第四十七段 3/13 ギンヨウアジア わかりません のさらに続々

お嬢さんが、捕まえた。文字の連なり、言葉の列を、摘みあげると、そいつは生き物のようにふわふわと蠢いた。

「ポンコヅ、口を開けな。」

喉元にある虫を押さえながら、無理やり口を開けさせる。

「漂っているさん、コイツの中の虫に取り憑いてくれない?殺さなくてもいいから、よりそってあげて欲しい。出来るよねぇ?」

漂っているさんの顔がどこにあるのか分からんが、とりあえずうごめいているほうに声をかける。   

怖がらせるつもりもないが、先程の石化を見てたに違いなく、漂っているさんは仕方なさそうにうなだれていた。

「お願いします、力を貸してください!」

俺の隣で、お嬢さんの必死な願いを納得した?してなくても俺は、ポンコヅの中に入れるけどね。

僅かに空いた口の隙間に、細い糸のような文字列を押し込んだ。

頼みの意図をわかっているのかいないのかわからないが、漂っているさんは、俺が押さえ込んでいる虫の芯の辺りによりそってきた、指先にそれが伝わる。多分、内部で虫に巻き付いて動き広がるのをやめるように、アタックしている感じだ。

虫に対しての、ラブアタックめいた動きを挑んでいる。と言っていい。 

頑張れ、漂っているさん。

俺は緩やかに、喉元から手を離す。

「これで、しばらくは大丈夫。喉の虫が暴れ廻ることはないよ」

ポンコヅは荒い息をしながら、少しづつ呼吸が整ってきている。

まだ、意識はないようだが、春の雨が持ってくるであろう、解毒草を待っていればいい。






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