見出し画像

百億の昼と千億の夜

1977年、中一の夏休み。
毎週楽しみに愛読していた「週刊少年チャンピオン」で突然連載が始まった、このスケールでかすぎる名前の作品と、「萩尾望都」というかっこいい名前の作家に初めて出会い、衝撃を受け、人生が変わりました。
同年代の男子で、同じ経験をした友人が何人もいます!
同じぐらい「よくわからなくて飛ばしてた」という人もいます(^^;;
たまたま同時期に手塚治虫の「火の鳥(特に「生命篇」)」とも出会い、宇宙や生命や宗教や哲学について深く興味を抱くヤバい若者となりました。

「ざっくりどんな話?」と聞かれるのがなんともつらい。
ざっくりとだと「プラトンと釈迦と阿修羅とユダが力を合わせてイエスキリストをやっつける話です〜」
となるのですが、これだけだといろんな誤解も生じ、しかも一番コアな主題はそこにはなく・・・
ネタバレになるのでいいませんが、最終話で書かれる衝撃的な対話に、人類が求める根源的な問いの答え(のひとつ)があるのです!

日本が誇るSF作家・光瀬龍氏の原作小説ももちろん読みました。
大体において、漫画化・映画化された作品は原作のクオリティに及ばないものですが、この作品は全くの例外です。
萩尾さんの深い考察力とSF愛、そして卓越した画力によって原作は再構成され、漫画作品の到達したひとつの頂点といえるほど完成された名作となりました。

何より僕は、登場人物である阿修羅王のキャラクターに恋してしまったのです!
まさに理想の彼女。
ああ阿修羅王に「善哉善哉」といわれたい!笑

伝説の第一話が収録された少年チャンピオンの原本もヤフオクで再入手し、出版された全てのコミック・文庫本もリアルタイムで買っております。
そんなマニアな私にとってさらなる衝撃!
初出から45年の時を経て遂に、一昨日「完全版」が出版されました!

これはすごい!
今までの「百億千億」関連の文やイラストも余すところなく収め、カラーページも再現!
さらに現在の萩尾さん自身による細かい修正もされている!


実は2006年5月5日、池袋はジュンク堂にて「夢・百億の昼と千億の夜」と題して、萩尾さんと対談させてもらったことがありました!

(僕と萩尾さんの出会いについては「残酷な神が支配する」文庫本第1巻の巻末エッセイに書かせてもらっております)

高校時代にこの作品をモチーフにして作った組曲を初披露したり、大好きな百億千億を深掘りし、いろんな質問を萩尾さん自身にしてしまう、というそれはそれはプレシャスで夢のような時間でした。

映画化の話もあったそうですが、その条件が、作中の、イエスとユダを入れ替えることだったそうで、当然光瀬さんは断ったそうです。そんなことをしたらテーマの根幹が揺らいでしまうし、やらなくて正解だったと思います。

あの「マトリックス」の世界観だって、百億・千億に出てくる「ゼン・ゼン・シティ」と実によく似ています!
(「マトリックス」より30年も昔の作品ですぞ!)

しかもこの「完全版」出版のタイミングが、いみじくも宗教がクローズアップされているところにぶつかってしまってるというシンクロニシティ。

ぜひこの機会に、皆さんに、特に十代の若者に読んでほしいです。
人生変わりますよ〜!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?