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今更ですが「十三機兵防衛圏」をクリアしたのでクソデカ感情の文字おこし

 あけましておめでとうございます。皆様いかがお過ごしでしょうか。
 今更ですが、「十三機兵防衛圏」というゲームをプレイしました。きっかけはクリスマスプレゼントに友人から頂いたためです。いくら「いつかやる」詐欺をしがちな私でも、直接ブツを投げつけられるとやらないわけにはいかない、ということで、12月の中旬くらいから本格的にプレイ。2022年のうちに終わらせたかったのですが、なかなか時間がとれず、また、「慌ててやるゲームでもねーな」と思い、年始に時間を作ってやることに。
 30時間弱かけて崩壊編、追憶編ともに100パーセントになったので、究明編を全て読んだわけではないですが感想を。
 なお、ネタバレを含みますので、やったことのない方はご注意ください。なんならやって後悔するゲームではないのでぜひやってみてください。

■何がこのゲームを特別にしているのか


 まず、このゲームはほかのゲームと大きくプレイ感が異なるな、という印象を受けました。
 物語の骨格は紛れもないSFであり、また近未来的な世界観でロボットに乗って謎の怪物と戦う、などというあらましだけであればどこかしこにあふれかえっているものです。なので、このゲームがどういうゲームか、を一言で説明するときには、私の語彙では「いろいろな人が出てくるSF」という極めて凡庸な表現に落ち着いてしまいます。語彙力の敗北です。
 しかし、まずそもそもSFのメインとなるストーリーがそもそもしっかりと作られていて読み応えがあり、かつ、そこに各キャラクターの視点を入れ込むことによって、王道なはずのこのテーマがこんなにも味わい深いものになる、というのを体験できました。

 よく名作小説や映画なんかでは、「情報を小出しにしていって、あとでそれらを伏線回収する」ことによってカタルシスを与えていますが、本作品はそれをADVパートで各主人公を動かす、ということによって実現しています。
 正直に申し上げますと、最初は私はこのシステムにいまいち乗り切れていませんでした。数人の分岐があって最後に一つにつながる、というたぐいのノベルゲームはいくつかプレイしたことがありますが、さすがに13人ともなると、一人ひとりの物語を覚えきることは不可能であり、それゆえに、「前のこのキャラってなんだっけ、どこで出てきたっけ?」といった感じのままプレイしていた部分もあります。正直に申し上げますと、物語を全て把握しながら、あるいは自分の中で腑に落ちるように咀嚼してから次に進める、ということを、この作品で少しだけ放棄していました。なので、いまいち理解しきれていないけどちゃんと大丈夫かな、という形で、ある種不安を抱えながら進めていた点がないかというと嘘になります。
 しかし、このゲームではある種、そのようにあいまいでなんとなくの認知のまま進めても十分に楽しめるような仕上がりになっており、また、全貌がなかなか見えないからこそ、時間がかかっても点と点がつながった時には、言いようのない達成感といいますか、「あ、こういうことね!」という納得感があって気持ちよかったです。
 また、意図的に認知をゆがませる、あるいはプレイヤーをミスリードさせるのが極めて上手な作品だな、とも感じました。作品の性質上、前述した通り、人の認知をかなり超えている作りになっているので、「こいつの言っていることは現段階では分からないが、とにかく先に進めよう」的な場面が多くありました。そして、そうさせる中で、意図的に「実はこの人が悪役なのではないか」と各ストーリーでほのめかすことによって、最後の方のカタルシスが増すような作りになっているのが、個人的にはかなり感動しました。例えば、井田鉄やであったり、426であったり、鞍部パートの途中の柴くんであったりがそうです。特に柴くんは、途中までは特になんとはなしにプレイしていて「なんかたまに消えるな」くらいに思っていたものが実は・・・という展開だったので「ごん、お前だったのか、実は黒幕は」という宇宙猫をした後に「まじかー」と裏切られるのが、逆に気持ちよかったです。こういうミスリードって、特に神視点であるプレイヤーからしたら寒くなりがちなんですけど、このゲームは神であるプレイヤーも認知しきれていないため、特に進行度50パーセントくらいのところでそういうシーンがくると、キャラクターと同じくらいの知識しか持ち合わせていないので、とてもドキドキする仕上がりになっていてすごいな、と思いました。
 総じて、認知の負荷のかけ方が匠だし、ちゃんとあとでわかるような作りにしてくれているので伏線回収が最後の方はあちらこちらでされるので、物語を読む作品としてもゲームというコンテンツを活かしていてとてもよいなと思いました。

■個人的に好きだったパート


 13人それぞれのパートが(中身的にはクロスオーバーしているものの)独立していたため、SFの中でもタイムリープや単純なループ、ロボットがバリバリ出てきたりあるいはずっと近未来でディストピアの探索をしていたりと、あらゆるジャンルを楽しめたんじゃないか、と思います。
 その中でも、個人的に印象的だったのは、鞍部パートと緒方パートです。
 どちらもループ寄りのパートではあるんですが、それぞれについて簡単に述べていきます。

 緒方パートは、とにかくループを抜けるのにそれなりに頭をひねらせながらやったので、ループが進んだときに「あー--、進んだー---!」という達成感がかなり大きかったです。また、ループものであるバックグラウンドへの納得感も大きく、「なるほど、だからゲームチックにループをしていても不自然じゃないのか」ということがとても腑に落ちました。序盤は何もわからずにダイモスにぐちゃぐちゃにされるエンドだけれども、ループを進めていくにつれ少しずつ何をすればこの未来が回避できるのか、という部分を解明していくくだりが、とても王道な感じでよかったです。

 鞍部パートは、前述した柴くんのくだりが個人的にかなり印象に残っているので評価が高いですね。特に薬師寺パートとの絡みもあり、鞍部十郎と和泉十郎ってどう違うねん、とか関係性が見えづらいところからスタートしていく中で、結局鞍部十郎はいていい存在なのか、和泉十郎は悪者なのか、というところがおぼろ下に見えてきたあたりで柴くんが本性を現すわけですよ。いやー、びっくりしましたね。私は進行をそれなりにまんべんなくしていたこともあり、和泉十郎が時空を超えて悪さする悪役に見えて仕方なかったこともあり、途中は鞍部くんが和泉十郎を倒すんじゃないか、と予想しながらゲームをプレイしていました。(結果的に、このあては大きく外れることとなりました)
 各視点から見ても、結局426という悪者が一向につかまらない、という部分がひやひやさせるのですが、私もキャラクターの進行度と同じくらいの認知しかなかったので、426と柴くんの存在がつながったときにはぞくっとしましたね、ええ。

 あとは個別パートとしては出てきていませんでしたが、森村千尋、という存在も最後の最後までどういう存在か謎めきまくっていたので、途中で「あれこいつ犯人なんじゃね」とか、「井田実はいいやつで森村先生の方が錯乱してるんじゃね」的な話でぐるぐるしていました。関ケ原パートの最後の部分で森村先生がイージス計画について話すパートで「なるほどなー----お前それが原因かなるほどなー---ー」と深い納得感におぼれていました。ちびっこい森村千尋の存在も途中まで???でしたが特に気にすることなく進めていたら最後にちゃんと種明ししてくれてよかったです。

■結局このゲームはどういう作品だったのか


 私もこの作品のことを全てとらえられた、と口が裂けても言えませんが、この作品は新時代の王道SFとしてやりたいことを全部やった欲張りセット作品だな、という印象を受けました。
 SF特有のよくわからない政治パート(もちろん最終的にはわかるようになるのですが)と、それに巻き込まれる少年少女たち、という構図であったり、持続可能な環境の構築という問題に直面したり人類が愚か的なテイストで話がかかれていたり、AIと人類が手を取り合う、ないしは対立する的な話を至るところに入れ込んだり、最後の最後はだいたいラブロマンスで締めくくる部分だったり、あらゆる点が「SFっぽいなー」と思いました。あまりにも作品として様々な要素を含んでいるので、ほかの人がプレイしたら「ここはこれと似てるな」と感じるポイントが違ったり、あうあわないの部分が違ったりするかもしれませんが、今のところ間違いなく唯一無二的な作品だな、と思いました。

■最後に


 私にこの素晴らしいゲームをプレイする機会をくれたバローネさんに感謝をこめて。
 今度またごはんおごります。

 追記:その1
 バローネさんからDMのやりとりを載せていいということだったので、てっきり食べ物がプレゼントされると思っていたあかさきと作品を投げつけたいバローネさんのやりとりをお楽しみください。

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