようだ。

「あの親父さんからの指令で、寄り添ってあげたいと思うのですけどいいですか。」

「なんだ、何なんだ、指令の意図がわからない。」

虫の、戸惑いが手に取るようにわかる。いきなりの背後立ちには、誰でも驚いて当然。しかも、上からがっつりと両脇を挟まれている状態では、囲まれいるようだし。逃げ場が、確実に減っているし。

「私の能力の程度を考慮して、殺しなさいとか、仕留めなさいとかは言われませんでしたので安心してください。私も、そんな大層なこと、出来るような生き物でも、ありませんから。でも。出来ることに全力をと思っている次第で、あまりに時間をかけるのが非常によくないので、失礼とは思いますが寄り添わさせてもらいます。」

背後から寄り添うように、ふれる。

細い糸の状態なのでさほど、痛みも違和感も感じないとは思うのだけれど。

「すみません、このまま話を聞いてもらえると嬉しいです。

あの親父さんは、石化出来る能力を持っています。無理やりにでも引きずり出してあなたを石化するかもしれません。それは大変なことだと思います。ですので、この、体内侵食をやめてもらえませんか?」

「やめたら俺が死ぬ、無理だ」

「わかります、侵食して生きる活動形態なのは。ですから、私からの体液だけにしてもらえると、非常に助かるのですよ。」

「何?

そんな、か細い奴に取り憑いたところで足りるとでも?」

「私では力不足だとは思うのですが、そこは我慢して欲しい。と思いますが」

私は、虫さんの邪魔にならないように細い糸のような状態を会話中にも、するするとからまるように伸ばしていた。ゆっくり刺激しないように。

「二人でここにどとまれるのらなら、一番いいのではないですか?どうです?」

背後からある程度、巻き付いた私は、緩やかに締めたり伸ばしたり、を繰り返す。

「う…あっ、あ。えっ…」

虫のほうから、うめき声のような声が聞こえる。

「何、そこは触るな…ああ」

「了解です、ここらへんですか?」

嫌がっている体のラインをするると、締めてみる。

「やめろ…よ。」

「嬉しいな。私は、私の意思であなたに寄り添うことにしました。あなたが、やめろと言うのを聞いて、やめられるほどは聞き分けのいい生き物ではありませんので、このまま続きを」

「やめろ、それ以上、締めたら…」

「やはり、感じてますよね。

出会って間もないですが、このまま、あなたが外に出て石化するを避けるためには、この手しか、思いつかない。浅はかだとは思いますが、私の手の内で溺れてください。一生添い遂げますから」


ここから虫との不思議な戦いがくり広げられる。

か細い生き物に、虫が捕らえられていることが伝わったかのように、虫の両脇を押さえ込んでいた力が、遠のいていった。












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